サイドB-61 魔法障壁装置の防衛は
「こっこれは...」
それらは今まで何もなかった空間に突如として現れた。
他のストレージ持ちはともかく、トクマはストレージというものの存在は知っていても、実際に目にするのは初めてだったので、驚きがマルティ達には新鮮だった。
出現した5体のゴーレムは、細身のウッドタイプのようで、ところどころ鈍く灰色に光る金属が使われていた。
身長も180センチメートルとマルティたちと比べるとやや高いくらいで、全体を通してひょろっとした感じである。
大ぶりの盾も淵は金属が使われているようだが、大部分は木でできていて、みため強度がなさそうであった。
ただ目を見張るのは、上半身から伸びている手の数だ普通の位置にある腕のほかに胸と背中からさらに2本ずつ手が伸びている。
大盾はよく見ると胸から生えた腕が持っており、本来のうでにはそれぞれ長さの違う棍棒、右手には1メートルはある太さ3センチ程度の棍棒、左手には木でできたような先端が太い棍棒がもたれていた。
背後の両手には長さ40~50センチほどの鉄の棒に持ち手が付いた、トンファーという武器が握られていた。
「本当はもっと強いアイアンタイプでもよかったんですが、あまり目立つとここに施設があるよと宣伝するようなものなんで、目立たないタイプにしました。見た目は貧弱ですが、それでも普通の兵士だとおそらく4~5人がかりじゃないと、倒せないとおもいます。先日襲撃してきた魚人たちを基準にしてですが」
つまり5体位れば20人以上は相手ができるという計算になる。
「でも、これは剣をもっていませんよ。大丈夫ですか?」
「襲撃者を殺すのが目的ではなくて、拠点を防衛できて追い払えればよいので。それに棍棒といってもばかにしてはいけません。これでも彼らの持つ腕力とスピードでは、加減をしないと敵を殺してしまえる威力があります。魔獣対策用に作ったゴーレムで対人用ではないので、これでも装備がきつすぎるんです。本当は一番大きな鉄の棍棒も別のものにしたいくらいでして...」
ほぉー、それほどとトクマが感心する横で、カスミが口をはさむ。
「ただこれの相手が弓矢や魔法などの遠距離攻撃者ばかりだとどうなるの?守るだけで、攻めないタイプなでしょ、そのウッド・ゴーレム」
「うんそうだよ。だからディー・エッグFも併用する」
「ディー・エッグF?あの浮いている卵群?」
「カスミ姉、だけじゃないか、ミヤビ以外は見るの初めてだったね」
マルティはそうかと思い至り、浮かぶ卵型球体について説明をする。
「あれは守護兼攻撃を行う領域巡回型の魔道具だよ。指定された領域を巡回して索敵を行うだけでなく、雷撃や光線で攻撃も可能なユニットなんだ。半径50メートル四方で運用が可能なんで、さっき聞かれた遠距離の敵の撃退に使う」
マルティの持つスキル『構造解析』は、ガチャで排出された魔道具アイテムにも対応が可能だった。
それを用いてマルティはディー・エッグについても解析をおこなった。
さすがこの世界のマスター(いればの話だが)が設計したものらしく、複雑ではあるが精工で無駄のないシンプルな魔法式が盛り込まれていた。
さっそくマルティは、自身のスキルでこのディー・エッグの再現に挑んだ。
素材がアダマンタイトとミスリルの合金と、ちょっといまのホクトたちのスキルでは実現できない化合物だたため、ミスリルにて代用する。
素材の変更に伴い、若干の魔法式の変更が必要だったため、どうせならと色々試してみた。
試作機を10回作り直した結果、従来の空間操作による暗黒閉鎖にレーザービームだけでなく、ステルス機能と雷撃攻撃も可能となった。
構成台数もオリジナルの7台から10台まで増やせた。
「ステルス機能?」
「ああ、まわりの景色をまねて守る対象物だけ見えなくする機能さ」
と実演する。
魔道具のある施設の建物と先ほど出したウッド・ゴーレムだけが見事に消え、ただの森の景色となった。
質問したカエデも他のメンバーも、驚いて境界を行ったり来たりした。
ちょっと境界を越えると、もとの様子が見えるからだった。
「トクマさん、いまから彼らに命令するんですけど、複雑な認識は無理なんでトクマさんと今ここにいるメンバー、およびトクマさんが申請した人物以外は、魔獣も含めて追い払う指令とします」
「それはつまり、いまとのころ私たちの都市の人間は私がいないと誰一人ここには近寄れないということですか?」
「はい、そうです。ただトクマさんが先に入って、追加で三人とか申請してもらえれば、通せます」
ちょっとだけ不満そうなトクマではあったが、状況が状況だけにやむを得ないと感じ、了承した。
マルティは、ウッド・ゴーレムたちに対しては、そこにいた人間とトクマが事前に申請した人間以外は徐々に加減を減らす武力で追い返すこと、活動不能にしてもよいが殺すまではしないこと、逃げる敵を追わないことを指令した。
ディー・エッグFに関しては、ステルス機能で施設を隠すことと、敵が侵入もしくは遠距離攻撃をしてきた際に、個別に迎撃すること、レーザーは武器に対してのみ利用して、それ以外では死なない程度の電源で対応することを指令した。
「それにして、我が国も魔道具に関してはかなり先進的だとの自負がありましたが...ウッド・ゴーレムにしてもあの範囲防衛機器にしてもマルティ殿の作られる魔道具には脱帽です。魔力炉の作り直しもあっという間でしたし。ノースランド連邦国というのはよほど魔道具技術が進まれているんですね」
「いや、そんなことないですよ。マルティが異常なんです」
次の故障拠点に移動しようと馬車に乗り込んだとき、トクマが技術力と対応の速さに感心してぽつりと漏らしたことばを、後ろに座るカエデが瞬殺で否定した。
「あのタイプのゴーレムやディー・エッグFだっけ?あれは仲間である私たちだって初めてみましたよ。そのほかにクラウドみたいなゴーレムもマルティたち以外で使役しているのを見たことないし、さっきの言い方だともっといろんな種類のゴーレムを持っているかんじじゃないですか?、ねえ、マルティ」
「そっ、そうだね。まあいろいろ持ってはいるかな....」
「でしょ?とにかくこの男、ああいうのをいろいろ作るのが趣味でしかも凄腕の錬金術師なんですから、彼らは特別だと思ってください」
「そうだにゃ。そういう意味ではあれはマルティの趣味にゃ。普通とは思わにゃいほうがいいにゃ」
マルティ側の人間のはずが、どちらかというとトクマと同じような立場の人間がおおいことをしてきされ、マルティは苦笑いするしかなかった。
「でも、だとするとあれらはAランクの魔石同様希少品ですよね?あとでお代を請求されるわれらとしては、非常に価格が心配なのですが...」
「えーと、あれらの代金をいただくつもりはないのでご安心を。あれもネネ王女様との取引の一部と思ってください」
「いや、しかし」
トクマも詳細までは知らさせていないが、何かこの国での便宜をはかるだけで、金銭は全く要求されていないことは知っている。
ただ、今回マルティが出した魔道具らは、どう考えてもひと財産ありそうな金額になる。
「あと、修復する地点と主要拠点含めて全部で15ヶ所あります。すべてに同じような護衛を置いてもらうとなると、ゴーレムがあと75体とディー・エッグFとやらが、15組必要です。さすがにそれすべてがタダでお貸いただけるとは、いくらなんでも...」
「いや、たぶん、その心配はいらないですよ」
食い下がるトクマに、今度はカスミがフォローをいれる。
「私はこの男のことをよく知っているから言えるのですが、たぶんですけどあのゴーレムやディー・エッグFの保有している数は100や200じゃすまないです。作り出したらとことん作らないと気が済まない性格でして。もしくは材料の木とかミスリルがあふれてて別の形にしてるとか。よくあるのが、きりのいい数値プラス消費する分とかの作り方もします。だから想像ですけど、あのタイプのウッド・ゴーレムだけでも3100体程度、ディー・エッグにしたらそこまでじゃなくても520組とか、そんな感じじゃないかと思うけど。どう?マルティ」
「ははは、まいったな、カスミ姉には」
その言葉は図星だったらしく、マルティは空笑いをする。
カスミが漏らしたその数値は実際マルティが持つそれよりははるかに少なくて、先ほどのウッド・ゴーレムは4145体、ディー・エッグFは632組だった。
さらにいうと先ほどのタイプとカエデ・ツバキ姉妹の家に置いてきたタイプのウッド・ゴーレムのほかに、大小合わせて20種類ぐらいのウッド・ゴーレムが、合算で10万体以上ストレージに入っている。
樹海での伐採で大量にとれるだけでなく、ファーラーン・ダンジョンにてとれる樹木系魔物の討伐もあいまって、多種多様の木材があふれんばかりにストレージに入っていて、それでいながら放置できず保持してしまうのもカスミのいう通りだ。
そのほか試作タイプの1体しか作っていないゴーレムも数は50体ぐらいとすくないものの、解体せずそのまま重量ストレージに詰め込んでいるあたり、作ったものは捨てずに有効活用をとことこしたがる北斗の性癖があらわれていた。
「というわけで、100や200程度、なんともないはずです。マルティに遠慮しないでがしがしお借りください」
カスミのとどめの言葉を受けて改めてマルティを関心の眼で見たトクマに対して、マルティ=北斗自身は褒められているのかけなされているのかわからない複雑な心境で先を急ぐのだった。




