第7話
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「ジルベルト! 一体何を考えているんだ! 一歩間違っていれば、キミの頭と胴体が分かれていたかもしれないんだぞ!」
「うお!?」
王女様の姿が見えなくなると、今度はアルトレーザ様に詰め寄られた。
「で、ですが、とりあえずは切り抜け「切り抜けられなかったらどうするんだ!」」
うん……俺はあの選択肢が正解だって知ってるけど、傍から見てるアルトレーザ様からしたら無謀以外の何者でもないからなあ……。
「も、もし、もしキミに何かあったら……!」
俺の胸倉をつかみながら、アルトレーザ様が涙を溜めた瞳で俺を睨む。
「も、申し訳ありません……」
「フ、フン! キミも貴族なら、自分の命を粗末にするような真似は止めるのだな!」
そう言うと、アルトレーザ様はプイ、と踵を返して背中を向ける。
だけど、その肩は震えていた。
……アルトレーザ様。
「はい、アルトレーザ様に誓います。二度とこの命を差し出すような真似はしないと」
俺は跪き、その背中に誓いを立てた。
俺のためにそこまで心配してくれた、心優しいアルトレーザ様に。
「り、理解したならいい……さあ! もう寮に帰るぞ!」
「はい!」
俺は、少し俯きながら大股で歩くアルトレーザ様の後をついて行った。
◇
「だけど……どうすんだよこれえええええ!」
寮の自室で、俺は頭を抱えながら思わず叫ぶ。
や、だって、まさかここが“束縛のアゼリア”の世界で、俺が主人公だったんだぞ!?
しかも、どうやらキャラクターの性別が男女入れ替わってるし!?
コ、コレ、どうすりゃいいんだ!?
このまま行ったら、俺が王女様達と一緒に“深淵の魔女王”と戦うってことだよな!?
や、その前に。
「“深淵の魔女王”は“聖女”でないと倒せないんだぞ! 俺は男だっつーの!」
どうすんだよ!? 俺に女装しろってのか!? それとも男の娘か? 男の娘になるのが正解なのか!?
そして。
「……そうすると、俺は闇落ちしたアルトレーザ様と戦う、ってことだよな……」
メルザたんと同じ顔をした、あのアルトレーザ様と。
俺はまだ一週間そこそこの付き合いでしかないけど、アルトレーザ様には良い印象しかない上に、メルザたんと同じ顔だ。
これでもしアルトレーザ様が女の子だったら、俺は有無を言わさず戦いを放棄するところだ。
……いや、性別なんて関係ない。
俺は……あのアルトレーザ様を不幸になんてしたくない。
本当に、どうしたら……。
——コンコン。
ん? 部屋をノック?
「どうぞ」
すると、ドアを開けて入ってきたのは、心配するような表情を浮かべたアルトレーザ様だった。
「アルトレーザ様……ノックなんかしてどうしたんですか?」
「あ、い、いや……その……さ、さっきのことは気にするな! あんなこと、誰にでもある! そ、それに……」
「それに?」
「ボクも、その……言い過ぎた……」
アルトレーザ様の言葉に、俺の胸がかあ、と熱くなる。
ああ……アルトレーザ様は俺なんかのことを心配して、それで……。
「ハハ……大丈夫ですよ! あんなこと、田舎の男爵家なら日常茶飯事ですよ!」
「だ、だが……」
俺は努めて明るく振舞うけど、それでもなおアルトレーザ様は心配そうに俺を見つめる。
「むしろお気遣いありがとうございます! アルトレーザ様のおかげで、私も元気がでました!」
「っ! そ、そうか!」
俺の言葉に、今度こそアルトレーザ様はぱパア、と表情を明るくした。
うん……メルザたんの顔には、明るい表情が一番よく似合う。
「いやあ、元気になったらお腹が空いてしまいました」
「あはは! もう……仕方ないなあ、キミは。よし! イザベルに言って、早めの夕食にするようにしよう!」
そう言うと、アルトレーザ様は部屋を出ようとして……クルリ、とこちらへと向き直った。
「“ジル”! これからはボクのことは“アルザ”と呼ぶように!」
「へ?」
アルトレーザ様の言葉に、俺は思わず呆けた声を出してしまった。
「おいおい、明日から一緒に学園に通う“友達”なんだ。だったら、その……そうやって呼ばないと、お、おかしいだろ?」
顔を真っ赤にしながら、視線を逸らしてそんなことを言うアルトレーザ様。
ナニコレ、アルトレーザ様が女の子だったら間違いなく惚れてるだろ。
「で、ですが、よろしいのですか?」
「いいんだ! キミは特別に許す! だから“アルザ”と呼ばないと、承知しないからな!」
お、おおう、ここにきて強権発動。
なら、俺はそれに従うしかないよな。
「はは、承知しました。“アルザ”様」
「うん!」
そして、俺の答えに満足してはにかむアルトレーザ様……アルザ様は、今度こそ部屋を出て行った。
「ふう……」
俺はベッドに顔をうずめると。
「あああああ! もおおおお! 何だよアレ! あんなの絶対間違い犯すだろ!」
俺、間違えない自身はないぞ!?
同じ部屋に住んでるんだもん、絶対に手を出しちゃうぞ!?
だけど……一つだけ腹が決まった、な。
「絶対に、アルザ様を闇落ちになんてさせねえ!」
俺は自分の胸倉をギュ、と握りしめ、そう心に誓った。
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次話は今日の夜投稿予定です!
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