第38話
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バルセロス公爵様がお父様を尋ねてきたのは三年前。
これまでほとんど交流のなかった公爵様が尋ねて来たので、お父様も私も不思議に思っていたんだけど、公爵様なので失礼があってはいけない。
お父様は公爵様を応接室へとお通しすると、公爵様から真っ先に話を切り出されたんです。
『特定の者に、別の者の魔力を分け与えたりすることはできないのか?』
もちろん、お父様はその話を聞いてすぐに否定したんです。
だって、そんなことはあってはならないことだから。
だけど。
『アルバ公は、過去に誰も到達したことがない魔法の頂に立ちたくはないのか?』
そう告げられ、お父様の宮廷魔術師として……いえ、王国における魔法の第一人者としての魂に火がついたっていうんですかね……。
結局、お父様は公爵様の依頼を引き受けてしまったんです。
それから、お父様は様々な魔法実験などを繰り返してきました。
それこそ、王国の法に触れるものを含めて。
そして、半年前。
「やった! やったぞトニア! 私は“魔力供給”に向けた第一歩を踏んだのだ!」
興奮しながら、嬉々とした表情で私にそう語るお父様。
そんなお父様に私は……。
「あ、あの、お父様……それで、実験に協力いただいた人達は……」
「……彼等は私の偉大なる研究の礎となったよ……だが! 彼等によって、私は魔法の真理に気づいたのだ! あとは、その裏付けのための実績を積み重ねるだけだ!」
「っ!? 積み重ねって……また同じように関係ない人達の“犠牲”を重ねるんですか!?」
「“犠牲”ではない! 彼等は私の名前として、この王国の歴史に永遠に刻まれるのだぞ!」
……それ以上、私はお父様に何も言えなくなってしまったんです。
◇
「……それからも、お父様は実験を繰り返し……ううん、今も王都の屋敷では実験をしているはずです」
そう言うと、トニアは瞳に涙を浮かべながらかぶりを振った。
「……そうですか」
俺は静かにそう呟き、顎に手を当てた。
……つか、呪術魔法とか俺の中から完全にどっか行っちまったんだけど。
いや、だってこれヤバくない!?
結構な犠牲者出てるんじゃねーのコレ!?
すると。
——ダンッ!
「ふざけるな! そんな人の道に外れるような所業、お前はなぜ見過ごしているんだ!」
「お、落ち着いてください!?」
テーブルを叩き、グイ、とトニアの胸倉をつかんだベルを、俺は慌てて止める。
頼むから目立つようなことするなよ……気持ちは分かるけど。
「……私だって(ポツリ)」
「何?」
「私だって! 止められるなら止めてたよ! だけど……だけど、もうお父様には私の声が届かないの! お父様の目には私が映ってないの! もう……どうしようもできないんだよお……!」
そう叫ぶと、トニアはその場に崩れ落ち、とうとう泣き出してしまった。
その時。
〇『……お父様を止める方法なら、ありますよ』
〇『何か方法はないんですか!?』
〇『それで……その研究は今、どの段階なんですか?』
ここで選択肢かよ!?
つーか、既にゲームと違う展開になってるのに、どれが正解かなんざ分かんねーよ!
特に一つ目のヤツ! 止める方法があるなら教えろよ! むしろ俺が知りてーよ!
と、とにかく……どれを選んでも地雷臭しかしねーんだけど……。
し、仕方ない……。
「それで……その研究は今、どの段階なんですか?」
俺は選択肢の中で、俺が思う限り最もましなものを選んだ。
つか、取り方によっちゃ、俺がとんでもなく冷たい奴に思われそうだけど。
「ジ、ジル……さすがにその質問は……」
困惑した表情で俺を見つめるベル。
だよなあ、俺もそう思う。
だけど。
「グス……い、今は実験の数を重ねてデータを集めている最中……」
手で顔を覆って泣きながらもトニアが答えてくれた。
まあ……手の隙間から思いっ切り睨まれたけど。
「そうですか……で、“魔力供給”には何か穴、みたいなものはないんですか? 例えば、“魔力供給”を行う場合には特殊な条件が必要だったりとか?」
もう開き直った俺は、この際なので根掘り葉掘り聞いてやることにした。
どうせ嫌われるなら一緒だし。
「ヒック……“魔力供給”には、魔力を送る側と受け取る側、双方が親や兄弟といった近しい肉親でないといけない……」
「ふむ……」
俺はトニアから聞いた情報を基に思考するが……うん、さっぱり分からん。
「それで、その条件についてアルバ伯爵様……いえ、依頼主のバルセロス公爵様はどうお考えなのですか? 普通に肉親同士でないと“魔力供給”が成立しないのならば、重大な欠陥があると言わざるを得ないのですが……」
「うう……お父様が言うには、公爵様は大層お喜びと……」
「へえ……」
バルセロス公爵の考えとしては肉親でも構わない……つまり、家族の誰かを犠牲にするつもりか。
「お話は分かりました。ありがとうございます」
そう言うと、俺は静かに頭を下げた。
すると。
「ジ、ジル!」
突然、ベルに頭を抱き締められた。
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次回は明日の夜投稿予定です!
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