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サイドB-60 魔法障壁装置の修理

「はやいです、早すぎます。馬車がもちませんって!」

「心配ご無用。クラウド用に作った特別性です。これの倍のスピードでももちます。そんなことより、道はこれであってますよね?」


御者席のマルティの横で座る若い正規兵が、悲鳴をあげるのをマルティは説明で黙らせる。

街を出発してもう何度目かの苦情なので、まともに取り合わなくなっていた。

兵士は名前をトクマといい、街に残った数少ない正規兵の一人であった。

海岸線の魔法障壁を生み出している施設を回るために、地理に明るい者をひとりお願いしたところ、つけられたものだった。


「案内だけでよろしいのですか?途中は魔獣もたくさん出没する領域ですが、護衛は?」

「いりません。僕たちのパーティメンバーで十分です」


ほんとうに大丈夫かと再三確認をとり、残り少ない兵士をよこそうとしてくれる男爵にていねいにお断りするのには少々手間がかかった。

マルティとしては、兵士などではなく本当に案内だけでよいと思っていたのだが、場所を把握しているのは男爵家の要人と兵士うちの数名しか知らないということで、しょうがなくうけいれた。

本当はあとでカスミも参戦させるつもりなので、あまり男爵家の人間には情報が行くのがこまるということもあった。


さっそくミヤビのストレージから出してもらう体で、クラウドと専用の馬車をとりだす。

クラウドの威容には驚いた男爵一同であったが、これがさらに引き馬となる漆黒の豪勢な馬車にも男爵は眼がいった。

今回用いる馬車は、7人しかのらないため、スピードをより重視した小型タイプのものだった。

屋根はついているものの、戦闘などで乗り降りが素早くできるように、扉や壁は最低限しかなく、独立したイスだけが3x3で並んでいるタイプのものだった。


前回アースワンからイオシス移動につかった20人クラスの馬車は窓もすくなく壁もがっちりつけていたが、あれは非戦闘員がのるための防御の要素があったのだが、今回のるメンバーは、そんなことは気にする必要はないくらいのステータスもちばかりだから。

御者席には手綱を握るマルティと、案内係のトクマのみが座っている。

同行は残りパーティメンバー4人とあとから参加した体になっているカスミだけだ。


道中男爵が指摘した通り何回か魔獣に遭遇するも、よけきれるものはスピードにものを言わせて振り切っていく。

馬車をひくクラウドは、マルティの指示を的確に受領でき、魔獣に触れるか触れないかのぎりぎりのラインをとおってパスしていく。

高速を誇るらしいこの大陸でのみ生息しているような紫色の魔狼の集団にもであったが、あちらがマルティの馬車に気が付いて包囲を始めるまえにあっという間に通り過ぎてしまって、ご自慢の速度も発揮できないでいた。


途中道の真ん中をふさぐタイプの魔物、樹木タイプでゆっくりと移動できる長い蔓とラフレシアのような花弁を3つもっているに遭遇したときは、さすがに避けるスペースもなかったので、マルティが魔糸でばさりと切り裂く。

人の3倍はあろう樹木の魔物が空中で3等分に分断されて倒れたときは、トクマは悲鳴をあげ、後ろに乗るメンバーには自分ばかりずるいと声をあげた。


そんなこんなで最初に案内された都市から最も近い魔道具設置場所は、それでも5キロは移動が必要だった。。

施設は外洋が見通せる海岸ギリギリの崖の上にあった。

ここは魔道具が自然停止した場所だということで、魚人たちに襲撃された気配はなかった。


「みんなは周囲を警戒してね。僕は中に入って修理するから」

「了解。まかせて」


カエデの声を確認するまでもなく、マルティはトクマに開錠を急がせて建物に入る。

背後の心配は微塵もしていない。

外を守る5人+クラウドの戦力は、ステータスだけでいえば数十万人を擁する軍団に匹敵するのだから。


建物内は見覚えのある魔力炉が3台とそれにつながれた大きな魔道機器が鎮座していた。

魔力炉は3台中1台は動いていたが、魔法障壁を発生させる機械は沈黙していた。


「魔法障壁を形成する装置は、これ1台で10キロメートル程度の範囲をカバーできます。最低魔力炉2台分の動力が必要ですので、1台しか動いていない今は安全装置が働いて止まっています」


3台の魔力炉があるのは負荷分散とバックアップのためだったろうが、いきなり2台がお釈迦になってとまってしまったというわけだ。

マルティはすばやく魔力炉に近づいて魔力供給線をとりはずす。

電気と違い、エネルギーを供給しているだけなので、取り外しに極性間でのショートを気にしなくて良いのが利点だ。

おそらく経年変化による本体の劣化、もしくは熱等による組み込まれた魔法陣の損傷による故障とおもわれるが、調査して修復するよりはばらして組みなおした方がマルティにははやいので、さっそく分解と組成を行う。


箱としてできた魔力炉装置に頭にある魔法式を書き込むことであっさり復活した。

ついでに魔力が枯渇しかけていた魔石も自前のものに置き換える。

それを元通り魔力障壁発生装置の供給線につなぎなおすと、もともと動いていた魔力炉との動力との合算で低い音とともに障壁発生装置が淡い光を放ち始めた。


「おおっ、障壁発生装置が復活した」


トクマの驚嘆と歓喜の声を無視して、マルティはもう一台の魔力炉も同じように修復する。

さっと作り直して同じく障壁発生装置に接続した。

さらについでとばかりもとから動作していた一台も同じように外して作り直して、設置する。

この間約30分、1台あたり10分以下で処理したことになる。


「これで当面は止まらないでしょう。魔石も同じサイズでAランクのものを詰め込みましたので、いままでよりも長く持つと思いますよ」

「えっ」


マルティのセリフにトクマがぎょっとする。


「Aランクの魔石とおっしゃいましたか?」

「はい」

「そのような高級な魔石は、私共では所持していなかったとおもいますが」

「そうですね。作り直すための材料は前の機器を解体すれば手に入りましたが、魔石については使用期限がありますので、わたくしどもが持っている魔石でうめました」

「埋めました...ではなく、そのような高級な魔石を3個も使ったというのですが?」

「...えーと、なにか問題でも?」


マルティが無頓着とでもいうように、トクマはひとつため息をつく。


「ありまくりですよ!Aランクの魔石が一体いくらすると思っているんですか?それも3個も!その代金はどうするんですか!」

「いえ、これは僕たちが魔物討伐で得たドロップ品ですので、とくにお金を要求するつもりはないんですが...」

「そおいうわけには」

「はい、これ。交換してとりだした魔石です。まだ使えますよ。それよりも困りましたね」


マルティはこれ以上この議論をするつもりがなかったので、無理やり話題をかえる。

トクマのいう通りAランク魔石は、Aランクの魔物からしかでない。

Aランクの魔物といえば、ファーラーン・ダンジョンの5頭首ヒュドラがそれで、ホクトのランクアップのため繰り返しエギルに出現させて狩っていたので、ストレージのなかには600個以上あるし、手に入れようと思えば今後いくらでもてにはいるので、ホクトもあまり気にしていない。

お金にすればそれなりの大金が入ることもわかっているが、どちらかというとマルティの錬金の材料に使う目的でもっているので、費用に頓着していなかった。

ちなみにセント・ニコラスmkⅡ号につかっていた中魔石はBランクで、Aランク魔石に比べて1/30の魔力しか保有していない。

希少性もあるので売った場合の価格は、Bランク魔石の50倍以上である。

セント・ニコラスmkⅡ号にAランク魔石を使っていないのは、たんにBランク魔石の数が、数万に達しているというただそれだけの理由だ。

それ以下のランクの小魔石/極小魔石については、ユニット・ストレージに入れるだけ入れてもう把握もしていない。

セント・ニコラスmkⅡ号である程度は消費されるが、効率がいままでの4倍に上がっているので、定期的にランクアップのための魔獣刈りをしているホクトは、今後もっと余っていくだろう。


「修理して稼働したののはよいですが、ここも襲われる可能性があるんですよね?かといって、あなたたちの兵力はここを守る人数はもうさけないでしょうし...。破壊工作を行っている魚人族は、まだこの大陸にいるんですかね?それとも前回拿捕したので、全員なんでしょうか?」


マルティの心配を理解したトクマが、すぐさま考え込む。


「それは...わかりかねます。実際に破壊された施設は壊されたあとで確認してわかったので、襲撃者が何人いたのかも不明です」

「つまりは障壁をはりなおせたものの、大陸内にあちらの戦力が残っている可能性があって、いつ襲撃をうけてもおかしくないということですよね?」


トクマは苦い顔をしながら、それに肯定した。


「おっしゃる通り可能性は否定できません。かといってここに割ける人員も、捜索して残りの魚人族を探り出す作戦も敢行できないのが現状ですので...」


まだ修理が済んでいない地域もあるので、今この瞬間に後続隊が上陸していてもおかしくない。

このままでは壊されるのと修理するの、いたちごっこになりかねない。


「わかりました。そういうことなら、ここは封印しましょう」


マルティはトクマを促して施設の外に出ると、マツリを呼んだ。


「人型戦闘タイプWのゴーレム5体と、ディー・エッグFを出して」

「なんに使うにゃ?」

「ここの護衛用にね」


ふーんといいながら、ミヤビは指示されたものを取り出す。

ミヤビのストレージほどの数ではないが、同じものがマルティのストレージにはいっているのだが、トクマがいる以上いつもの「ストレージもちはミヤビとマツリのみ」のスタンスを崩せないのをミヤビも理解しているので、何もいわない。


そこには木製の鎧と盾を装備したウッドゴーレム5体と、こぶし大の卵型の物体が10個浮遊して出現した。

浮遊しているそれは七色に薄く明滅していた。


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