第6話
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「誰にぶつかったと思って!? 不敬な!」
ぶつかった女子生徒を慌てて助けようとするが、その女子生徒の表情などからは明確に憤怒と拒絶の色が見えた。
つか……何この女の子!?
や、確かにその容姿は輝くような金髪に、アクアマリンの瞳、小さいながらも色気のある唇、その透き通った白い肌……うん、いわゆる絶世の美女ってヤツだ。
だが、俺はそんなことよりも、ある一点について一瞬で目を奪われてしまった。
それは……小さな顔の両サイドに目一杯主張する、見事な縦ロール!
本当にこんな髪型をする女の子がいるとは……貴族社会、恐るべし……!
「……あなた、何ですのその目は!」
ヤ、ヤバイ! くだらないこと考えてる場合じゃなかった!?
「も、申し訳ございません! どうぞお手を……!」
「フン!」
鼻を鳴らしながら俺の手を取った縦ロールの女の子を、俺は引き上げた。
だけど。
「キャッ!?」
「おああ!?」
勢いが強すぎて、今度は女の子を胸で抱くような恰好になってしまった!?
イヤ、女の子が軽すぎるから! 不可抗力だ!
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ……い、一度ならず二度までも……!」
女の子は一瞬、ほう、と息を漏らした後、顔を真っ赤にしながら身体を震わせる。
マ、マズイ!
俺は急いで女の子から離れ、すぐに頭を下げた。
「も、申し訳ございませんでした!」
「……あなた、謝って済む問題だと思っていますの?」
ど、どうしよう……! 着ている制服の質とかその縦ロールから考えて、相当やんごとない身分の女の子と思われ!?
「お、お待ちください!」
ここで、アルトレーザ様が女の子と俺の間に割って入った。
ひょ、ひょっとして助けてくれるの!?
「アラ……“アル”」
「この者の致したこと、確かに打ち首に等しい所業……ですが! この者はボクの……そう! この者の家は、我がバルセロス公爵家の“子”めにございまして……!」
アルトレーザ様が跪き、頭を下げながら弁明? をしてくれた。
だけど、うちの家はいつからアルトレーザ様の子に……って、国一番の公爵家の子なら、むしろ出世かも。
「あら、そう……でしたら、キッチリ躾けておくことですわね」
縦ロールの女の子が居丈高にアルトレーザ様をねめつけるけど……ん? 今の台詞、どこかで……。
「ハハッ! 申し訳ありません、“エリザベッタ”殿下!」
“エリザベッタ”殿下だってえええええ!?
つ、つまりそれって……この国の、第一王女おおおおお!?
「ま、誠に申し訳ございませんでしたああああ!」
俺はその事実に驚愕し、思わず五体投地をする勢いで跪いた。
い、いやいや、そら“不敬”って言われるわ!
「フン……どうやらこの者も、ようやくこの余が何者なのか、理解したようですわね」
うわあ……声色はさっきよりは幾分柔らかくなったものの、今度は俺をバカにしてる感がありありなんだけど。
うん、この王女、絶対性格悪い……って、まるで、“束縛のアゼリア”に出てくる第一王子と同じ性格かも……。
「フフ……いいことを思いついたわ? あなた、名前は?」
「ハ、ハッ! フレイレ男爵家が長男、ジルベルトと申します!」
つい条件反射で名乗ったけど、絶対ろくなことにならない予感がする……。
だって、『いいことを思いついた』とか言ってるし!?
「ねえアル……この男、余に頂戴な?」
「「…………………………ハ?」」
え? 何言ってるの、この王女様?
「で、殿下、それは……」
「アラ、できないの? だったらこの男は、実家もろとも消えてもらうけど?」
「「っ!?」」
オイオイ!? ホント何言い出すんだこの王女様は!?
平民ならいざしらず、なんで軽くぶつかった程度でそんな目に遭わなきゃいけねえんだ!?
「お、お待ちください殿下! さ、さすがにそれは横暴では!」
「あら? アル、あなたは“婚約者”である余の頼みを聞けないっていうのかしら? 果たしてそれが、あなたのご実家に影響がでないとよろしいのだけど?」
「っ!?」
そう言われ、アルトレーザ様が悔しそうに歯噛みする。
なんで……なんでアルトレーザ様までそんなこと言われなきゃいけないんだ!
頭に血が上ってブチギレそうになった、その時。
〇『うるせえぞこのクソアマ! 王女だからって偉そうにとまってんじゃねえ!』
〇『非があるのはこの私めにございます……ですが殿下、ここは“学園”、であるならば、偉大なる王国が定めし“校則第一条”をお忘れでしょうか?』
〇『滅相もございません! 私めの人生は、殿下とともに……』
……突然、俺の頭の中に選択肢が三つ出てきたんだけど。
そして、俺はこの選択肢の意味を知っている。
これ……完全に“束縛のアゼリア”の、第一王子ルートの選択肢だ。
つ、つーことは、やっぱりここはゲームの世界で間違いないのか!?
だ、だけど、そうすると俺が主人公で、目の前の王女様が攻略対象おおおお!?
マ、マテマテマテマテ!? そもそも俺は“男”で、攻略対象は“女の子”なんだぞ!?
「……何か言いなさいな、アル、下賤な男、ジルベルト」
あああああ! と、とにかく今は考え込んでる場合じゃねえ!
よ、よし! 本当にここがゲームと同じだってんなら、これで間違いないはず!
「非があるのはこの私めにございます……ですが殿下、ここは“学園”。であるならば、偉大なる王国が定めし“校則第一条”をお忘れでしょうか?」
恭しく跪きながら、俺は第一王子ルートへと至る選択肢をチョイスした。
すると。
「男爵家風情がこの余に物申すというのかしら! 余程この国から消えたいようですわね!」
俺の言葉に激高する王女様。
だが、ここもゲーム通り。
「……分かりました。であれば、この学園に……いえ、この王国に問いましょう。どちらが“正しい”のかを」
「っ! き、貴様あ!」
ますます怒る王女様。その顔は青筋を立てて真っ赤になっている。
だけど、俺は知っている。
実は、これが王女様のブラフだということを。
「……フン、興がさめました。まあいいわ、これから同じ学び舎で共にするのですから、今回に限り不問にしてあげますわ?」
「殿下の寛大なお心に感謝申し上げます」
俺はわざとらしく、さらに頭を下げる。
な? 結局この王女様は第一王子と同じで、性格悪いんだよ。
こうやって相手の反応を見て、からかってるんだからな。
まあ、生き馬の目を抜く王宮で生きていくために身に着けた処世術、ってヤツであって、そのせいで寂しい思いをしているんだけれど。(設定資料にそう書いてた)
「フフフ……面白い男ね。また逢いましょう? “ジル”」
そう言って、王女様は微笑みながらこの場を去って行った。
ふう……とりあえず、ピンチは切り抜けたな。
「ジルベルト! 一体何を考えているんだ! 一歩間違っていれば、キミの頭と胴体が分かれていたかもしれないんだぞ!」
「うお!?」
一難去ってまた一難。
今度はアルトレーザ様に詰め寄られる俺だった。
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次話は明日の朝投稿予定です!
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