第23話 アルトレーザ?
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■アルトレーザ?視点
「はあ……」
エリザベッタ殿下が復帰されてから一週間が経った今、ボクを悩ませているのは……。
「ウフフ、ジル、早くしないと、食堂の席が無くなってしまうわ」
「で、殿下!?」
今日も殿下は、お気に入りのジルと腕組みをしながら笑顔で食堂へとせかす。
そりゃあ殿下がジルのことを気に入るのも分かるよ?
だって、自分が命を落とすかもしれないような状況で、颯爽と現れたジルがテキパキと指示を出しながら、そ、その、首元に口を当てて、毒を吸い出して……さらに、伝説の聖属性魔法だって使っちゃうんだもん……。
こんなの、女の子だったら絶対にときめいちゃうよ……。
だ、だけど、ジルもジルでちょっと浮かれすぎなんじゃないかなあ?
仮にも、ジルはボクに仕えてるんじゃないの?
だ、だったら、もっとボクのこと……殿下よりもボクのことを構ってよ……。
「アルザ殿?」
「……本当にもう……って、ベ、ベル!?」
ジト目で前を歩くジルの背中を睨んでいたら、突然ベルから声を掛けられ、少し驚いてしまった。
「アルザ殿……あの二人、どう思われる?」
「ど、どうって?」
怪訝な表情でそう尋ねるベルに、僕は彼女の意図が分からず、あえて聞き返した。
「アルザ殿の婚約者である殿下が、ジルに横恋慕しているのですぞ!? ここは殿下の婚約者として、ジルの“親”として、あの者の行動を咎めるべきではないかと」
ベルは両手の人差し指をコチョコチョさせ、視線を逸らしながらそんなことを言った。
コイツ……イヤなことをボクに押しつけて、あわよくばジルともっと仲良くなるつもりだな……!
「大丈夫だよ、ジルはああ見えて、僕に生涯の忠誠を誓っているんだ。殿下のお戯れをいちいち本気にしたりはしないし、それに……ジ、ジルはボクだけのジルだからね!」
ボクはあえてジルがボクのものだって、ベルに思いっきりアピールしてやった。
するとベルは、少し悔しそうに唇を噛んだ。
ベルには悪いけど、絶対にジルを渡したりしないんだからね!
そんな決意、というか宣戦布告を心の中でしながら、後に続いて食堂に向かった……んだけど。
「ねえジル、“アーン”して?」
「ええー……」
席を密着させ、おねだりをする殿下。
そして、顔をしかめながらイヤイヤするジル。
コホン……ここはやっぱり、主であるこのボクがジルを助けなきゃ、ね。
「殿下、ジルも困っておりますので、“アーン”でよろしれば、このボクがいたしますが……」
「アル、あなたにはお願いしていないわ?」
くうう……! 一応ボクは婚約者なんだけど!
「いえ、“子”の不始末は主であるボクの不始末、なのでボクが代わりを務めます……ジルは向こうに行ってて」
そう言って、ジルを無理やり別の席に追い払うと、ボクは殿下の隣に座った。
「ハア……もう、つまらないわね……」
殿下、ボクが座った瞬間、あからさまに不機嫌な顔をするの、やめてくれませんか? ……って、ああ! ベルがちゃっかりジルの隣に座った!?
くうう……ボクだって本当はジルと二人っきりでランチしたかったのにいいいいい!
◇
「……ってことがあったんだよ……」
夕食が終わり、ボクは後片づけをしているイザベルに愚痴をこぼす。
もう! なんだってジルはこんなに女の子にモテるんだよ!
そもそも、ジルが他の女の子達に優しくし過ぎるのがいけないんだ!
……ジルはボクの“子”なのに、主を放ったらかしにしてー……。
「まあまあ、ジルベルト様はああ見えて紳士ですので、特に男性との接点が皆無のベルナデット様や息苦しい王宮での暮らしが長いエリザベッタ殿下からすれば、ジルベルト様は素敵に映るでしょうから」
「フォローになってなくない!?」
うう、ボクだって分かってるよお……ジルは素敵だから、女の子達が放っておかないことくらい……。
「ですが“お嬢様”……ジル様ともっと仲良くなれるイベントが近々ございますよね?」
「イベント?」
イザベラの言葉に、ピンとこない僕は思わず首を傾げる。
イベント……そんなのあったっけ?
「お忘れですか? 今月末は“お嬢様”を始め、新入生の歓迎パーティーがございますよ?」
「ああ!」
そうだった! すっかり忘れてた!
そうだよ! そのパーティーでボクがジルとずっと一緒にいて、それで、一緒にダンスなんか踊ったり……えへへ。
「はあ……まあ、夢を見るのはよろしいですが、“お嬢様”はジルベルト様と一緒にダンスを踊ったりできませんからね?」
「っ! わ、分かってるよそんなこと!」
な、なんだよ……そんなの……そんなの、ボクだって……。
「とにかく、そのパーティーでジルベルト様の好感度を上げる秘策がございます」
「秘策?」
いつも無表情なイザベルが、珍しくニタリ、と口の端を吊り上げた。
うう……こういう時のイザベル、悪いこと考えてるんだよなあ……。
「ええ、私が聞いたところによりますと、ジルベルト様はパーティー用のお召し物は一点しかお持ちでないとのこと。しかも、そのお召し物もかなり使い込まれておられるご様子です」
「ふんふん」
「ですから、ここは“お嬢様”がジルベルト様にお召し物をプレゼントされてはいかがですか?」
「っ! そ、そうか!」
ボクがジルにプレゼントすることで、ジルの好感度を上げる……これだ!
「ありがとうイザベル! そうと決まれば、早速明日にでもジルと一緒に仕立て屋に……「お待ちください」」
ボクが意気込んでいると、イザベラが水を差した。
「な、なんだい……?」
「せっかくですのでサプライズプレゼントにしてはいかがですか? それに、万が一ジルベルト様にお召し物をプレゼントされることが知れたら、殿下やベルナデット様が黙っておりますでしょうか?」
「っ!」
そ、そうだよ……このことを知ったら、殿下達のことだから、絶対にボクより良い服をプレゼントしようとするはず……!
ここはイザベルの言う通り、サプライズで……あれ? でも……。
「ボク、ジルの服のサイズを知らない……」
「お任せください! 私がジルベルト様のサイズを承知しています!」
誇らしげに胸をドン、と叩くイザベル。
ていうか、なんでジルの身体のサイズを知ってるの!?
「なので、お召し物の仕立てに関してはご心配ありません。それより、せっかくなので……」
そう言うと、イザベルがなぜか小声で耳打ちした。
「……でいかがですか?」
「っ! それだ! それでいこう!」
そうか! それならジルも遠慮することなく、ボクのプレゼントを受け取ってくれるはず!
「イザベル! ありがとう!」
「お褒めいただき、光栄にございます」
うん! これならジルも……!
ボクは月末のパーティーに胸を膨らませながら、早速明日にでも仕立て屋に行こうと意気込んだ。
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次回は明日の夜投稿予定です!
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