第31話
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「ジル、どうした?」
魔法の仕組みに関する授業中、隣の席のベルから声を掛けられ、俺はハッとする。
「別にどうもしませんよ?」
「嘘だな。ジル、何か悩みでもあるのか?」
そう言って、心配そうに見つめるベル。
ウーン……お前、そんなキャラじゃなかっただろ。
「いえ、本当です……ただ」
「ただ?」
「ひょっとしたら、今後ベル様にご相談する機会があるかもしれませんので、その際はよろしいでしょうか?」
すると、ベルは顔を上気させ、その深緑の瞳で俺を真っ直ぐ見つめた。
「ああ! もちろんだとも!」
「そこ! 静かに!」
「「す、すいません……」」
先生に叱られ、シュン、とする俺とベル。
ふう……俺も、気がついたらベルに絆されちまったのかなあ……。
「はあ……で、人の身体には必ず魔力が宿っているという話はしましたが、その魔力量は人によって異なります。これはよろしいですね?」
先生は溜息を吐くと、引き続き授業を再開するが……俺は先生の説明に違和感を覚えた。
だって……魔法使えないキャラ、結構いるぞ?
「あのー、先生」
「何ですか?」
おずおずと手を挙げると、先生は少し鋭い緯線で俺を見た。
「いえ、魔法を使えない人もそれなりにいると思うんですが……それでも、全員に魔力ってあるものなんでしょうか?」
「あら、いい質問ですね。確かにジルベルトさんが言うように、魔法を使えない人というのは一定数います」
俺の質問に気を良くした先生は、にこやかに答える。
「ですが、そもそも魔力は生命の根幹を成しているんです。なので魔法が使えなくても、必ず人には魔力はあるんです」
へえー、じゃあ全員魔力ってヤツは持ってるのかあ……。
俺はチラリ、とベルを見る。
「な、何だ?」
俺に見られて焦ったのか、ベルがキョドりながら尋ねてきた。
「ああいえ、別に……」
「そ、そうか」
や、ゲームでは、ベルは魔法が使えない設定だったからなあ。
この世界ではどうなんだろうと思った次第。ベルには言えんけど。
「では、仮にその魔力が無かったら、人はどうなるんですか?」
興味が湧いた俺は、先生にさらに質問する。
「魔力が無くなった時……それは“死”を意味します」
「っ!?」
え!? 魔力無くなったら死ぬの!? だったらMPゼロになったら終わりじゃね!?
俺が先生の言葉に驚きを隠せないでいると、先生はニヤリ、と口の端を吊り上げた。
「安心なさい。魔法を使っても、人は生命の危険が及ぶほど魔力を消費することはできないようになっていますから」
「そ、そうですか……」
先生の言葉に、俺はホッと胸を撫で下ろした。
だって、いざ“深淵の魔女王アゼリア”と戦うことになった時、俺が聖属性魔法でみんなを回復しながら死んだらシャレにならん。
俺だって、女の子とイチャイチャチュッチュしたいのだ。
「あら、ちょうど時間のようですね。それでは、授業を終わります」
先生が教室を出た後。
「いやあ、全員の身体に魔力が宿っているだなんて、知ってました?」
俺は後ろを振り返り、トニアに若干興奮ぎみに語ると。
「……ジル君、そんなの常識だよ……」
トニアに呆れられてしまった……。
「し、しかも、魔力が空っぽだと思っていたのが、実は残ってるっていうんですよ? これは「だから、それは常識なの!」……はい」
そ、そんなこと言っても、俺は知らなかったんだよ!
だからトニアさんや、そんなウンザリした表情で俺を睨まないでくださいお願いします。
「とにかく! もうこの話は終わりです!」
そう言ってトニアは机をバン、と叩いて立ち上がると、プリプリとしながら教室を出て行った。
「え、ええと……私、何か怒らせるようなこと言いました?」
「そ、そんなことはないぞ?」
「ですよねえ……」
俺とベルはお互い顔を見合わせると、トニアが出て行った教室の出入口を見つめた。
「まあ、彼女は彼女で色々とあるってことよ」
エリザベッタ殿下が澄ました表情でそう語る。
「「何かって……何です?」」
思わず殿下に聞き返すと……ヤベ、ベルとハモった。
「さあて、ね。それより、早く食堂に行ってランチにしましょう?」
「「そ、そうですね」」
あ、またハモった。
「テオも! テオもご一緒するです~!」
どこからともなく現れたテオ公が、勢いよく手を挙げて詰め寄ってきた。
コ、コノヤロウ……!
「ええ、一緒に行きましょ?」
殿下もこんな奴追い払えばいいのに。
そんなことを考えながら、俺達は食堂へと向かった。
だけど。
アルザ様、今日は教室に来なかったな……。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は明日の夜投稿予定です!
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