†3話†:純白の不適格者
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最前列で優雅に微笑むミレイナに圧倒されながらも、サダオミは教室内を見渡した。
途端、その顔が引きつる。
「……うわ。いつもの天界の面子が、普通に揃いすぎだろ」
窓際で退屈そうに指を弄んでいる中村一式は、サダオミと目が合うと「後輩の女装、観賞なう」と平然と言い放った。
その隣では、高鷺ゆえが無機質な表情で端末を叩き、山本ロミオは女子生徒に声をかけては無慈悲にスルーされている。
さらに教壇の端では、大宮るるかが「私は関係ありません」という顔で、あの大きなメガネの奥の目を泳がせていた。
どうやらここには年次の区別なんて存在しないらしい。
ランクと実力さえあれば、先輩も後輩も同じ檻にぶち込まれる。
あ、これ、こいつら全員『同級生』扱いなんだ。
天界のデタラメな教育システムを理解した瞬間、サダオミの背中に嫌な汗が流れた。
「サダオミ! よく来たな! 私の隣で安心したまえ!」
熱烈な声に呼び戻されれば、指定された自席の右隣で、君島海里が勢いよく立ち上がっていた。
椅子を引こうとしたり、机の塵を払ったりと、恩人に対する過剰なまでの世話焼きが始まる。
「海里、分かった、分かったから。ちょっと落ち着いてよ」
左右の温度差に胃が痛む。
右隣が「過熱」の海里なら、左隣は凪いでいた。
「……透哩。お前も、ここだったんだな」
左隣の小波透哩に声をかける。
呼び捨てにする仲だ、少しは緊張が解けるかと思ったが、透哩は教科書をめくる手を止めず、サダオミを視線だけで射抜いた。
「……あぁ。ずいぶんと派手な格好だな、サダオミ。良く似合っているぞ」
「ぐっ……」
否定も揶揄いも含まない、事実としての肯定。
それが一番、サダオミの急所に突き刺さる。
透哩は視線を教科書に戻すと、淡々と続けた。
「……相変わらず、私を退屈させないな、サダオミは」
居心地の悪さに耐えかね、サダオミは透哩に顔を寄せ、消え入るような声で本題を切り出した。
「な、透哩……さっき廊下で見かけたんだけどさ。これ、どうやって男に戻るんだ? この格好、マジで落ち着かないんだよ。願えばシステムがすぐに応えてくれるはずだろ?」
「……隣のそいつに聞いてみればいいだろう」
透哩が視線で示した先――右から、海里が待ってましたと言わんばかりに食い気味に割り込んできた。
「サダオミ! それはモデルチェンジ機能だね。なに、構える必要はないさ、願えばシステムの方から応じてくれる。希望するならやってみるといい」
「あ、そうなんだ。ありがと、やってみるよ」
海里に促され、サダオミは目を閉じて念じた。
頼む、ズボンに……せめて見慣れた男の体に戻してくれ!
だが、何も起きない。
光る気配も、服が擦れる音もしない。
目を開ければ、そこには変わらずふわりと広がるプリーツスカートと、自分の細い指先があるだけだった。
「あの……透哩さん? 話が違うんですが」
「クスッ」
「いや、クスッじゃなくてですね!? なんで笑ってるの!? 海里も、これどういうこと!?」
隣で海里が目を泳がせる。
海里は、困ったように眉を下げて口を開いた。
「ぁー……それはサダオミ……つまり、そういうことなのでは」
「どういうことなの!? 誰かちゃんと説明してよ!」
遠目にるるかと目が合う。
「んんぅ、ノーコメントですぅ」
「えぇ!? るるかさんまで見捨てるの!?」
絶望に肩を震わせるサダオミの横で、透哩が再び小さく肩を揺らした。
「クスッ、ノーコメントだそうだ。……よかったなサダオミ、エンジェルフォーム続行確定だぞ」
「……俺、学園生扱いされてないわけ!? ずっとこの格好なの!?」
サダオミの悲鳴じみた声に、最前列のミレイナが不敵に肩を揺らした。
「相変わらず騒がしいな、チャッピーは。ただでさえ目立つんだ。少しは大人しくしていなさい。……その低い評価をさらに下げて、更にスカートが短くなってしまうかもしれんぞ?」
「姐さん、それは勘弁してよ……!」




