第10話「式典前日」 - 3
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
建国記念式典前日となった。
遠方の貴族や隣国の招待客は数日前から王都入りをし、挨拶回りと称して夜な夜な宴を繰り広げている。一年に一度の式典とあって、王都中が活気に満ち、まるで祭りのような賑わいを見せていた。
王宮内も例外ではない。普段見ない来客が廊下を行き交い、準備のために慌ただしく動き回る使用人たちでどこも混雑している。
そんな中、会議を終えた司祭たちがぞろぞろと廊下に現れた。高位聖職者たちの後ろには、秘書官たちが書類を抱えて付き従っている。
「あ……あれ?」
その中の一人、スカーレット枢機卿の秘書官アンナが、不意に立ち止まって周りを見回した。
(いない。スカーレット様がいない!)
ついさっきまで枢機卿のそばにぴったりついて歩いていたはずなのに、ふと気がつくと見失ってしまったのだ。
「スカーレット様と……はぐれた……」
焦るアンナは人混みの中で背伸びをして周囲を見渡す。柱の陰に駆け込もうとしたその瞬間、突然肩を掴まれた。
「わわわ!」
◇ ◇ ◇
その頃、枢機卿の三人――ウォルター、スカーレット、アビゲイルは並んで廊下を歩いていた。
「いよいよ明日は建国記念式典。それが終わったら新しい教皇の決定ですね」
スカーレットは自信満々に話す。既に自分が教皇になると決まっているかのような口ぶりだ。
「ところで、アビゲイル様は先日新型銃を持った暴漢に襲われたそうですね。ご無事で何よりです」
ウォルターがふいに話題を変えた。
「ええ、危なかったです。聖騎士タリーサに救われました」
アビゲイルはそっけなく答えながら、淡々と前を向いて歩いている。
「なんですか? そんなことがあったの?」
スカーレットが驚いて質問するが、ウォルターは取り合わない。
「どうもあの銃は危ないですね」
「な、なにを。そんな短絡的に決めて話してはいけませんよ!」
スカーレットが割って入るものの、状況が分かっていないため言葉に説得力がない。
「確かに強力な分、危険は付きまといますが、今やあの銃なしには国防は語れません」
意外にもアビゲイルは新型銃を支持する立場を取った。
「え……ですよね! アビゲイル!」
思わぬ賛同を得てスカーレットは驚きながらも嬉しそうだ。
「そ、そうですか……」
一番驚いたのはウォルターだった。
◇ ◇ ◇
アンナが驚いて声を上げた柱の陰。彼女の肩を掴んだのは、双子の兄、トーマスだった。
「びっっくりした! なんでアンタがここに居るの?」
目の前の兄に思わず声を荒げるアンナだが、トーマスは眉間にしわを寄せて口元に指を当てた。
「静かに。ボクたちが兄妹だと知られない方がいい。このまま聞いて」
トーマスはアンナに小声で切り出した。魔核銃の恐ろしさ、黒幕がアビゲイル枢機卿であろうこと――重要な話を立ち話のように淡々と語り始める。
「ちょ、ちょっと待ってよ。立ち話で聞くような話じゃないわよ、これ!」
アンナは思わず声を上げるが、トーマスはお構いなしに続ける。
「これを知ったってこと、絶対に悟られるな。枢機卿たちに気づかれたら何されるか分からないぞ」
「えー、、、この後、スカーレット様にどんな顔して会えばいいのか…」
「がんばれ」
トーマスは無責任に言い放つと、人混みの中にすっと姿を消してしまった。
「ひどい……」
柱の陰に取り残されたアンナは、ぐったりと肩を落とした。
(続く)
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★あとがき★
ここまでだいぶシリアスな展開が続いたのでアンナで少しコミカルに息抜きとしました。
これで情報共有は完了です笑
次回、式典前日。他にも色んな人たちが王都に集まってきます。




