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755話・行き場のない魂の行方

 宇宙空間では、知里とヒルコとの常軌を逸した戦闘が繰り広げられていた。


 まるでSFアニメのように蛍光色の光弾が飛び交い、星々が燃え、落ちる。

 宇宙空間をスクール水着で超高速に飛翔する知里は、魔神の手を八本も呼び出し、様々な間合い、別の角度から時間差で放たれる極太のレーザー光線──。


 スケールの大きな戦闘ではあるが、画面で見る限りはヒリヒリとした緊迫感は感じられない。

 殺意、というよりも、対戦型の格闘ゲームで子供同士がじゃれているような印象を受けた。


「知里さんは……ヒルコさんの中にいるたくさんの13歳の少女たちと対話をしているのですわ……」


 珍しくエルマが真面目な顔で言った。


「あたくしやヒナさんのように、ヒルコさんから逃れて〝異界人〟を召喚できたわけじゃありませんから♪ 場合によったらあたくしだって、あの中の一人でもおかしくはなかった……」


 エルマはそう言って悲しそうに目を伏せた。


 知里の攻撃によって、星が落ちて少女たちの魂が降り注ぐ。

 しかし行き場のない魂は、震えながら夜の砂漠に佇むしかなかった。


「よぉしいい子だ。お母さんのところに帰りな」


 知里は一人一人に言い聞かせるように言葉をかける。

 『他心通』の能力を反転させることで、離れた相手にも意思を伝えているようだ。


 激しい戦いは続いていた。宇宙空間まで拡張した戦場では、光線や隕石が乱れ飛ぶ。

 そうした中で知里は、ヒルコの攻撃をかわしながら、ひとつひとつの魂に触れていった。


 行き場のない魂はたち、不死者たちの群なす砂漠ではなく、夜空に再び舞い上がり、消えていった。


 どれくらいそんな光景を見ていたのだろう、時間と空間を超越したこの場所からでは過ぎた時間も曖昧に感じられた。

 

 しばらく魂の浄化を続けていた知里が、おそるおそる声をかけた。


「魚ちゃん……。いや、ちがう。……きみはどこに行きたい? 戻りたいなら本人の場所を伝えるよ……」


 知里が目を留めた魂は、魚面になる前に切り離された、転生者の魂だった。

 二人とも少し悲しそうな感じがしたのは、どんな選択肢を選ぼうとも、失われる存在があるからだ。


「お母さんのところに帰る。あの人はもう私じゃないから……。その方がみんなもいいんでしょう」 

 

 魚面から切り離された前世の魂は、そう言って天に帰っていった。

 

「……お魚先生になるはずだった魂。……あたくしは逆に、この世界に生まれるはずだったロンレア伯爵家のエルマ令嬢を駆逐して、こちらに転生したわけですけどね……」 

 

 エルマは切なそうに唇をかみしめて、天に昇る魂たちを見つめていた。どんな思いでいるのか、転生者ではない俺には想像もできないが、エルマは小さな体を震わせていた。


 俺には何も言ってやれることがないから、エルマの頭にポンと手を乗せた。


 1000年もの長きにわたって少女たちを捕え続けたヒルコから、無数の魂が解放されていく。


 次第に攻撃の手は止んでいく。

 それとともにヒルコの姿も、クマムシと融合した怪物の姿からツギハギだらけの女性に、さらには顔のない球体関節人形のような姿に変化していった。

 

 ──いつの間にか、『時空の宮殿』から消えていた兄の和哉がヒルコの傍に立っていた。

 

「知里。面倒をかけたな……」


 和哉はポツリとつぶやくと、顔のない球体関節人形の手をとった。


挿絵(By みてみん)


「コイツは僕が引き受けよう。さよならの時間だな」


 そう言って和哉は、知里を見た。


「……お兄ちゃん。せっかく会えたのに」


 知里は少し照れ臭そうに、肩をすくめた。

 二人の間に微妙な空気が流れているのは、スクール水着だったからかもしれない。


「『時空の宮殿』は直行くんにやろう。知里は好きに生きるといい」


 水晶のモニタを通じて、和哉の言葉が俺の脳内に入り込んでくる。


「ちょっと待ってくださいよ、俺そんな大層なモノを……」


 声を上げたのもつかの間、砂漠には大きな光の柱が上がっていた。

 まるでそこだけ昼間になったような、しかし光源がどこから来るのかも分からないような、奇妙な明るさの光だ。


「1000年は長いようだがあっという間でもあったな。さて、次は何をしようか。宇宙はおそらく無限だ。やり方は無数にあり、どれもが楽しい……」


 ヒルコと手を携えた和哉は、光の柱の中で一方的にそう話して消えていった。 


 一瞬で夜の砂漠に戻った。

 いつの間にか俺たちも、『時空の宮殿』から外に出されていた。


 上空を見ると、そこにあったはずの〝クラインの壺〟はすでになく、『時空の宮殿』自体が忽然と姿を消してしまっていた。


 周囲には守護者だったスカラベの外骨格や、いくつかの宝飾品と女神の石像が無造作に転がっていた。


「え……?」


 俺とエルマとレモリーは、互いに顔を見合わせた。

 奇妙な夢から覚めたか、狐にでも化かされたように、俺たちは夜の砂漠のど真ん中に取り残されていた。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


知里「久しぶりにパ〇コのイングリッシュマフィン食べたんだけどさ。昔より粉が落ちなくなった。気のせいかな」


直行「あの粉はコーンスターチなんだってな。天然酵母の高級パンとかはライ麦の粉が振ってある。あれないと焦げるらしい」


知里「パ〇コのHPみても『粉が飛び散らなくなりました』って記事はないし……湿気のせい?」


エルマ「それは世界線が変わった証ですわ♪ オーストラリアの位置が左にズレたように♪ イングリッシュマフィンの粉かない世界に移行したのですわ♪」


知里「いわゆる『マンデラ効果』ってやつ? だとしたらあたしたちの活躍もアニメ化決定の世界線もあるのかな……?」


エルマ「次回の更新は5月8日を予定していますわ♪ 新たなる世界線へ♪ お楽しみに♪」

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― 新着の感想 ―
本当に奇妙な夢のような感覚に陥りますね。
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