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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
第 7 部 天界学園 編
323/327

†30話†:高鷺ゆえ ―最高最強のデリバリー ― ③





 天界食堂セレスティアル・カフェテリアの厨房。

 そこには、一歩も引かない「最高最強」の頑固者が立ち塞がっていた。


「……ダメ。スープは、ここで飲むのが最高最強」


 琥珀は大きなレードルを握りしめ、無表情ながらも鉄の意志で拒絶を告げる。

 その傍らでは、ひなが「んまーい! これこれ、これだよ~!」と、既に自分の分のスープを幸せそうに啜っていた。


「お願いです、琥珀先輩! ゆえ先輩、もう指一本動かせないくらい限界なんです! 届けさせてください!」


「……断る。運べば温度が下がる。器が変われば響きが死ぬ。それはもう、最高最強じゃない」


 職人の理屈はどこまでも平行線だ。

 焦るサダオミは、思わず漏らすように呟いた。


「……そっかぁ。最高最強なのに、ここでしか食べられないのかぁ……」


「!?」


 琥珀の肩が、目に見えて跳ねた。

 

 しばしの沈黙。

 琥珀の脳内で、「場所の制約」と「絶対的な強さ」という二つの概念が激しく衝突し、火花を散らす。


「……確かに。最高最強なら……どこででも、最高最強であるべき……?」


「あっ、いけそうです?」


「……最高最強、だから。……待ってて。……ん。最高最強の容器に詰めた」


 手渡されたのは、もはやスープ入れというよりは精密機器のような銀色のボトル。

 それを受け取るやいなや、サダオミは満足げなひなを再び背負い、音楽委員棟へと全力で駆けだした。


 ――数分後。


「……ふ、ふぇ……おいひい……っ」


 楽譜の海の中で、ゆえが泣きながら琥珀特製スープを口にする。

 一口ごとに、失われていた色彩が彼女の瞳に戻り、濁っていたオーラが純白の輝きを取り戻していく。


 飲み干すと同時に、ゆえはスッと立ち上がった。

 その手に握られた楽器が、先ほどの「ぼえー」が嘘のような、天界の隅々まで浄化する美麗な音色を紡ぎ出す。


 廊下で、そして室内で。

 サダオミとひなは、その圧倒的な調律の響きに、しばし言葉を忘れて聞き入った。


「……やっぱり、ゆえ先輩の音色は最高最強だね」


 ひなの小さな寝息と、完璧な旋律。

 天界の「空気」が、完全に澄み切る。


 ――これが、本来の音だ。

 

 サダオミは静かに目を閉じた。

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