本当の妄想
72時間の世界が地上と呼ばれる世界であった。 私がいるのは24時間の世界。
この世界にいる人たちは、一緒におとぎの国の世界に帰る住人だけだった。
読者のあなたもおとぎの世界に帰る人かもしれない。
72時間の世界には、12人の男性の神様がいて、 11人の王子がいて、そしてカルト宗教"瑩山館"があった。
私は72時間の世界は、時間が遅く、巨人が多く、体重や重力が重いので、 不思議な世界だと思っているが、どうやら反対らしい。
72時間の世界からすると、24時間の世界はとても身軽で綺麗で、 色々なことが目新しく見えるらしい。 例えば、道行く人の洗練された姿、 テレビの画像の鮮明さ、化粧品の数の多さ、食品の豊富さ、 街並みやお店の綺麗さ、トイレ一つとってもとっても綺麗に保たれている。
私は今もヴィセラと一緒に24時間の世界にいる。
こうした生活は当たり前ではない事を知る。
ヴィセラから教えてもらい、72時間の世界を知る事となった。
それは恐ろしい地獄の一丁目の入り口を通過したことによる体験からだった。
その詳細は、15年前、家出をした頃に遡る。
私はいつものようにタイムワープをしながらパラレルワールドを行き来しただけだった。
秘書の仕事をしていた私は仕事に出かける平日の朝、「早く真人の家に行け。」という声が聴こえ、
母に「熱っぽいから病院に行ってくる。」と言い残して家出をした。
移動の最中、どこからともなく「ゴキブリの視点は捨てろ」という声が聴こえた。
(私は今まで、ゴキブリの視点だったの?)
いずれ自分が「妄想暴走症」だと診断されるとは、夢にも思わず、
そこで大量のゴキブリを見てしまうような、 大変戦慄的な恐怖を味わい、
そうして奇跡的に助かることになる。
その恐怖は実はカルト宗教瑩山館が深く関わっていた。
私はヴィセラに出会う20年前、心の救いを求め瑩山館に入会した。
そこで他人の真人とも出会った。
瑩山館は、私に禊や鎮魂といった儀式を行わせ、 洗脳された結果、
あまりにも熱心な私は瑩山館こそが人生の全てだとさえ信じ込んでいた。
しかしその洗脳は突然真人の家で解けることになった。
彼の家で、様々な幻聴が聴こえ、発狂し、悪夢を見ることになった。
三日三晩眠れず外を彷徨うこともあった。 誰も助けてはくれなかった。
家出していた間、真人の家にいて、彼に唯一守られてはいたけど、それは他人の真人だった。
本当の真人は72時間の世界にいることを知った。
誰の助けも借りず、私は私の力で、
瑩山館のしかけてくる罠を見破り、 自分自身を地獄の一丁目から救う事に成功した。
スーパーサイヤ人のようにパワーアップした私は、
72時間の世界とテレパシーで交信できるようになった。
王子や親せきは無事であった。
もちろんヴィセラからも教えてもらったこともある。
そして瑩山館は、72時間の世界から、 霊的な交信術を使って、私に働きかけていた。
彼らが私に目を付けていたのは、
この24時間の世界で私が突然洗脳が解け、
瑩山館に挑戦状をたたき付けていたことを知ったからだった。
彼らはひっそりと活動していた団体だったが、
私は瑩山館を「詐欺師の集団だ」と罵った。
その事を聞き、瑩山館は怖れおののき、私を「妨害者」として排除することに決めた。
私は瑩山館を破門とされた。 私は私で瑩山館からきっぱり足を洗う事になった。
瑩山館にいる集団は、ご臨終の魂の集まりなのだと知った。
同時にそれは父が私を守ってくれたこと、
12人の男性の神様が私をカルト宗教からの洗脳に解いてくれたこと、 そいういったことも関係している。
瑩山館は72時間の世界にある事を知り、残された11人の王子や親せきが心配だった。
私のこれからの責務は72時間の世界にいる11人の王子を救う。
そのために24時間の世界で平凡な京子の人生を全うする。
なぜか。 そうすることによって、平凡であることが、 当たり前になり、
私はおとぎの世界に帰らずにすみそうだからである。
瑩山館は今も72時間の世界に存在している。
私はそれを24時間の世界から彼らを監視している。
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ほどなくして私は目が覚めると、病院にいて、 妄想暴走症であると診断された。
確かに私は母に病院に行くと言って家出をして、まさか本当に病院にいることになるなんて。
これは全部私の妄想だったの? 誰か教えて欲しい。
そこへ妹の紗那が、病院に見舞いに来てくれた。




