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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
第 4 部 風鈴 編
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第四十七話:ただ、人が生きている場所





 城門の外は、思っていたよりも暗くなっていた。


 松明が灯されるほどではない。


 ただ、空の色が、もう昼ではない。


 一世は馬上から、最後に一度だけ、城の方を振り返った。


 一見すれば、いびつで未完成な石積みに見える。


 だが、その配置は、侵入者の足を殺し、内側を護るためだけに極限まで最適化されていた。


 城として、これほど「守備」に特化した場所はない。


 もし鈴をここに預ければ、そう簡単に落とされることはないだろう。


 それだけの強度が、確かにここにはあった。


 だが。


 一世が感じた違和感は、その先にあるものだった。


 本来、城とは牙だ。


 外を睨み、敵を威圧し、いつか打って出るための足がかりだ。


 だが、この場所には、その「戦意」がどこにも見当たらない。


 一世の視界に映っているのは、壁ではなく、淀みのない人の流れだった。


 鍋を運ぶ影。


 火床の周囲に集まる背中。


 荷を抱え直しながら、自然に道を譲る動き。


 誰かが指示している様子はない。


 だが、止まっている場所もない。


 あそこに、明日が続く形が、すでに出来てしまっている。


 危険なのは、城の構造ではない。


 兵の数でもない。


 ここが、王の支配や戦のことわりから切り離された、「ただの生活」を護るための絶対的な領域になってしまっていることだ。


 一世は、ほんのわずかに手綱を引いた。


 視線を切る。


 長く見てはいけない、と直感で分かっていた。


 あれは、武人が評価していい種類の場所ではない。


 一世は、振り返らずに馬を進めた。


 背後に残った城は、


 最後まで、


 牙を持たない、けれど決して崩れない、奇妙な静謐せいひつを保っていた。

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