第8話「風吟ふたたび」 - 7
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
その頃、外にいたニコラスとヴェロニカは、内部から響く激しい金属音と怒声を聞き取った。振動が地面に伝わり、周囲の空気が張り詰める。
「どうやら決裂したみたいですね・・・」
ヴェロニカが冷静を装いつつも声を震わせた。
「ヴェロニカ・・・さっき見つけた裏口の鍵を開けろ。2人を逃がすぞ」
ニコラスは一点をみつめたまま、剣を抜く。
剣を静かに抜き放つと、研ぎ澄まされた刃が僅かな光を反射する。彼の声がさらに低く響く。
「こちらにも敵が来たようだ」
次の瞬間、建物の陰から無言の男たちが姿を現した。ギャングの一団だ。
武器はバラバラだが、それぞれが無造作に剣やムチ、棍棒を手にしている。誰一人として口を開かないその様子が、かえって異様な威圧感を放っている。
「行け、急げ!」
隊長の叫びに応えるように、ヴェロニカは素早く動き出した。その瞬間、ギャングたちの視線が彼女に集中し、彼らも一斉に駆け出す。
「行かせん!」
ニコラスが地面を蹴り、一陣の風のように敵の中心に飛び込む。鋭い刃が空を裂き、一人目の男が叫び声を上げる間もなく崩れ落ちた。
ヴェロニカは裏口に辿り着くと錠前を一瞥した。戦場から響く剣戟と叫び声が背後を追い立てる。彼女は躊躇なく剣の柄を振り下ろした。
ガンッ! 一撃では壊れない。
ガンッ!ガンッ! さらに錠前を叩きつける。
背後から迫る足音が近づいてくる。ヴェロニカは振り返らない。額に汗が滲む中、錠前がようやく砕け散る音が響いた。
「隊長! 裏口を確保しました!」
彼女は扉を力いっぱい開け放ち、鋭い声を上げる。
同時に、敵の一人が飛びかかってきた。咄嗟に剣を構え、防御しながら反撃の一閃を放つ。だが数が多い。じりじりと押され、攻撃が次々と降り注ぐ。
「ヴェロニカ!」
ニコラスが怒声を上げ、目にも止まらぬ速さで駆けつける。剣が唸りを上げ、ヴェロニカを襲う男たちを弾き飛ばすと、彼は彼女の隣に並び立った。
「よくやった。2人が出てくるまでここを守るぞ!」
絶え間ない衝突音と息遣いで満たされ、時折飛び散る血が地面を濡らす。それでも2人は一歩も退かない。迫り来る敵を斬り伏せながら、彼らは出口を守り続けた。
◇ ◇ ◇
トーマスは廊下を走っていた。
ジーナの怒声と剣の音がまだ耳に残っている。逃げなければならない、それはわかっている。
その時、後ろで鋭い銃声が聞こえた。思わず立ち止まる。
「ジーナさん……?」
振り返りたくないという本能に抗いながら、彼はゆっくりと背後に意識を向けた。
広間の方から聞こえる物音が一切消えていた。
廊下に立ち尽くすトーマスの耳には、自分の心臓の鼓動だけが響いていた。追っ手の足音も止まり、空間全体が不気味な静寂に包まれる。
ジーナは自分の腹に空いた大きな穴を凝視していた。
銃弾が貫いたその傷口からは血が溢れ、彼女の革鎧を赤黒く染めている。剣を支えに膝をつきながら、視線を周囲に巡らせた。
床には倒れた仮面の男たちが転がっている。どちらも鋭い斬撃を受け、再び立ち上がることはない。
正面の仮面の男はいつの間にか銃を構え、ジーナを見下ろしていた。
「これはすごい。人間にも効果抜群ですね」
仮面の男の声は無機質で、勝利の余韻すら含まれていない。
ジーナは歯を食いしばり、最後の力で立ち上がろうとした。腹部の痛みが激しく、視界がぼやける。だが、彼女の剣にはまだ炎が宿っている。手が震えながらも、それを振り上げた。
「…おのれぇぇぇ!!!」
ジーナの叫びが広間全体に響き渡る。だがその刹那――。
「はい、さようなら」
男は冷静に銃口を向け、引き金を引いた。
炸裂音が轟き、ジーナの頭部が粉々に吹き飛んだ。燃え盛る剣は制御を失い、広間の天井を焼きつけるように炎を放つ。
首を失った彼女の体はゆっくりと崩れ落ち、完全に動かなくなった。
再び響き渡る銃声。
トーマスは静寂に耐えきれず、再び走り出そうとした。その時、背後から追っ手の足音が近づいてきた。
「もう逃さんぞ」
声と共に剣が振り下ろされ、トーマスは咄嗟に身をひねって回避する。狭い廊下が幸いし、一度に襲いかかってくるのは1人だけだ。
振り返ると、外でニコラスとヴェロニカが奮戦している音が聞こえる。その中、廊下の横の扉が急に開き、外の光が差し込んだ。トーマスの一瞬の気の緩みを狙って、追っ手が再び襲いかかる。
(続く)
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★あとがき★
ジーナの壮絶な最期を描くことになりました。そのまま描くと100%ポリシー違反なので画像生成にコツが必要でしたね。
次回、ニコラスとヴェロニカはトーマスを救おうと奮闘します。次回も壮絶回。




