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第8話「風吟ふたたび」 - 8

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

ニコラスが廊下のすぐそこまで戻ってきたトーマスを見つけた。


「ヴェロニカ! ここは大丈夫だ、トーマス殿を援護しろ!!」


隊長の指示が出るや、ヴェロニカは廊下に飛び込み駆ける。


彼女は剣を振りながらトーマスの肩を掴み、無理やり後ろへ引き倒した。転がったトーマスの目の前で、ヴェロニカの剣が敵の腿を斬りつける。


「ぎゃあああ!」


男は脚を押さえて転がった。

後ろにいた次の男が倒れた男を乗り越えて、襲いかかる。


「遅い」


ヴェロニカの剣が閃き、敵の動きを封じた。剣の冷たい光が廊下を一瞬だけ照らし出す。しかし――。


ドゴォ!


轟音が廊下全体を揺るがした。


鉄と石のぶつかるような耳をつんざく音に、ヴェロニカと男の動きが止まる。


腕ごと吹き飛ばされた男が、血を噴き出しながら地面に崩れ落ちる。

同時に、右の肩を失ったヴェロニカの腕がボトリと床に落ち、彼女は白目を剥いて後ろに倒れた。


挿絵(By みてみん)


「ほっほー! この銃は最高ですねっ!」


仮面の男が廊下の奥からすうっと現れた。


その軽快な足取りとは裏腹に、彼が放つ威圧感は異様だった。銃口から立ち上る薄い煙が、廊下の暗闇を漂う。


「あの女はタリーサじゃなかったけど、こっちの坊やを殺しておけばいいのかな?」


仮面の男は楽しげに微笑みながら、ゆっくりと歩を進める。


「あああああ…」


恐怖に圧倒されたトーマスの口から無意識に漏れ出た声が廊下に響いた。


「トーマス! 立てっ!!」


そこに血まみれのニコラスが飛び込んできた。その顔には痛みと焦燥が浮かんでいる。彼はトーマスの腕を掴み、力任せに立たせると、廊下の外へと引き出した。


扉を閉め、壊れた錠前をかける。体を反転させると外には何人ものギャングが倒れていた。しかし、まだ周囲には動き回る敵の影が多数見えた。


「お前はなんとしても生きて帰れ! マリア様に伝えろ、こちらの動きは読まれている!」


ニコラスは吼えるように命じ、剣を一振りして敵を牽制する。剣圧に押されるように、ギャングたちは距離を取った。


「土の精霊ドウォンルよ、大地を揺らし、害なす者たちの行く手を阻みたまえ!!」


ニコラスの詠唱が響き渡ると、足元の石畳が激しく揺れた。敵は足をすくわれ、次々と地面に倒れ込む。


「今だ! 走れ!!」


トーマスがよろけながらも歩き出す。


ドゴォ!ドゴォ!


銃声が再び響いた。

扉を突き抜けた2つの弾丸がニコラスに命中し、彼は宙を舞うように倒れた。


「坊や、逃がしませんよ…」


扉を蹴破って現れた仮面の男が、冷酷に微笑みながら銃を構えた。その動作には、迷いの欠片もない。


「坊やの名前を聞いておきたいけど、早くこの銃をもっと撃ちたいんですよ。ごめんなさいね⋯」


銃口がトーマスに向けられ、ゆっくりと狙いが定められる。隣で倒れたニコラスは血を吐き、動けないでいる。


「ううう…」


トーマスも動けない。体は恐怖に凍りつき、足も手も硬直したままだ。


男が狙いを定めて握りを絞る。


その時だった。


ザンッ!


「あれ?」


仮面の男は両足を斬られて倒れた。


「逃げて…」


這いつくばりながら剣を振り抜いたのはヴェロニカだった。腕の無い右肩からは真っ赤な血が流れ続けている。


「逃げて!!!」


ヴェロニカの絶叫にトーマスは目を見開き、心の中の何かが弾けるような感覚を覚えた。それは恐怖ではなく、むしろ決意だった。彼はふらふらと立ち上がり、表通りへ向けて走り出した。


「おい、小僧を逃すな!」「た、立てねぇ」


倒れ込んだギャングたちが何とか体を起こそうとする。しかし足元の揺れが彼らを許さない。


ドゴォ!


また銃声が路地裏に響き渡った。

仮面の男が倒れたまま、腕だけで銃を撃ち放っていた。


「惜しい」


「ぐ…ううぅ…」


トーマスの脇腹を銃弾が掠め、血が勢いよく噴き出した。だが彼はその痛みを無視し、前に進むことだけを考えた。


ドゴォ!


また一発。だがそれは外れた。


トーマスは振り返らずに足を絡ませながら走り、曲がり角に飛び込む。呼吸が荒く、足がふらつく。だが、彼の目の奥には微かな光が差し込んでいた。


「お前たち! いつまでもグラグラしてないで坊やを追いかけなさい!!」


仮面の男が怒声を張り上げる。


その怒りは、倒れているギャングたちに向けられていた。だが、彼らは動けなかった。ニコラスの土魔法が執拗に足元を絡め取り、追撃を許さない。


「何をしているんですか! さっさと――」


仮面の男が体を起こしかけたその瞬間、上から影が覆いかぶさる。


「どこに…行くんだ? まだ俺もヴェロニカもピンピンしてるぞ…」


血まみれのニコラスが、仮面の男の上にのしかかった。彼の表情には痛みを越えた何かが宿っていた。


「この、死に損ないが…」


仮面の男は銃を持つ手を振り上げようとしたが、足元に冷たい感触が絡みつく。


「その銃…信徒自衛団のでしょ…どこで手に入れたのよ…」


ヴェロニカだった。

右肩を失いながらも残った腕で仮面の男の足を掴み、決して離さないという意志を瞳に燃やしている。


「は、離しなさいっ!」


仮面の男の声がわずかに震えた。


「文句言うんじゃないよ…こっちだって隊長と抱き合いたいのに…アンタで我慢してんだからさ…」


彼女の声は弱っていたが、決して折れることのない意志を滲ませていた。


ニコラスは仮面の男の腕を抑え込みながら笑みを浮かべた。


「ああ、俺たちの恋話に少し付き合ってくれよ・・・な?」


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

第1部の終盤に初登場したカルメサス伯爵家の近衛騎士ニコラスの壮絶な最期を描くことになってしまいました。仮面の男はタリーサの名前を知っていて信徒自衛団の銃を持って待ち構えていた。この後の展開に大きく影響する回です。


次回、傷を負ったトーマスは逃げ切れるのか・・・

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