第34話
ご覧いただき、ありがとうございます!
「アルザ様、行きましょう」
次の日の朝、朝食を終えて部屋で準備するアルザ様にドア越しに声を掛ける。
「……すまないがジル、今日は先に行ってくれないか?」
おや? 意外な返事だな……。
「アルザ様、どこかお身体の具合でも?」
「ああいや、ええと……そういう訳じゃないんだが……」
「?」
どうしたんだ?
「でしたら、今日は俺も学園を休んでアルザ様のお世話をさせていただきます」
「っ!? ダダダ、ダメダメダメ! 絶対ダメだからね!?」
……アルザ様から全力でダメ出しされてしまった。
「わ、分かりました……ですが、本当につらかったりしたら我慢せずに、いつでも私やイザベルさんにお声を掛けてくださいね?」
「う、うん……」
仕方ない……アルザ様は心配だけど、後はイザベルさんにお願いして、俺は学園に行くか……。
俺は踵を返してその場を離れようとすると。
「ジ、ジル! その……心配してくれて、ありがとう……」
「! い、いえ! アルザ様もゆっくりお休みください!」
そんなアルザ様のお声がけが嬉しくなって。不謹慎ながら俺は軽い足取りで学園へと向かった。
◇
「ホラホラ! ジル、どうした!」
「うお!? わわ!」
剣術授業の打ち込み稽古で、ベルが容赦ない剣撃を見舞ってくる。
や、ちょっと!? もう少し手加減してくれてもいいんじゃない!?
「ようし、やめ! 少し休憩するように!」
先生がようやく休憩の合図を入れてくれた……た、助かった……。
「ふう……しかし、ジルはなかなかの体捌きだな。私がまともに一撃も入れられないだなんて、お父様を除けばジルだけだぞ」
そう言うと、ベルは嬉しそうにニコリ、と微笑む。
や、逃げるのに必死だっただけなんだけど……。
「こ、これならその、お、お父様も……(ボソッ)」
「どうされました?」
「ふえ!? あ、い、いやいや! 何でもない! 何でもないぞ!?」
? まあいいか。
「それより、ベル様こそさすが騎士団長様のご令嬢だけあって、素晴らしい腕前ですね! このジル、感服しました!」
「そそ、そうか? ま、まあ、人一倍剣の修練をしていることもあるが、私は魔法が使えないものの魔力の量は人一倍多いらしくてな、それが肉体強化につながっているらしいのだ」
俺がベルを褒めると、彼女は照れくさそうにしながら強さの秘密を語ってくれた。
「いえ、やはり素晴らしいですよ! 何より、ベル様ご自身の才能もでしょうが、たゆまぬ修練こそが、ベル様の強さの本質なんでしょうね!」
「あうう……あ、あまり褒めないでくれ……は、恥ずかしい……!」
とうとうベルは恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆ってしまった。
ナニコレ、超カワイイんだけど。
「あああ……剣術はキライだよお……」
そんなベルを尻目に、トニアは半ベソかきながらラフラとこちらへやってきた。
ま、まあ、トニアは魔法特化型だからなあ……こういった物理は苦手なのだ。
「ふふ。トニアも一緒に私と稽古するか?」
「ヒイイ」
持ち直したベルにそんなことを言われ、トニアが思わず悲鳴を上げる。
といっても、ベルも揶揄っているだけみたいだけど。
「しかし魔力って不思議ですね……魔法のエキスパートであらせられるトニア様なら、腕前は足元に及ばないものの、ベル様のように肉体強化されていると思ったのですが……」
「はあ……そんなわけないでしょ! 私は効率よく魔法を使ってるだけで、魔力の総量はベルさんのほうが多いんだから!」
「そうなんですか?」
俺が聞き返すと、トニアは呆れながら頷いた。
だーかーらー、そんなこと普通は知らないっつーの。
「へえ……でしたら、ベル様の魔力を少し分けてもらえば、トニア様も少しは「無理だから」……へ?」
俺が冗談めかしてそんなことを言おうとしたら、トニアが無表情で俺の言葉を遮った。
つか、こんなトニアの表情は見たことがない。
「む……トニア、さすがにそれはジルに失礼ではないのか?」
「ベ、ベル様、私は気にしておりませんので!」
見かねたベルが少しムッ、としながらトニアを窘めるので、俺は慌ててベルを止めた。
や、気持ちは嬉しいんだけどな。
「……とにかく、そんな自分の魔力を誰かに分け与えるだなんて、有り得ない……ううん、そんな人でなしなこと、しちゃダメなんだから」
トニアは拳をギュ、と握りしめながらそう呟くと、そのままどこかへ行ってしまった。
「一体どうしたんでしょうか……」
「さあ……」
俺とベルはお互い顔を見合わせた後、そんなトニアの背中を見つめていた。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は明日の夜投稿予定です!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




