†27話†:閃光、のち、美味
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【システムログ:第一圏域・階層戦終了】
■ 最終結果
・勝者:川篠サダオミ(所属:第一圏域/E級固定備品)
・敗者:真壁凱
■ 戦闘データ概要
・計測不能(一撃による即時決着)
・観測ログ:「閃光」のみ
『また一瞬かよ……』
『ログ追えないんだけど!? スロー再生して!!』
『サダオミ様……っ!!(尊い)』
『備品ちゃんの初鳴き、待機なう』
『見て、あの脚。第一圏域の奇跡だわ』
『アンチ息してるかー?』
『備品ちゃんを愛でる会、第一圏域本部設立なう』
視界を埋め尽くす、もはや文字ではなく光。
第一圏域という最高精度のセカイにおいて、なお「計測不能」を叩き出すサダオミへの畏怖が、画面を白く染め上げている。
そんな熱狂の中心で。
当のサダオミは、心底不思議そうに眉を寄せた。
「……あれ? なんかアンチ減ってるなぁ。罵倒がないと、逆に落ち着かないというか……」
「贅沢な悩みでごわす! 」
背後から、景気のいい声が降ってきた。
振り返れば、そこには今日も今日とて語尾の仕様がバグっている先輩――ひなが、誇らしげに胸を張って立っている。
「これだけの戦果を挙げれば、アンチも黙るしかないのでごわす。もはや『備品ちゃん』は、第一圏域の最終兵器として崇められる運命なのでごわすよ!」
「……いや、語尾て。あと、その呼び方やめろって」
ひなの「ごわす」を背中で受け流し、サダオミは溜息と共に教室の扉を潜った。
白亜の揺り籠の最上位、第一圏域の学び舎。
そこには熱狂も、どよめきもない。
ある者は端末をスクロールし、ある者は古びた紙の書籍に目を落としている。
「あ、サダオミ。おつー」
「結果出てたね。お疲れさま」
通りすがりのクラスメイトから投げかけられる、確かな親愛の籠もった「おつー」。
誰もがサダオミの勝利を疑わず、当然の結果として受け流す――。
この「高精度の静寂」こそが、サダオミにとっては一番馴染む空気だった。
そんな凪いだ教室の奥で、一際鋭い覇気を、リラックスした様子で放っている青年――楢葉宗太郎が、顔を上げた。
「圏域守護、お疲れ様。……えっと」
開口一番、労いの言葉をかけてきた楢葉が、そこで不自然に言葉を詰まらせる。
端正な眉を寄せ、必死に何かを思い出そうと、天を仰ぐその姿。
「……いや、覚えてよそろそろ。
言っとくけど備品ちゃんじゃないからね?」
サダオミの至極真っ当な指摘に、楢葉は「うむ……」と深く唸り、絞り出すように口を開いた。
「うむ……そうだな……。……びみちゃん」
「おいしくなっちゃったよ!?」
サダオミの絶叫が、第一圏域の厳かな教室に虚しく響き渡った。




