前へ目次 次へ 202/215 第四十五話:その理由 ■ ◆ 一世は、一度も振り返らずに城の奥へと歩いていった。 その背中を追う者は、誰もいない。 ただ、去っていく背中を一度だけ見送り、俺は火床の横に腰を下ろした。 一世が何を確認し、何を持ち帰るのか。 それは、俺が考えることじゃない。 ただ、あの男の目は、昨日までの「砦」を見ていた目とは違っていた。 俺が作ったのは、敵を防ぐ壁じゃない。 人が、明日もここで生きていくための、ただの地面だ。 それを、一世は「生活」という名の毒として受け取ったのかもしれない。