サイドA-51 サブ・キャラの整理
姉と同居かもという危機的状況を回避できた北斗は、それはそれとして姉の助言は確かに実行すべきと思いはじめた。
すなわちサブ・キャラやアイテムの棚卸とスキル把握である。
もちろんせっかく手に入れたワールドスキル『多重キャラ割当』を試しに使ってみるのを忘れない。
ホクトにかぶせるキャラは、当然というかずっと『多重自我憑依』で使っていて理解している錬金術師のマルティであった。
香澄にはこれまで通りミヤビと今回はマツリも同行させて、ベルゼ樹海のミヤビが最後にポイントした地点に飛んで、引き続きダンジョン探しをやってもらう。
ホクトはファーラーン村より徒歩で北に1日程度の祖父とされている人物が作った自宅にて、『多重キャラ割当』の効果の確認とサブ・キャラたちの見直し、加えて今回から『多重自我憑依』で北斗が憑依しているサブ・キャラ、オリョウのスキルの拡充をおこなう。
オリョウは種族がハイ・ヒューマンのURキャラで古代魔法含む多属性をフルに使える大魔法職なのだが、固有のスキルで一度見たものは絶対に忘れない記憶力と超高速の暗算術をもっているため、非常にもったいない気もするが今構想中の商会の代表にしようと考えていた。
それで今回のログインから参加させて、少しずつ活動させるためにワールドスキルで北斗が中に入っているというわけだ。
商会を任せるにあたって基本スキルだけでは足りない部分、ストレージや料理スキルをスキルチェインをみつつ、スキルポイントを付与して整備していく。
さすがはLv.5000のURキャラらしく、魔法職をメインとしているせいもあるがMPが盛りだくさんでかつ時間当たりの回復量もミヤビを越えているため、ストレージはミヤビを越えるユニットタイプストレージ(松)を20000、重量タイプストレージ(松)を100トン取得させた。
ちなみに利用したスキルポイントは21万であった。
ミヤビやマツリの『八百万倉庫』のように単位時間当たりの維持MP必要なしとはいかないが、オリョウ自体の固有スキル『魔力効率利用』をもっているおかげで、膨大な魔力量をもっているにもかかわらず魔力消費低減のスキルにより消費量は通常かかるそれの1/4ですみ、その値は彼女の時間当たりの魔力回復量の1%にも満たない。
あと商売人として必須の能力と思われる鑑定のスキルを、ホクトキャラと同じように『神眼』まであげておく。
料理スキルについては基本別に料理人を立てるつもりなので、必要ないといえばないのかもしれないが、一応『町の料理屋』、『町のパン屋』、『町のお菓子屋』、『大都市のシェフ』、『大都市のパテシエ』、『和食シェフ』、『和菓子職人』をそれぞれLv.10までつけておいた。
料理専門の店も開く予定なので、総代表としてはいざという時に助っ人に入れるよう、料理人としてもマルチな技術をもっているほうがよいと考えての処理だった。
こちらのスキルはストレージほどはスキルポイントを利用しなかったので、欲を出してもう少し料理スキルを加えようかとも思ったが、様子を視つつ足していくと自戒して、我慢する。
あとは売るものをダンジョンで農耕に専従させていメグとジョーのストレージから移し替えるだけなのだが、それにはまずファーラーンにオリョウを一回は正面から入場させる必要があり、ホクトも追従した方がいいのもあってあとまわしにし、オリョウにもサブ・キャラの棚卸を手伝ってもらう。
まずはサブ・キャラの整理から始める。
サブ・キャラは現時点で78体獲得している。
そのなかで稼働中もしくは使用頻度の高い、カスミ、マルティ、ミヤビ、マツリ、エギル、タクミ、オリョウ、クリスティーネ、マーガレット、ジョセフィーヌの10人と最近出た若草姉妹の残り二人をのぞく66体について整理することとする。
ただここで分類パラメータが多く、しぼり切れないことに気が付く。
ちょっと考えただけでもランク(SUR/UR/SSR/SR)、基本レベル、種族、職業、年齢、固有スキル、習得スキル、各ステータス値、名前に性別となる。
これをノートにまとめるにしても、どのパラメータを軸にしてよいかが結構悩む。
何も考えないで、キャラ単位でこれらをノートに書き留めるという手もあるが、それだと鑑定やHELPで見る情報とかわらず、全体把握も記憶に頼るしかなくなる。
かといって、パラメータごとのリストページを作るのにも、66人分というのは手書きでは非常に骨が折れる。
やる前からその作業量の多さにうんざりしてしまい、ストレージからホクト自身が『和菓子職人』スキルで作りおいてたどら焼きを二人分だし、お茶に逃避する。
お茶自体や皿の用意はホクト家につい先日リリースしたばかりのホムンクルスにお願いする。
マルティの錬金術師としてのスキル、ホムンクルス作成第一号でメイドタイプのそれは、安直だがU1(ユーワン)と名付けた。
エギルのところにつけてあるタクミのようなサブ・キャラでもよいのだが、自立して動くためには詳細な命令が必要で、しかも会話が必要事項以外のところでは成り立たないので、身内がいるところでしか使えないといった不便さがある。
その点ホムンクルスは主人に絶対服従の前提である程度知能を持っているため自律的に思考ができ、会話も成り立つので他の者がいる中でも利用可能なことに気が付いて、作り出したというわけだ。
マルティの作れるホムンクルスには、いろいろ属性もつけられるみたいだが、最初のお試しということもあって普通のヒューマンタイプを作成した。
能力的には、ごく普通のヒューマンに少し毛が生えた程度だが、それでもLv.150相当である程度の魔獣対応は可能だ。
もっともメインはあくまで家事手伝いをターゲットにしたので、そこを求めるつもりは今はなかったが、先頭に特化したホムンクルスの作成にも興味はあるため、北斗的にはそこもそのうち追及して大量生産するつもりである。
それにしてもサブ・キャラの整理ノートには困ったものである。
現実世界でPCが使えるのであれば、サブ。キャラたちのスペックをDB化して検索にはSQL文(データベースの内容を目的に合わせて抽出や追加、削除できる構文)で、欲しい項目が瞬時に出せるのにと北斗はおもう。
魔法があるとはいえこの中世と同じような世界で、電子制御が発展しているわけもなく、魔法があるがゆえに今後もそのような発明があるとも思えない。
雷を操る魔法が存在するのだから、現実世界と同じように磁力の数値化を魔力によってなにか作れそうな気もするが、原理は知っていてもそれをハードウェア化するにはおそらく途方もない労力と時間がかかるであろうから、まだ66人分のスキルを手を痛めながらも手書きでまとめた方が楽だろうとも思う。
(まてよ、魔法か)
一瞬北斗の中で、魔道具に関するある物語が思い出され、それならばいけるのではと思い当たる。
「オリョウ、いまちょっと思ったんだが、しらゆき姫にでてくる魔法の鏡みたいなものは作れないかな?あれはこちらの聞きたいことを検索・精査して瞬時に答えてくれる、いわば魔法世界におけるAIみたいなもんだよな。すべての事象ではなく、サブ・キャラや魔道具に関することだけでもよいので、そういうのを覚えさせて答えてくれる手持ちAIみたいな魔道具をつくれば、ノートとかにまとめる必要もなくないか?」
「なるほど、それはおもしろく画期的な案ですね。ただ作り方がよくわからないです。そのような仕組みを魔力によって鏡などに封じ込める手段が、皆目見当もつかないので...その案をきいてちょっと思いついたのですが、私のこのサブ・キャラでそれの代用をするのはどうですか?」
「どういうこと?」
「このサブ・キャラは一度見たものは絶対に忘れない記憶力をもっています。このスキルは忘れないだけでなくて、覚えている情報を整理・検索する能力も付随して持っていますから、各サブ・キャラのステータスを覚えておいて特定の項目の検索をしたい場合は、私に問い合わせていただいてそれを回答するというので、その魔法の鏡の代替えができないかということです」
ホクトはオリョウのいうことを瞬時に理解する。
別れていてもどちらも『多重自我憑依』で分裂させている北斗なのだから、考えるる傾向はほぼ同じだ。
「オリョウとこのホクトキャラは、テレパシー通信のようなものが可能だから、そのつど問い合わせればよいということか」
「そうです。そしてこの方法の利点は、今後サブ・キャラのステータスやスキルが上がった場合に更新がしやすく、かつ新たなサブキャラや魔道具アイテムを取得した場合でも追加しやすいということです」
「ほんとうだ、すごい、いい案だ。一番楽だし保守性もいいときたもんだ」
この世界での整理の手間の労力を疎んじていた二人としては、もっとも安易で将来性のある方法を見つけたことで、大いに喜んだ。
「じゃあ、さっそくやっていくか」
ホクトは自身のサブ・キャラ専用ストレージから2~3人ずつ取り出しては並んで立たせ、それをオリョウが『神眼』鑑定にてステータスをおぼえていく。
それを1時間かけて終わらせると、こんどは出せる魔道具、なかには街の大きさに匹敵するようなゴーレム群はのぞいて、それについても鑑定にて覚えさせていく。
次にサブ・キャラにて、分類わけをおこなっていく。
項目は先に挙げたランク(SUR/UR/SSR/SR)、基本レベル、種族、職業、年齢、固有スキル、習得スキル、各ステータス値、性別にて上位のものを抽出し、タグ付けとして『多重キャラ割当』、『多重自我憑依』の容量が増えたときに割点けるキャラ、反対に閉鎖した空間や樹海探索などで、仲間以外には絶対に合わないシチュエーションでのみ使うキャラ、当面封印しておくキャラを選別した。
封印にタグづけしたキャラは三人。
SURキャラの魔族は、この世に魔族が絶滅したとのうわさから、少しでも誰かに接触する可能性を否定できず当面封印対象に。
おなじくSURキャラで竜族、ファンタジーにある人と竜の形態どちらでも対応可能な人種も伝説程度にしか残っていないので封印。
最後は、あのアヤコの名を冠したネームドURキャラである。
他の二つはともかく、最後のアヤコだけはなぜか触れてはいけないように感じる北斗であった。




