表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
第 4 部 風鈴 編
198/217

第四十一話:音のない合流



 漢遼迩かんりょうじの夜は、乾いた風が吹く。


 石造りの城壁が昼間の熱をわずかに残していた。


 それが冷たい空気と混ざり合って、独特の匂いを立てている。


 俺は一人、城の最上層にある物見の縁に立っていた。


 魔法は、本来なら形のないものを繋ぐ。


 かつての俺なら、師であるエレシが説いた「想いを紡ぐ」という言葉を、ただの比喩として受け取っていただろう。


 けれど、今の俺は知っている。


 かつて見たミレイナの背中。


 距離を無に帰し、世界を書き換えるあの鮮やかなことわり


 今の俺の指先には、あの時と同じ熱が宿っている。


 その気になれば、物理的な距離など今の俺にとっては何の障壁にもならない。


 だが、今はまだ、そのスイッチを完全に押し込む時じゃない。


 将軍が、ここを安全だと認めるまでは。


 王が、俺の作った場所を居場所として許すまでは。


 力任せに鈴をここへ引き寄せるのではなく、まずはこの細い糸を、確かな「居場所」の記憶として彼女の元へ伸ばす。


 物理的な体は重く、大地に縛られている。


 けれど、この音のない合流だけが、俺たちが今、同じ月を見ていることを証明していた。


 俺は深く息を吸って、ゆっくりと吐き出した。


 今は、これでいい。


 次に彼女の足音が本当にこの城に響くとき、俺は胸を張って迎えられる場所を作っておくだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ