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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
第 4 部 風鈴 編
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第四十六話:想定外の毒





 日が傾き、炊事場の煙が少しずつ薄くなっていく。


 一世は、随行の兵たちをまとめ、出発の準備を整えさせていた。


 報告すべきことは、山ほどあるはずだった。


 城の堅固さ。


 人の数。


 備蓄の状況。


 だが、一世の頭の中にあったのは、そのどれでもなかった。


 当初、王にとっての緒方刀座は、監視対象に過ぎなかった。


 王自身が、鞘に納めたまま投げ捨てた剣。


 たぐいまれなる美貌を持ちながら、あまりに鋭すぎたその刃が、どこで錆びつき、野垂れ死ぬか。


 それを確認するためだけの、はずだった。


 だが、現実は違った。


 憎悪に燃え、今にも暴発するはずだった村人たちは、驚くほど静かに、そこに「居る」。


 それは、心が折れたからではない。


 ただ、腹が満たされ、足元が整ってしまったからだ。


 もし、尊迩栄との戦が避けられぬものとなった時。


 王は、鈴をどこへ隠すつもりだったのか。


 今の城の内側にあるこの奇妙な「凪」は、本来なら王が最も嫌うべきものだ。


 だが、この堅固な壁と、淀みのない生活の導線。


 そして、それを作り上げた者の、静かなたたずまいを見てしまえば、認めざるを得ない。


 ここなら、護りきれてしまう。


 王にとって、鈴をここに預けるという選択肢は、屈辱に近い想定外のはずだ。


 だというのに、目の前の光景は、その判断を促すだけの説得力を持ってしまっていた。


 一世は、最後に一度だけ、炊事場で灰を掻き出しているサダオミの姿を見た。


 緒方刀座。


 誰もが目を奪われるほどの絶世の美を、灰と泥に汚しながら、この「生活」の芯に据えている。


 一世は、何も言わずに馬に跨った。

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