第40話 アルトレーザ?
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■アルトレーザ?視点
「はあ……」
ボクはいつもとは違うベッドで寝転がりながら、深く溜息を吐いた。
「ジル……心配してるだろうなあ……」
さっきもジルが部屋に来て心配そうにボクの様子を見に来てくれたけど……うう、まさか月のものだなんて言えないよお……。
ま、まあ、大分体調も良くなったし、明日からは一緒に学園に行けるとは思う……とはいえ、あと二、三日はいつもの部屋には戻れないかなあ。
だって……ねえ。
「それより、今日学園であった出来事……気になる」
だって、今日どんなことがあったか聞いたら、ジルの口からはやたらとベルとのことが出てくるんだもん!
しかも、所々言いづらそうにしてるし!
絶対にベルと何かあったんだよ!
「むうう! 明日、絶対ジルに問い詰めてしてやるんだから!」
そうだよ! ジルの主君はボクなんだよ!
だ、だから、ジルはボク以外の人を見たりしちゃダメなん……だけど……。
「……でも、ボクがいなくなったら、ジルは……」
そう考えると、ボクは胸が苦しくなる。
もちろん、ボクは大好きなジルにずっとボクだけを見ていて欲しい。ボクの傍にだけいて欲しい。
だけど……ボクがいなくなっても、ジルの人生はこれからも続いて行くわけで……。
……ボクが、ジルの人生の邪魔をするわけにはいかない、よね。
――コンコン。
「“お嬢様”、具合はいかがですか?」
「う、うん……大丈夫だよ」
「そうですか。でしたら、お食事をお持ちしましたので、お召し上がりください」
そう言うと、イザベルはドアを開けて中に入り、テキパキと机にテーブルクロスを敷いて食事を並べていく。
さすがに勝手知ったるイザベルで、具合が悪くならないようにと、リゾットやスープといった身体に良い、優しいものばかりだ。
「では、お食事がお済みになる頃に、また片づけに参ります」
イザベルは恭しく一礼すると、部屋を出て行こうと踵を返した。
「……ねえ、イザベル」
僕が声を掛けると、イザベルはピタリ、と足を止める。
「“お嬢様”、何でしょう?」
「……ボクはこれ以上、ジルの傍にいないほうがいい……のか、な……」
そう尋ねた後、ボクの瞳から涙が溢れてくる。
だって、ボクはジルと離れたくないから。
このボクの心を救ってくれた……世界で一番大好きなジルから、離れたくないから。
「“お嬢様”……」
するとボクの手に、イザベルの手が優しく添えられた。
「“お嬢様”……選ぶのは“お嬢様”ですが、ただ、ジルベルト様からお離れになることは簡単です」
「……それは?」
本当はジルから離れたくないボクだけど、それでも、自分の心に蓋をしてイザベルに尋ねる。
「“お嬢様”がジルベルト様に嫌われること……そして、殿下やベルナデット様をはじめ、ジル様の周りにいらっしゃる方々から嫌われること」
「っ!?」
ボクはイザベルから放たれた言葉に思わず息を飲む。
だって……だって、ジルから離れるために、ジルに嫌われなきゃいけないだなんて!
「イ、イザベル……それは……!」
「ですが“お嬢様”、そうしないとジルベルト様のことですから、どこまでも“お嬢様”を追い続けるでしょう。たとえ、永遠に“お嬢様”をつかまえることができないとしても」
「…………………………」
イザベルの説明を受け、ボクはただ押し黙るしかできない。
もちろん、たとえ主従の関係だからとはいえ、ジルがボクをそこまで慕ってくれることが、嬉しくないはずがない。
だけど、それはジルを……ジルの人生を、永遠に縛り続けることになるわけで……。
「……それで、どうすればボクはジルに嫌われることができるんだい……?」
気がつけば、ボクはそんな言葉を口にしていた。
ジルが大好きだから……ジルが誰よりも大切だから……。
「……“お嬢様”、本当によろしいのですか?」
イザベルが表情を崩さないまま、念を押すように尋ねる。
だから。
「…………………………(コクリ)」
ボクは、ただ小さく頷いた。
「……分かりました。では……」
それから、イザベルはジルに……そして、殿下達に嫌われる方法を教えてくれた。
ただ、その方法というのは聞いてみたら大したことじゃなくて、この前のパーティーの時のように、ジルに恥をかかせたり、ジルの想いを踏みにじったり……。
……ダメだ。あの時のことを思い出すと、ボクの胸がこれでもかというほど締めつけられる。
でも……それでも……!
「……分かった。早速明日からでもやってみるよ」
「“お嬢様”……分かりました」
そう告げると、イザベルは今度こそ部屋を出て行った。
ジル……大好きなジル……。
……ごめん、ね。
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次回は明日の夜投稿予定です!
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