第22話
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「……ジル、ミラ、君達は二人でなんの話をしていたのだ?」
ランチを乗せたトレイを持って席に戻ると、早速右隣に座るアルザ様に問い詰められてしまった。
「そ、そうだ! し、しかも、ミラも嬉しそうに笑っていたぞ!?」
同じく、左隣に座るベル公も身を乗り出して詰め寄る。ち、近い。
「な、何もないですよ。せいぜい、私もミラ様と同じBランチにすればよかったと呟いたら、笑われてしまっただけですから」
はい、ウソです。
訳の分からない推理を聞かされてました。
「「ほ、本当か!?」」
「本当ですってば! ね、ねえ、ミラ様?」
俺は助け船を求めてミラ公に話を振る……が、さっきのことを根に持ってるのか、プイ、と顔を背けて無視しやがった。チクショウ。
「……まあいい。ボクはキミの主だから、心の広いボクはキミのことは信じてあげるよ」
じゃあそのジト目を今すぐやめてくださいお願いします。
「……わ、私もジルは信頼しているからな!」
ベル公よ、こんなところでアルザ様に対抗意識燃やす必要なくない?
大体、アルザ様は男で、殿下の婚約者だっつーの。
「えへ、テオも二人がどんなお話をしていたのか知りたいです~!」
ウルセー! これ以上話を混ぜっ返すんじゃねー!
「……ホントーに女の敵だねえ」
はい、トニアが一番辛辣でした。
◇
今日の授業を全て終え、俺は帰り支度を始めていると。
「ジル! さあ帰ろう!」
「アルザ様!」
いつものようにアルザ様が教室まで迎えに来てくれた。
何というか、本当なら俺が迎えに行くべきなのに、アルザ様ったらまるで犬みたいに尻尾振って真っ先にやって来るんだもんなあ
しかも、殊の外嬉しそうだから、遠慮もできねえ。
その時。
「「「「「っ!」」」」」」
教室の全員が、入口を向いて息を飲んだ。
そこには。
「ごきげんよう」
「「殿下!」」
なんと、療養されているはずのエリザベッタ殿下が現れた。
当然、ベル公とミラ公が慌てて殿下に駆け寄る。
「殿下! お身体は大丈夫なんでしょうか!?」
「殿下、それで賊は!?」
うん、ベル公とミラ公で殿下にかける言葉が違い過ぎる。
ミラ公……コイツ、ちょっとは主君を心配しろよ。
「ええ、大丈夫よ。賊に関しては諜報部に確認なさい」
殿下はにこやかに返事をすると、ツカツカとこちらへと向かってきた。
「殿下、お身体の具あ「ジル、襟が曲がっているわよ?」」
俺が膝をついて頭を下げようとしたところで、殿下がグイ、と襟をつかんで直してくれた!?
え? え? どういうこと!?
「フフ、昨日は助かったわ。お蔭ですっかりこの通りよ」
そう言ってニコリ、と微笑む殿下。
ヤバイ、ものすごく可愛い……………………ハッ!?
背中に悪寒を感じた俺は、ギギギ、と錆びついた歯車のように不自然に振り返ると……うん、やっぱりアルザ様とベル公が頬をパンパンに膨らませていた。
「も、申し訳ありませ「こらジル、今は余と話をしているのだ。こちらを見ろ」」
慌ててアルザ様に謝ろうとしたが、殿下に両手で顔を挟まれ、それを許してもらえない。
うう……アルザ様、俺は決してアルザ様の婚約者に手を出したりしませんからね!?
「で、殿下! お戯れはそこまでにしていただけますでしょうか!」
すると、見かねたアルザ様が俺と殿下の間に割って入った。
「あらアル、嫉妬かしら?」
「っ!?」
殿下の空気を読まない言葉に、アルザ様が息を飲む。
……ちょっと、それはなあ。
「殿下。失礼ながら、アルザ様が婚約者の殿下を大切に思われるのは当然のことでございますれば……」
見かねた俺は、不敬とは思いながらも殿下に一言申し上げることにした。
や、もちろんアルザ様の婚約破棄を回避するため、ってのもあるが、それ以上にアルザ様の悲しむ姿は見たくない。
だから、俺は絶対にエリザベッタ殿下エンドは選ばないのだ。
「あらそう……フフ、じゃあ余がアルと婚約破棄をすれば、堂々とジルと付き合えるのかしら?」
そう言うと、殿下は俺の顎をそっと撫でた。
こ、この殿下、何言い出すの!?
「……殿下、婚約は国王陛下がお決めになられたこと。殿下の一存でお決めになるものではございません」
ス、と殿下の後ろについたベル公が窘めた。
ベル公ナイス!
「そうですね、仮に国王陛下がジルベルト君とのことをお認めになられても、このミラグロス、承服いたしかねます」
ここでミラ公も殿下の言葉に反対の意を唱える。
だけど、ちょっと俺への風当たりがキツイと感じるのは気のせいだろうか?
「フフ、もちろん分かってるわよ……ただ」
「「ただ?」」
な、なんだよ……もったいぶった言い方して……。
「伝説にある“聖属性魔法の使い手”だったらお父様はどう仰られるかしら?」
「「っ!?」」
……あー、やっぱりそうなるかー。
伝説で聖女のみが使ったとされる聖属性魔法、この世界で俺だけが使えるとなったら、国としては放っておかないよなあ……。
で、そんな奴を繋ぎ止めるために王族と政略結婚させるなんてのは、普通に考えたらある。というか、ゲームではそうだったし。
だけど、それだけは俺も絶対に受け入れられない。
だから。
「はは。ですが殿下、私はあの時以降その聖属性魔法というものを一度たりとも使うことができないんですよ? つまり、あれは聖属性魔法ではないか、万が一聖属性魔法だったとしても、それこそ奇跡が起こったってことじゃないでしょうか?」
俺はわざと軽い調子で否定した。
こうしないと、絶対に殿下エンドまっしぐらだもんなあ……。
「ウフフ、じゃあ今日のところはそういうことにしてあげる。それじゃあね、愛しのジル」
そう言って殿下は軽くウインクすると、教室を出て行った。
「ジ、ジル! あれはただの殿下のお戯れだからな! ほ、本気にするなよ!」
ベル公が必死にそんなことを言いながら、慌てて殿下を追いかける。
ミラ公は……うん、無言で睨むなよ。
「はあ……殿下のご冗談にも困ったものですね、アルザ様?」
「うん……」
俺が努めて明るく声を掛けるが、アルザ様は俯いて落ち込んだ様子だ……。
……本当に、殿下も余計なことをしてくれたなあ。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は明日の夜投稿予定です!
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