第36話
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「それを話し合うのが、今日の目的なんです」
鋭い視線で見つめるベルに、俺は静かに答える。
つか、そもそも『昼休みに情報交換をしたい』って言ってきたの、テオ公ではあるんだけど。
「……私としては、必要な情報だけいただければそれで充分なんですが」
「いやいや、一方的に私から情報を搾取するのは、フェアではありませんよね? なら、テオ様もそれなりのものを提供していただきませんと」
少しおどけながらそう返すと、またもや不機嫌な表情を浮かべるテオ公。
うん、そんなに表情が変わるんじゃ、こういった仕事向いてねーんじゃねえの?
「……分かりました。では、あなたの知っている情報をいただければ、私もつかんだ情報をお渡ししますよ」
「交渉成立、ですね」
「…………………………」
俺はス、と右手を差し出すが、テオ公はプイ、と顔を背けた。
やれやれ、嫌われたもんだな……。
「では、まずは私が知っていることをお話ししますね」
俺はゲームで知っている情報を選び、それとなく話した。もちろん、大事な部分や情報の出所といった部分は隠したままで。
「……つまりあなたは、バルセロス公爵が殿下を亡き者にするために、外国の毒薬の調達や呪術魔法の研究を水面下で行っている、そうおっしゃるのですね?」
「ええ……それも、宮廷魔術師であるアルバ伯爵や、テオ様のご実家であらせられるフェルナンデス家を通じて。テオ様のご実家なら、外国との交易も盛んですよね?」
「……なるほど」
俺の話を聞いたテオ公は、口元を押さえながら何かを考えこんでいる。
思い当たる節でもあるんだろう。
「な、なあ……どうしてジルはそんなことを知っているんだ……?」
静かに聞いていたベルが、恐る恐る尋ねてきた。
「たとえベル様でも、これは秘密です、よ? ただ、うちの実家が関係しているとだけ」
ハイ、嘘です。
全部ゲームの知識で、実家は一切関与してません。
「……ありがとうございました。ここまで話していただいたのです、私も知る限りの情報をお伝えしましょう」
そう言って、今度はテオ公が話してくれた。
まず、先日の賊の一件は、やはり第二王妃一派の刺客であり、その時に使用された毒は、王国には存在しないものだったこと。
賊の殿下暗殺未遂以降、急にバルセロス公爵家内が慌ただしいこと。
特に、アルバ家とフェルナンデス家にバルセロス家の使用人が頻繁に出入りしているとのことだった。
「……そして、アルバ家に出入りしていた使用人に礼節をもってお尋ねしたところ、アルバ伯爵に対し、魔力を供給するための研究をかなり前から依頼している、とのことでした」
「「魔力を供給?」」
俺とベルは声を合わせて聞き返した。
だってそれは、剣術の授業の際に、あのトニアがキッパリと『無理だ』と言い切ったことだったから。
それと、“呪術魔法”の研究じゃなくて、殿下暗殺とは全く関係のない“魔力の供給”ってのも気になる……。
「それで、なんでバルセロス公爵は魔力供給なんてものを依頼したのですか?」
「……そうですね……これ以上は、ジルベルトくんの情報とではつり合いが取れませんね」
「っ! 何だって!」
顔を背けてそう告げるテオ公に俺はカッとなり、思わず詰め寄る。
「……ですから、あなたの情報の真偽も分からないままでは、これ以上話すことはない、と言っているんです」
「いいから教え……「ジル! 落ち着け!」」
テオ公につかみ掛かろうとした俺を、ベルが身体を張って止めた。
「……とにかく、話は以上ですよ」
「待てよ!」
「ジル!」
俺がベルに抑え込まれている間に、テオ公は踵を返してスタスタと立ち去って行った。
「ああ! チクショウ!」
苛立ちを隠せない俺は、近くにあった木に思いきり蹴りつけた。
「ジル……」
そして、心配そうに俺を見つめるベル。
「……すいませんでした」
「いや、いいんだ……」
そんなベルを見て冷静になった俺はベルに謝罪するが、ジルは静かにかぶりを振った。
「それで……どうするんだ?」
「……とりあえず、トニア様に接触してみようと思います」
そう、俺がテオ公の話の中で一番違和感を覚えたのが、アルバ伯爵の研究内容だ。
本来ゲームでは呪術魔法の研究しかしてなかったはずなのに、なんで魔力供給なのか。
……俺の知らないイレギュラーがこの世界で起こっている?
いずれにしても。
「トニア様ならなにかご存知でしょう……ご実家で研究されているにもかかわらず、あれほど魔力供給は無理だと言い張ったトニア様なら……」
「そうだな……」
俺とベルは頷き合いながら、中庭を離れた。
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次回は明日の夜投稿予定です!
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