第13話「復讐の連鎖」 - 6
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
◇アンナ・セルヴィオラ編
数ヶ月後、初夏の風が草木を揺らすフェイルノスの村。
3姉弟―タリーサ、トーマス、アンナ―はかつて過ごしたこの村を訪れていた。
ここは、母アイリーンとタリーサがセルヴィオラ家襲撃から逃げ延び、双子のアンナとトーマスが生まれた場所だった。村の端に佇む古い家は、今も3人の思い出が刻まれている。
その家に今も住むのはセルヴィオラ家で侍女だったグロリア。3人が旅立った後もこの家と墓を守り続けている彼女は、帰郷した3人を笑顔で迎えた。
家の裏手に広がる小さな丘では、風が頬を撫で、陽光が草地を輝かせていた。そこには3人の手で新たに建てられた墓があった。
「忍者さんたちのお陰で私たちは生き延びることができ、そしてお父様の死の真相を知ることができました。本当に、本当にありがとうございました!」
アンナが墓前で手を合わせ、静かに祈りを捧げる。その声は穏やかで、感謝の気持ちに満ちていた。
ルーファスとアイリーンの墓の横に立つ新しい墓石には、ティレタル家の忍者たちの名前が刻まれている。彼らが自分たちのために命を賭したことを、3人は忘れない。
「結局、アーノルドとエミリーの遺体は見つからなかったね。やはりアビゲイルにやられたんだろうね・・・」
トーマスが墓石を見つめながら呟く。その言葉に2人は静かに頷いた。
タリーサの心には、彼らと過ごした日々が浮かんでいた。
母アイリーンに隠れて暗殺術を習い、彼らから得た知識と技が、タリーサの剣士としての力を支えていた。彼女の中で、忍者たちの教えは今も生きている。
タリーサはそっと母アイリーンの墓に目を向けた。
「お母様……」
彼女の声は自然に溢れたものだった。
「お母様の言いつけを守らずに、お父様の真実を探しに旅に出てしまいました。知らなければ良かったと思うこともたくさんあったけど……でも、知ることができて本当に良かった。お母様が愛したルーファス・セルヴィオラは最後まで正義の人でした。きっとお母様も、それを誇りに思ってるよね」
次に父ルーファスの墓に向き直り、そっと微笑む。
「お父様、私、聖騎士団副団長になりました。お父様に負けない立派な騎士になります。どうか見守っていてくださいね…」
その声は少し震えていた。
涙をこぼす彼女の肩に、トーマスとアンナがそっと手を置いた。タリーサは2人の手を握り返し、目を閉じた。言葉はなくても、それだけで気持ちが伝わった気がした。
タリーサは気持ちを切り替えるように弟に話しかけた。
「ところで、トーマスは村で何か面白い話でも聞いてきたの?」
タリーサが問いかけると、トーマスはニヤリと笑って答えた。
「聞いたよ! 今度、久しぶりに月明かり団がこの村に来るらしい! 明日ぐらいじゃないかな?」
その言葉に、アンナの瞳が輝く。
「本当に? みんな元気にしているかしら?」
「会いたいね! そうそう、いまの月明かり団には新しい道化師がいるらしいよ」
「それは楽しみだわ!」
3人は笑いながら会話を続けた。7年前、月明かり団は彼らに旅立ちのきっかけを与えてくれた。彼らとの再会は、3人にとって特別なものだった。
その時、家の方から声が響く。
「皆様! 昼ご飯の用意ができましたよ!」
家の窓から顔を出すグロリアが、明るい声で呼びかける。それに応える3人の声もまた、子供の頃に戻ったように元気だった。
「はーい!」
足元の小道には、太陽の光と葉の影が交互に揺れている。どこからか鳥のさえずりが響き、初夏の村の穏やかさをさらに引き立てていた。
丘を降りながら、タリーサはふと思いついてアンナに尋ねる。
「ねぇ、アンナ。これからどうするの?」
「え?これからもずーっとお姉様のそばに居ますよ。もう私も若くないんですから」
「なに言ってんの、まだ19歳でしょ?」とトーマスが笑いながら言う。
「そっかぁ……えーと、35歳に19足すから・・・54歳?」
タリーサが無意識に呟いた瞬間、アンナは驚いて声を上げた。
「あー!!!どうして言っちゃうんですか、お姉様!」
その反応に、タリーサは自分の言葉に気づき、ハッとした表情を浮かべる。
アンナは35歳で遠くタリンドーア王国での前世を終え、死に戻ってアイリーンの子としてトーマスと一緒に生まれたのだった。その秘密を、トーマスにはまだ話していなかった。
タリーサは慌てて笑って誤魔化そうとする。同時に胸の奥にどこか懐かしい思いが広がる。
アンナの驚いた顔と、トーマスの混乱した表情を見ながら、タリーサは微かに目を細めた。
「え?え?アンナも……前世があるの?」
トーマスが目を丸くして尋ね、タリーサが説明しようと口を開いたその瞬間――。
「あんたには、そのうち教えてあげるわっ!」
アンナが慌ててタリーサの口を塞ぎ、強引に話を切り上げる。
3人の笑い声が青空の下に響き、初夏の風が優しく吹き抜けていった。
それはまるで、ルーファスたちが3人のこれからも続いていく彼らの人生を祝福しているかのようだった。
柔らかな陽光が草木を揺らし、葉の影が地面に踊る。遠くでは、鳥たちのさえずりが優しく響き、空に広がる白い雲が、どこか遠くへと流れていった。
(完)
ここまで読んでいただきありがとうございました!!!
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★あとがき★
日本人的には自分たちの為に命を賭けてくれた人たちに感謝して次に進みたい。そうなるとお墓参りで終わるしかありませんでした。で、書いているうちに「そういえばアンナの秘密をトーマスは知らないままだ」と思い出し・・・笑。そんな完結でした。
ここからは、自分の振り返り用やいつか続編を書きたくなった時のためのメモとして、後書きをダラダラ残していきます。




