第41話
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「全く! キミはどうしてそうグズなんだ!」
「も、申し訳ありません……」
“魔力供給”について知ったあの日から二週間後、俺は意気揚々と歩くアルザ様に面罵され、ただただ頭を下げていた。
というか、あれから人が変わったようにアルザ様は悪役令嬢……いや、悪役令息全開なわけで……。
「フン! いつまで頭を下げている! もう置いて行くぞ!」
アルザ様はそう言って鼻を鳴らすと、そのままサッサと行ってしまわれた。
「ふう……」
溜息を吐きながら、そんなアルザ様の背中を眺めていると。
「ジル!」
お、ベルが殿下を放ったらかしで手をブンブン振りながらこちらへやってきた。
「おはよう、ベル」
「うん、おはよう!」
いつものように挨拶を交わすと、ベルは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
実は、アルザ様を救うと誓ったあの日、ベルに頼まれてしまった。
曰く、同じ学園の友人で、しかも秘密を共有する仲なんだから、様づけもへりくだった話し方も止めてくれって。
まあ、俺も心の中では普通にタメ口だったから、全然違和感はないし、それに……何気にベルがそんな風に言ってくれたことが嬉しかったってのも否定はしない、うん。
「それで……今日もアルトレーザ殿は相変わらずなのか?」
「ああ……」
俺はアルザ様の豹変について、あらかじめベルには全て話している。
もちろん、俺の推理も含めて。
だから、ベルはアルザ様について悪感情を持ってはいないが、他の連中は全員アルザ様を快く思っていない。
その中でも特に顕著なのが、ミラ公だ。
アルザ様が教室に入った瞬間、いつもあからさまに顔をしかめやがる。
で、親友のベルや殿下がそれを窘めても、ミラ公は一向に改める気はないらしい。
本当に困った奴だ。
「まあ……ベルももう少しだけ待ってくれないか?」
「ああ、それは構わないが……ジル、頼むから無理だけはするなよ? それと……」
「それと?」
「……いつでも、私を頼ってくれ」
全く……このベル公は……。
「ああ、もちろん頼りにしてるさ」
「へえ、何を頼りにしているのかしら?」
「「うわ!?」」
突然殿下に後ろから声を掛けられ、俺とベルは思わず驚いてしまった。
「ふふ、最近二人が仲良し過ぎて、余としては少し嫉妬を覚えるのだけれど?」
「あ、ああああ! いいいえ! これはその、つまりその!」
「お、落ち着けベル!」
ニヨニヨした殿下に突っ込まれてしどろもどろになるベルの肩をつかみ、とりあえず落ち着かせようとしていると。
「……ジルベルトくん、ベルにもし何かしたら、分かっていますね?」
今度はミラ公が眼鏡をくい、と持ち上げながら睨みつけてきやがった……。
「も、もちろんですとも! そ、そのようなことはございませんので!」
すると、今度はベルが少しだけシュン、としてしまった。
ああもう、俺にどうしろと……。
「まあいいわ。それより、早く行かないと遅れてしまうわよ?」
そう言って、殿下がシレッと教室へと向かって行った。
「はあ……ベル、行こうか」
「あ、ああ……」
俺とベルはお互い顔を見合わせた後、殿下の後を追った。
ミラ公? 知らん。
◇
「うう……今日はいつにも増して酷かったなあ……」
今日の授業が終あり、俺はビショビショになった制服のまま学園の事務室へと向かっている。
や、早く帰って着替えたいのはやまやまだけど、ここ最近の日課である確認だけはしっかりしておかないと。
「失礼しまーす……」
事務室の扉を開け、俺は気の抜けた挨拶をする。
「あらあら、いらっしゃい……って、何でそんなずぶ濡れなの?」
「あ、あははー……」
事務員のおばさんにまじまじと見られ、俺は頭を掻きながら苦笑するしかない。
「ま、まあいいけど……それより、ジルベルトさん宛てに手紙が届いているわよ」
「ほ、本当ですか!」
俺は待ち焦がれていたものがやっと来たことで、思わず事務員さんに詰め寄ってしまった。
だけど……とうとう来たか!
「え、ええ……これがそうだけど」
そう言って、少し驚いた事務員さんがおずおずと手紙を取り出した。
「あ、ありがとうございます! それでは失礼します!」
俺は事務員さんからひったくるように手紙を受け取ると、事務室を出て一目散に寮へと帰った。
「あ、ジルベルト様。お帰りなさいませ……って、ど、どうしたんですか!?」
帰るなり、イザベルさんが俺の姿を見て驚きの表情を見せた。
「あ、ああこれですか……ま、まあその……」
「……アルトレーザ様が申し訳ございません」
事情を察したイザベルさんが、申し訳なさそうに深々と頭を下げた。
「い、いえ! 私は大丈夫ですので!」
「あ……」
俺はわたわたと手を振りながら、イザベルさんから逃げるように自分の部屋に駆け込んだ。
「ふう……毎回このやり取りもメンドクサイ」
大体、イザベルさんも謝るくらいなら、最初からアルザ様に物申せばいいのに、そんな素振りは全くない。
……まあ、イザベルさんにも何かしらの思惑ってものがあるんだろうけど。
それよりも。
「サッサと着替えて手紙を読むか……」
俺はいつもの私服に着替えて椅子に座り、ペーパーナイフで丁寧に封を開けると、中には二通の手紙が入っていた。
「んじゃ、まずは一通目、と……」
俺は手紙を開き、隅々まで目を通すと……うん、何とか父上からお墨付きはいただけたようだ。
これなら……。
「さてさて、これで準備は整ったけど……もう一通のほうは何が書いてあるんだろ?」
俺は不思議に思いながら、二通目を開くと。
『やっちゃえ! ジル!』
俺はそのたった一行に思わず目を見開く。
そして。
「プ……クク、あははははは!」
俺は大声で笑ってしまった。
本当に、母上は……。
「ようし! これで準備は整った! 後は……やってやるさ!」
俺は拳を突き上げ、宣言した。
アルザ様……俺が必ず、あなたをお救いしますから……!
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は明日の夜投稿予定です!
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