第37話
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「それでは、今日の授業を終了する」
本日最後の授業が終わって先生が教室を出て行くと、生徒達が帰り支度を始める。
そんな中。
「トニア様、少々よろしいでしょうか?」
俺は後ろの席に座るトニアに声を掛けた。
「? どうしたの、ジルくん?」
カバンに教科書等としまっていたトニアは、キョトンとする。
「いえ、実は魔法のことでトニア様に教えていただきたいことがありまして……ホラ、どうにも私は魔法に疎くて……」
そう言って俺はポリポリと頭を掻くが……当然、トニアを誘い出すための方便だ。
「確かにジル君は、せっかく聖属性魔法が使えるのに魔法の知識に関しては壊滅的だもんねー……よし! この魔法の天才である私が協力してあげますよ!」
そう言うと、トニアが胸をドン、と叩いた。
ベルと違って大きいわけではないが、それでも人並みにはふくらみはあるのだ。
「……ジル君?」
おっと、トニアが俺の視線に気づいたようだ。
これ以上見るのは止めよう。
「それじゃ、場所を移しますか」
「へ? 教室じゃないの?」
どうやらトニアは教室でレクチャーするつもりだったようだ。
だけど、あんな話を教室でするわけにもいくまい。
「いえ、せっかくトニア様に教わるわけですから、お飲み物の一つもお出ししないのでは、さすがに申し訳ありませんので」
と、もっともらしい理由をつけてみる。
「……ジルくん、そんなことしても、私は君に絆されたりしませんからね?」
……トニアの奴、まだ俺を女たらしだと思ってるのか。
「大丈夫ですよ、そんなつもりはありませんから」
「それはそれでひどくない!?」
安心させるためにそう告げると、今度はトニアから抗議の声が上がる。一体どうしろと……。
「まあまあ……それに、私だけではなくてベル様にもご同席いただきますので」
「え? ベルちゃんが?」
そう言って、トニアがチラリ、とベルを見た。
「ああ、私も魔法は使えないが、敵の魔法に対処するためにも学んでおく必要があるからな」
「へえー……あのベルちゃんが、ねえ……」
そう言って、トニアはベルの顔をしげしげと眺める。
「え、ええと、何やらお二人はかなり仲が良さそうですが……?」
「ん? ああ、騎士団長のお父様と宮廷魔術師であらせられるトニアの父君とは、お互い王宮勤めということもあり家同士で親交があってな。早い話が幼馴染だ」
「なるほど……」
だから、お互いこんなに気安いんだな。
「まあ、時間ももったいないですので、早速テラスに移動しましょうか」
「はい!」
「うむ」
◇
「さあて! それじゃ、何から教えましょうかねー!」
俺達三人は食堂に併設されているテラス席に座り、紅茶を口に含みながらトニアが嬉しそうにそう話すが……俺が聞きたいことは一つだ。
「そうですね……“魔力供給”について」
「っ!?」
俺がそう告げると、トニアはガタッ! と勢いよく席を立った。
「それは不可能だと何度も言ってるじゃないですか!」
「……本当ですか?」
すごい剣幕で睨みつけるトニアを、俺はジッ、と見つめる。
まるで、トニアの心の内を見透かしているかのように。
「……本当です。そんなこと、神を冒涜するような行為だよ……」
そう言うと、トニアがサッと目を伏せた。
「ふむ……だが、私が確かな筋から聞いた話だと、バルセロス公爵様がトニアの父君……アルバ伯爵様に正式に依頼されたそうだが?」
ここでベルが俺の後押しをするために、トニアにそう尋ねた。
「……どこから聞いたんですかそれ」
「王国の機密事項に当たるため、それは言えん。だが、情報は確かだ」
「…………………………」
ベルの言葉に、トニアは反論できずにただ押し黙った。
さすがエリザベッタ殿下の護衛を務めているだけあって、その説得力は抜群だ。
「トニア様……私達は別に、トニア様や父君であらせられるアルバ伯爵様を貶めようとか、そういったことをしたいわけではないのです。ただ……ただ、私達は真実が知りたいのです」
「…………………………」
俺は訴えるようにトニアに語り掛けるが、当のトニアは押し黙ったままだ。
クソ……こうなった別のアプローチから……?
「……“魔力供給”は、不可能です」
「っ! で、ですが「ただし、あくまで現時点では、ですが」」
なおも不可能だと言い張るトニアに詰め寄ろうとしたところで、彼女はさらに言葉を続けた。
「今、お父様はバルセロス公爵様から莫大な資金提供を受け、“魔力供給”に関する研究に取りかかっています。 “魔力供給”こそが今後の王国の発展に寄与するからとのお題目で」
そう言った後、唇を噛むトニア。
つまり。
「……何か、あるんですね?」
「……(コクリ)」
そして、トニアが訥々と語り出した。
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次回は明日の夜投稿予定です!
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