表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
227/259

第9話「解放される呪詛」 - 1

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

トーマスたちが闇市場の探索をしている頃、双子の妹アンナは闇市場の別の場所を歩いていた。


熱気が淀む昼下がりの市場には、活気とともに怪しげな雰囲気が漂っている。アンナは眉間にしわを寄せ、革靴の音を乱雑な石畳に響かせながら歩いていた。


それは、スカーレット枢機卿の指示による任務だった。


「新型銃、特に大きいほう、ライフルって言ったかしら、あれが全然足りないのよ。アンナさん、あのドワーフ職人のところに行って製造を急がせてきてくださる?」


スカーレットの命令を思い出しながら、アンナは溜息をつく。彼女の透き通る金髪が、午後の陽光を浴びて淡く光っていた。


「え、でももう来るなと言われてますよ?」と彼女が渋ると、枢機卿は手を振り、「いいのよ、そんなの真面目に守らなくて。こっちは注文主なんだから言いたいことは言わないと。来るななんてドワーフの傲慢に付き合う必要ないない」と豪快に笑ったのだった。


以前は夜に人目を忍んで闇市場の工場に行ったが、今回は急ぐということで昼間に来ていた。


「まったく…護衛も付けてくれないし、スカーレット様の人使いは日に日に荒くなってる気がするわ」とつぶやく。


その後ろを歩く二人の男女が表情を変えずに応じた。


「我々がついていますのでご安心を」


忍者のアーノルドとエミリーだ。平民の服に身を包み、夫婦を装っている。周囲の人々が二人をただの仲の良いカップルだとみなしている間も、彼らは鋭い目で通行人一人一人を観察していた。


市場の喧騒の中、道端に座っていた露天商がアンナに声をかけた。


「よぉ、お姉ちゃん! 1人でこの市場に来るなんて度胸あるな! ご褒美にこれをやろう。怪しいもんじゃない。甘くて美味しいお菓子だ。食べな食べな」


挿絵(By みてみん)


差し出されたのは見た目も綺麗な砂糖菓子だった。

アンナが手を伸ばそうとした瞬間、エミリーが素早く前に出てその手を遮った。


「ダメです」


彼女は冷静な目で露天商を睨みつけると、菓子を奪い取り、足元にいた野良犬にそれを投げ与えた。


「あ!」


露天商が慌てて声を上げる。犬は尻尾を振りながら菓子をかじると、数秒もしないうちに地面に倒れ込み眠り込んでしまった。


「睡眠薬ね」とエミリーが淡々と言う。


アーノルドは無言で露天商を突き飛ばし、「アンナ様、ここはこういうところです。さっさと行きましょう」と促した。


◇ ◇ ◇


王宮では厳かな鐘の音が響き、会議を終えた枢機卿や大司祭たちが議場から出てきた。


広い回廊には重厚なカーペットが敷かれ、歴代の王と教皇の肖像画が並ぶ壁が彼らの疲れた表情を静かに見守っている。


この日の議論は革新派が中心となり進められていた。


信徒自衛団の活躍による支持拡大が議会の勢力図を塗り替えつつある中、最近保守派から転じたフランシス枢機卿が議場で熱弁を振るい、革新派の勢いを象徴していた。


「今日の提案が決まれば、商人たちの取引はより活発になり、王都の経済発展に拍車が掛かりますね!」


革新派代表のスカーレット枢機卿に得意げに話しかけるフランシス。


「…ええ、フランシス殿の指摘が議論を決定づけましたね」


スカーレットは流れるように返答しつつ、その熱っぽい態度を面倒に思い始めていた。


「商人の家に生まれたから商人、農民の家に生まれたから農民なんて制度はもう古い! 人は皆、努力で立場を変えられるのです」とフランシスが声を張ると、革新派の司祭たちが次々に賛同する。


彼らの熱狂的な様子に対し、保守派と中庸派の枢機卿たちは険しい表情を隠せなかった。彼らは廊下の隅に固まり、苦々しい沈黙の中でフランシスの発言を聞き流すしかなかった。


その時、フランシスが踏み込んだ発言をする。


「王家に生まれたから国王になるのか? 誰がそれを正しいと言えますか?」


その瞬間、場の空気が凍りついた。


「フランシス枢機卿」


中庸派のウォルター枢機卿が、静かながらも低く抑えた声で話しかけた。その声には怒りを含む緊張がこもっている。


「今の貴殿の発言は王政不要、王家の否定と受け取ったが相違ないか?」


ウォルターのこめかみがピクリと震え、その目は氷のように冷たかった。


「あ、いや・・・」


フランシスの顔が一瞬で青ざめた。彼の視線は落ち着きを失い、口元が震えている。

ウォルターはここぞとばかりに攻撃を強めた。


「スカーレット殿。王政不要論は革新派の皆様の考えということですかね?」


前を歩いていたスカーレットは苛ついた表情で振り返り、その燃えるような赤い瞳でウォルターを睨みつけた。


「ウォルター様、乱暴な決めつけはやめていただけますか。フランシス殿は自分の意見を言ったまでです。そうでしょう、フランシス?」


フランシスは縮こまり、うつむいたまま小さな声で答えた。


「いえ…いや…あの…」


フランシスが縮こまる中、スカーレットは誰にも聞こえない声で呟く。


「ふん、こんなことで私の勢いを削げるとでも思ったの? 浅はかね、ウォルター」


挿絵(By みてみん)


執務室に戻ったウォルター枢機卿はドアを乱暴に閉め、机に腰を下ろすと怒りを露わにした。


「革新派の思い上がりは見てられん! この国をなんだと思っているんだ!」


苛立ちを隠さず机を軽く叩きながら続ける。「建国式典の後に新教皇が決まる。このままではスカーレットで決まりだ…どうにかせねば」


秘書官が提案する。


「中庸派と保守派で連合を組んではいかがですか?」


「気に入らない案だが、それくらいしか方法が無さそうだ。まったく…あの銃だよ!」


ウォルターは眉間に深いしわを刻み、天井を睨みつける。


「あれが全てをおかしくした」


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

さあ終盤に入りました。アンナが向かっている区画はトーマスたちの場所よりも安全なようですね。1人で行かされてるし。そしていよいよ革新派が図に乗るレベルで勢いを増してきました。事件の予感です笑


次回、アンナはドワーフ職人の工場に辿り着き、恐ろしい話を知ってしまいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ