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第10話「式典前日」 - 1

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

マクスウェルは気を失ったタリーサを担ぎ、聖騎士団本部へと戻ってきた。


夜の帳が街を覆い、街灯の頼りない光が石畳を揺らしている。本部に着くと、衛兵たちが驚きながら駆け寄った。


「何事ですか、マクスウェル卿!」


「団長に伝えてくれ。緊急だ!」


マクスウェルの声は焦りを帯びていた。衛兵が急ぎ本部内に駆け込む。


タリーサを抱えたまま立ち尽くすマクスウェルの脳裏には、枢機卿アビゲイルの不気味な微笑みと冷ややかな言葉がこびりついて離れなかった。「オリバーは旅に出た」――それが何を意味しているのか、嫌でもわかる。だがその真実を口にするには、あまりにも重すぎた。


◇ ◇ ◇


聖騎士団本部の執務室には、グレース団長とペネロペ副団長が揃っていた。マクスウェルは気を失ったタリーサを椅子に座らせた。


「何があったのか、詳しく話せ」


グレースの鋭い声が静かな室内に響く。


「それが、よく分からんのです…」


マクスウェルは困ったように頭を掻きながら続けた。


「突然、タリーサがアビゲイル枢機卿に罵声を浴びせました。それに枢機卿は全く動じず、逆に脅し返してきたんです。そして……その、ラルフ団長の事件まで引き合いに出してきまして…」


その言葉に、グレースの表情が凍りついた。


一瞬にして、17年前の記憶が押し寄せる。


その瞬間、自分は本能的に動いていた。剣を抜き、ラルフと枢機卿の間に飛び込む。火花を散らす剣撃、鳴り響く金属音。必死に斬り合い、気が付けば自分は頬から血を流し、ラルフは地面に倒れていた。彼の剣は床に転がり、血が静かに広がっていた。


グレースの握った拳が震えていた。


「本人に話を聞いた方が良さそうだな…」


挿絵(By みてみん)


ペネロペが短く言い放つと、無言で水桶を掴み、タリーサの顔にぶち撒けた。冷水が頬を叩き、タリーサは跳ね起きる。


「うっ…ここは!?」


「公の場でアビゲイル枢機卿に喧嘩をふっかけたそうじゃないか…タリーサお前、気が触れたのか?」


ペネロペはタリーサの顎を掴み、厳しい目で問い詰める。


「ペネロペ、やめろ」


グレースが低い声で制止する。


「タリーサ、アビゲイル様と何を話したのか全部教えろ」


タリーサは目をこすりながら、馬車の中で起きた出来事を語り始めた。


仮面の男の話、怪物化した兵士、そしてアビゲイルが放った言葉――「ラルフ団長の息子、オリバーは旅に出た」


「息子が生きていたのか!?」


グレースは驚愕の声を上げた。

ラルフが死した後、その家族は失踪し、生死もわからないままだった。


「オリバーはアビゲイルに命を狙われていると言っていました。その危険な状況を押して私に情報を託してくれたんです…でも、そのせいで居場所を知られてしまったんだ…ああ、私はなんてことを…」


顔を覆って震え出すタリーサ。それを見つめるグレースもまた、震えていた。


当時はアビゲイル枢機卿を守るのに必死で、ラルフが何を叫び怒っていたのかは分からなかった。

自分の行動は正当防衛で間違っていなかったと、信じてきた。


しかし、17年後のこの事態。

(全てアビゲイル様の術中にあったということなのか…?)


「姫」


悲痛な表情を浮かべるグレースに、ペネロペが低い声で語りかけた。


「今は式典の警護準備が先です。確たる証拠はないが、枢機卿がルーファス団長の事件に関わっていた可能性は高い」


ペネロペはタリーサに向き直る。


「しかしそれより今は、仮面の男の銃と怪物化した兵士について詳しく聞かせろ」


タリーサが重い口調で語り始めると、ペネロペは険しい表情を浮かべながら叫んだ。


「おい! 誰か警備計画を持って来い!」


部屋に緊張が走る中、ペネロペは冷静に続ける。


「団長、式典にタリーサを出すのは危険です。枢機卿と対立関係にある以上、神聖な式典で鉢合わせさせるわけにはいきません」


グレースは目を伏せたまま、ようやく頷いた。


「確かに……不安要素を増やすわけにはいかない」


「では、タリーサには裏に待機してもらいます」


ペネロペが即座に言う。


「壇上の警護は団長と一番隊のバーニー、それから二番隊のアイバンとドミニクが担当します。私は舞台下で全体指揮を執ります」


コンコン、とノック音が響く。


「お話し中、失礼いたします。枢機卿様がいらっしゃいました」


衛兵の声に、一同に緊張が走った。


「アビゲイル様か!?」


その返事はなく、ドアがゆっくりと開いた。


「失礼するよ」


入ってきたのはウォルター枢機卿だった。


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

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★あとがき★

10話のタイトルは「式典前日」ですが今回はまだ前日ではありません。

ラルフ団長の死は当時副団長だったグレースが正当防衛と判断してアビゲイル枢機卿を守ったことによります。この判断が間違っていたのかもしれない。彼女の心は激しく揺れています。


次回、現れたウォルター枢機卿が尋ねたのは・・・

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