第25話
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「エリザベッタ殿下、アルトレーザ公爵子息ご到着です」
会場にいる司会進行役の人の宣言とともに、会場の扉が開かれると。
「おお……!」
会場の中は、ものすごくキラキラしていて、着飾った新入生達が豪華な食事の数々の前で思い思いに楽しんでいた。
「ジ、ジル……」
名前を呼ばれたので見ると、ベル公が頬を染めた顔を逸らしつつも、ス、と手を差し出した。
おっと、俺はベル公のエスコート役なんだ。彼女に恥をかかせるわけにはいかないな。
「ベル様、失礼いたします」
俺はベル公の手に振れ、そっと持ち上げると、ベル公の顔はますます赤くなる。
「では、参りましょう」
「う、うん……」
ベル公の奴、『う、うん……』だって。
何だよコレ、メルザたんという存在がいなかったら、間違いなく惚れるだろ。
で、アルザ様……なんでそんなに睨んでるんですか?
俺のことはいいから、殿下のお相手をしないと。
「では、挨拶に回るわよ」
殿下に続き、俺達は各方面へと挨拶に回る。
いくら新入生とはいえ、学園を卒業すれば全員貴族としての道を歩むことになるんだ。今のうちからちゃんと関係は作っておかないと、ってことかな。
とはいえ。
「エリザベッタ殿下、ご機嫌麗しゅうございます!」
「本日もお綺麗でございます!」
「アルトレーザ様! ご入学おめでとうございます!」
とまあ、有象無象の貴族達が、王族や有力貴族と何とかして繋がりを持とうと必死に群がって来るのだ。
え? 俺? ……うん、誰も来ませんが何か?
というか、むしろ何でお前みたいな輩が殿下達の傍にいるんだと言わんばかりに睨まれておりまする。ちくせう。
「……ジル、気にするな。なあに、私がお父様から騎士団を受け継いだ暁には、お前にそのような視線を向けた者全て、この私が締め上げてやる!」
「物騒なこと言わないでください!?」
突然何言い出しやがるんだこのベル公は!?
……まあでも、俺への視線に気づいて、そうやって気遣ってくれたことに対しては、素直に感謝しておくけど。
だ、だからって、絆されたりした訳じゃないんだからね!?
そうやって、殿下達が挨拶の絶えない新入生達を捌いていると、会場内に楽団がやって来て、演奏を始めた。
おお……どうやらダンスの時間のようだ。
「殿下、よろしいでしょうか?」
そう言うと、アルザ様は跪き、手を差し出した。
「あら、そうね……じゃ、踊りましょうか?」
そして、殿下とアルザ様は中央へと向かうと、音楽に合わせて踊り始めた。
「「「「「おお……!」」」」」
会場内の至る所から、感嘆の声が漏れる。
それくらい、この美男美女が魅せるダンスは素晴らしかった。
「ジル……」
見ると、ベル公……いや、ベルが、俺の服の袖をつまみながら、潤んだ瞳で俺を見つめていた。
「……はは、こんなみすぼらしい姿の私と踊るよりも、他にも素敵な殿方がいらっしゃいますよ?」
俺は少しおどけながらそう言うけど。
「……イヤだ、私はジルがいい。それに、ジルが着るその服は、とても大切で、とても素敵なものじゃないか」
「……はは」
……あーあ、馬車の中で余計なこと言わなきゃよかった。
だけど……うん、エスコート役の俺が、ご令嬢を楽しませなくてどうするんだって話だ。
というわけで。
「分かりました。ではベル様、私と踊っていただけますか?」
「っ! う、うん!」
ああもう、完全に騎士から乙女に変わってやがる。
まあ……ゲームじゃこのパーティーで身の危険が及ぶようなイベントはなかったはずだから、今日くらい楽しんでもバチは当たらないよな?
それと……そんな風に言ってくれて……ありがとう、ベル。
俺はベルを伴ってダンススペースに移動すると、早速曲に合わせてステップを取る。
一、二、三……一、二、三……うん、ちゃんとリードできてるな。
「あ、あの……ジル……私はこういったダンスとか初めてで、その……お、お前の足を引っ張ったりしてない、か……?」
不安そうな表情で俺を見つめるベル。
だけど。
「はは、ダンスの場では、リードする相手に身体を預ければいいんですよ。なので
このジルめがしっかりとベル様をリードいたします」
「うん……お願い……」
そう言うと、ベルは安堵したのか蕩けるような笑顔を見せ……そして、俺に身体を預けた。
はあ……メルザたん、アルザ様、俺は間違いを犯してしまいそうです……。
曲が終わり、俺達は一礼すると、またテーブルへと戻……っ!?
その時、俺はベルではない何者かの足に引っ掛かって、盛大に倒れると。
「うわっ!?」
さらに、なぜかテーブルに用意されてあった赤ワインの瓶が狙ったように俺の頭上に落ちてきて、俺の服はワインでびしゃびしゃになった。
「ジ、ジル!? 大丈夫か!?」
ベルが慌てて俺を起こしてくれたけど……コレ……。
「ああ……すまないな、ジル」
見ると、満面の笑みを浮かべたアルザ様がいた。
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次回は明日の夜投稿予定です!
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