第20話
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「ジル!」
午前の授業が終わり、アルザ様が教室に飛び込んできた。
うむ、アルザ様はすこぶる笑顔である。
「アルザ様、わざわざ教室にお越しいただけるのはありがたいのですが、これからは俺がアルザ様の教室にお伺いしますが?」
「え……いや、いい! ボクがこの教室に来たいから来てるのだから!」
そう言うと、アルザ様が嬉しそうに微笑む。
ああもう、どこまで俺のアルザ様は尊いんだよ!
「それよりジル、昼食を摂りに食堂に行くぞ!」
「はは、はい!」
意気揚々と拳を上げるアルザ様を見て、俺は頬を緩めながらその後に続こうとすると。
「ア、アルトレーザ殿!」
ガタ、と立ち上がったベル公が、急にアルザ様を呼び止めた。
? 何だ?
「どうかしたのか?」
「そ、その! わ、私もその昼食、ご一緒してもいいだろうか!」
お、まさかベル公がアルザ様と一緒にメシを食いたいって言うとは……って。
ああ……そういうことか。
「ボクは別に構わないけど……ジルは?」
「俺も別に構いませんよ?」
「っ! あ、ありがとう!」
ベル公め、嬉しそうにしやがって。
だけど、俺はアルザ様に忠誠を誓ってるから、アルザ様のお許しがない限りはお前と恋人同士にはなれねーぞ?
「あ! だったら私もご一緒したいです!」
アルザ様大好きトニアも参戦。
だが。
「トニア様、分かってますよね?」
「?」
あ、全然分かってねえ。
仕方ないので、俺はス、とトニアの傍に寄り、そっと耳打ちする。
「(……アルザ様には、エリザベッタ殿下という婚約者がおられますからね?)」
「っ!? も、もちろん……」
見るからに消沈するトニア。
だが、アルザ様に迷惑が掛かってはいけないのだ。
「「…………………………フン!」」
で、ベル公はともかく、アルザ様はなんでそんなにむくれてらっしゃるのですか?
「……私もご一緒しても?」
お、ミラ公も来るの?
俺はチラリ、とアルザ様を見ると……うん、特に反対ではないようだ。
「はい、ではご一緒しましょう」
「ありがとうございます」
うーん、今日の昼メシは大所帯だな……って、ベル公、お前はミラ公と友達だろうが。何睨んでるんだよ。
「よし、では行こうか」
アルザ様の合図で、俺達はぞろぞろと食堂へと向かうと。
「えへ、奇遇ですね~!」
テオ公が食堂のテーブルに一人陣取り、俺達に手を振ってきた。
しかも、ご丁寧に六人掛けのテーブルに五人分の席を確保して。
「さあて……アルザ様、あちらの席が空いておりますよ?
「ちょ、ちょっとちょっと!? ホラ、テオの周りも空いてますよ~!?」
「いえ、どなたかが確保されているようですので、遠慮します。ねえ、アルザ様?」
「そうだな。さすがに確保している他の生徒を押し退けて座るのはな」
ウンウン、俺のアルザ様は常識人なのだ。
「あああああ!? アレ~? いつの間にか、確保されてた生徒さんがどこかに行かれたようですよ~!」
どうやらテオ公は、目にも止まらない程の素早さで、カバンやらハンカチやらを撤去したようだ。
そこまでして俺達と一緒に座りたいか? 座りたいよな。
「(……どうする?)」
アルザ様が苦笑しながら俺に耳打ちする。
まあ……“仕事”だし仕方ないかあ……。
「……分かりました、今日はこの席で食べましょうか。せっかくテオ様にご用意いただいたわけですし?」
俺が肩を竦めながら皮肉を込めて言うと、テオ公は鳴らない口笛を吹きながら、明後日の方向を向いた。
結局俺達はテオ公の思惑通り、用意された席へとそれぞれ席に着いた。
んで、俺の右隣にはアルザ様が、俺の左隣にはベル公が座り、アルザ様の前にはトニア、ベル公の前はテオ公。
そして、俺の目の前にはミラ公という配置だ。
つか、このミラ公、俺が席を選んだ瞬間、すかさず俺の前に陣取りやがった。
……まあ、昼メシ一緒に食いたいって言ってきたり、こうやって前に座ったりするってことは、俺に用があるってことだろう。
でも。
「さて……私が皆さんの分も取ってまいりますので、AランチかBランチ、どちらにしますか?」
俺は席を立つと、お前とは話はしないとばかりに、率先してパシリに名乗りを上げた。
「「あ、ボク(私)も一緒に「いや、私一人で充分ですから」……」」
アルザ様とベル公も名乗りを上げようとしたが、俺が丁重に断るとシュン、と俯いてしまった。
「えへ、テオはAランチ~!」
テオ公は何一つ遠慮することなく、真っ先にオーダー。面の皮が厚い。
「じゃあ私はBで!」
ふむふむ、トニアはBランチ、と。
「じゃ、じゃあボクはAランチを」
「私はBだ」
アルザ様がA、ベル公がB。
「ミラ様は……「私は自分で取りに行きますので、お気になさらず」」
どちらにするか聞こうとした俺の言葉を制止し、ミラ公がピシャリ、と言い放つ。
ふうん……どうしても、俺と二人で話がしたいって訳か。
「分かりました。では参りましょうか、ミラ様」
「ええ」
ミラ公も立ち上がり、俺と一緒にランチを取りに行く。
……とりあえず、アルザ様とベル公は、俺を睨むのは止めてくれませんかね?
お読みいただき、ありがとうございました!
次回は明日の夜投稿予定です!
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