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751話・万物流転(パンタレイ)

「『過去改変』も『都合のいい平行世界への移行』も効果がないなら、打てる手はただひとつ♪」


 エルマはもったいつけて俺たちを見回した後、


「ヒルコさんの『認知を書き換える」これ一択ですわ♪」


 そう得意げに言い切った。

 そして周囲に魔力によって超複雑な幾何学模様の魔法陣を描き始めた。


「認知を書き換えるって……」


「直行さんと知里さんのお兄さんは援護よろしくお願いしますわ♪」


 ──この間にもヒルコの触手攻撃や核熱攻撃は続いている。

 傍から見ればノーダメージだが、実際は全滅エンドを何回か『過去改変』でキャンセルしながら、いまの状況を保っている。


「奴に『人間の認知能力』があるとは思えないが……」


 和哉の懸念には俺も概ね同意だ。


 ヒルコの意志は「知里と同化すること」そのためだけに、『不可触の女災』として数多くの命や肉体のパーツを奪い、13歳の転生者に接触するなど気の遠くなるほどの時間を費やしてきたのだろう。


 その一方で疑問が残るのは、知里がこの世界にあらわれて以降も、ヒルコは知里を探し続けていたという事実がある。


 異能『神速通』で自由自在に世界を行き来出来るヒルコにとって、知里を狙おうとすればできたはずなのに、それをしなかったのは、彼女について、ヒルコには〝認識できない何か〟があった可能性が高い。


「知里さんのお兄さん♪ ヒルコさんを作り出したときは、『脳』に当たる部位は作らなかったのですね♪」


「ざっくりと言えばヒルコはゴーレムだ。その(コア)の部分に俺の意識下にある『知里の記憶』を与えたつもりだったが、失敗した……」


 和哉は眉をひそめながら、下唇に親指を当てた。


「……知里さんの記憶を持つゴーレム」


 俺はややドン引きしながら、想像してみた。


 和哉は『時空の宮殿』で、ほとんど神のように振る舞いながら、最愛の妹をコピーしようとしていた。

 これは想像ではあるけれど、最初から姿を知里に似せなかったのは、失敗したときに壊したくなかったのだと思われる。


「13歳までの『知里の記憶』を持っていたとしても、ヒルコの認知はあくまでもゴーレムとしてのものだ。だから奴に『人間のアカシックレコード』を与え、妹を召喚できる者を探して千年も下界を彷徨った……」


 話を聞いていると、和哉という人物が元凶なのだと分かる。

 しかし同時にひとつの疑問が沸き起こった。


「だったら和哉さん。どうしてあなたが知里さんを召喚しなかったんですか……?」


「したさ。順序が逆だが、ゴーレムを作る前にな。しかしダメだった。妹の魂はどこにもなかった。触れることも、つかむこともできなかった……」


「あたくしはクレーンゲームのような認識で『直行さんの魂』をゲットしたんですけどね♪」


 召喚術についてはまったく理解の外である俺に対し、エルマが和哉の言葉を補足してくれた。

 

 確かに俺がこの世界に呼び出されたとき、そんなようなことを言われた覚えがある。


 ──あの時の俺は、地下鉄のホームに入ってくる電車に飛び込もうとしていたんだっけ。

 その時の弱った魂を、エルマに掴まれたということか──。


「知里さんが何者なのか、あたくしも前々から不思議には思ってましたが♪ そんなことよりも、ヒルコさんの『認知を書き換える』必勝の策を実行しますわよ♪」


 先ほどから空間を埋め尽くすほどに魔法陣を描いていたエルマ。

 さらにそれを『複製』し、和哉が『時空の宮殿』の特性を利用して複数の次元に術式をちりばめていく。


「しかしエルマよ。『人間』ですらないゴーレムの認知能力なんて、どうやったら書き換えられるんだよ?」


「カンタンなことですわ♪ あたくしの『複製』で知里さんの脳をコピーしてヒルコさんに植えつけます♪ ヒルコさんは念願の知里さんの意識を手に入れられます♪」


 エルマはそう言いながら『太歳肉霊芝(たいさいにくれいし)』を召喚すると『複製』の異能を発現させた。


 『太歳肉霊芝』はいわば万能細胞のような存在で、かつて俺と魚面が呪いにかけられて肉体を融合されてしまった際、復活に使った触媒のようなモノだ。


挿絵(By みてみん)


「けっこうシワシワな知里さんの脳みそ大・召・喚♪ ですわー♪」


 魔法陣からあらわれたのは、プルップルの白子のような桃色の脳だ。

 外気に触れて大丈夫かとも思ったが、魔力による障壁で防いでいるようだった。


「知里の……脳だと」


 さすがの和哉も言葉を失ってしまったようだ。


「けっこう美味しそうな脳みそじゃないですか♪ ねえ知里さんのお兄さん♪ 平行世界を展開して〝上手くいく世界線〟にチューニングを合わせてくださいね♪」


 そう言うとエルマは、魔力による障壁に包まれた脳みそをヒルコに向けて転移させた。

 

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


エルマ「このお話が更新された26年4月のニュースで『ぺんてる』が社名変更した件がありましたわ♪」


知里「ぺんてるってシャーペンとかクレヨンの会社の?」


直行「ブランド名はそのままだけど、『アストラム株式会社』に変更にされるようだ」


知里「ラテン語で『天体』って意味だよね。ちょっとゲーム会社を連想させるね、アトラスとか」


直行「まあ現在のぺんてるは上場企業ではなくて、親会社はアスクルなども展開するプラスグループだからな」


知里「デジタル化の波で、文具市場は厳しいのだろうけど、少し寂しいよね」


小夜子「わたし『ぺんてるクレヨン』のパッケージが大好き!」


知里「向かい合う少年少女のレトロイラスト、エモいよね」


エルマ「次回の更新は4月10日を予定していますわ♪」

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― 新着の感想 ―
これはホントに大技過ぎます!! うまく行くのでしょうか??
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