第6話:宿題と灰の空
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白く崩れゆく学院の景色の中、ロイエルが立っている 。
もう戦闘は終わっている 。
勝敗も語らない 。
「……ロイエ」
名を呼ぶ 。
今度は、間違えずに 。
ロイエルの肩が、わずかに揺れた 。
「今度は、ちゃんと言葉にするね」
視線を合わせる 。
逃げない 。
「ありがとう 。 楽しかった」
あの日の中庭、爆発寸前の魔法、くだらない言い合い 。
かつて言葉を惜しみ、親指ひとつで背を向けたあの日 。
その喉の奥に押し殺していた本音を、今度はその喉を震わせて伝えた 。
「――さよならだ」
一瞬の静止 。
次の瞬間 。
「さよならは聞いてあげないわっ !」
即答だった 。
涙声ではない 。
拒絶 。
「勝手に消えて、勝手に決めて……っ ! 今度はこっちのわがままを聞きなさいよ」
強がりが、少しだけ崩れる 。
「……また、来てほしい 。 ラナクロアへ」
それは、少女が孤独の果てに辿り着いた、たった一つの未来指定 。
「……返事も聞いてあげないんだからっ !」
サダオミは、ほんの少しだけ笑った 。
ああ、そうか 。
これは別れじゃない 。
支払いきれなかった代償を果たすための、宿題だ 。
「……うん。聞かれても困るしな」
次の瞬間、空間が白く染まり始める 。
「ちょ、ちょっと、今の返事ちゃんと――」
言葉の途中で、ロイエルの輪郭が光に溶けていく 。
最後に見えたのは、悔しそうで、でもどこか安心した瞳だった 。
◇
白、静寂 。
天界の無機質な廊下で、サダオミは一人、立っていた 。
「……やれやれ」
胸の奥が、少しだけ軽い 。
親指で済ませた別れの代償を、少しは払えただろうか 。
だが、感傷に浸る時間は与えられない 。
師匠、ロイエル 。
つまりこれは、自分を形作った“世界”の再訪 。
「……次は、あの世界だよな」
世界を滅ぼした存在 。
すべてを終わらせた、あの絶望 。
重厚な第三の門を押し開く 。
視界が反転する 。
焦げた匂い、焼け落ちた空、崩れた大地 。
案の定、出迎えたのは地獄のような戦場の景色だった 。
そして 。
そこに立っていたのは――白だった。




