第18話 アルトレーザ?
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■アルトレーザ?視点
「俺は……俺は、フレイレ家の家督を継ぐ者として……いえ、そうしたい俺自身の意思で、正式にあなた様の“子”となり、アルザ様に忠誠を誓います!」
ジルが僕の前で膝をつき、ボクの靴に誓いのキスをした。
ああ……そんな、ジルがこんなボクのために自らそんなことをしてくれるなんて……!
「ジル……!」
ボクは嬉しくて、悲しくて、幸せで、申し訳なくて……そんな自分の中にある色んな感情を抑えることができなくなって。
「アルザ……様……」
「ジル! ジル!」
気がつけば、ボクはジルを思いきり抱き締めていた。
ジルが愛おしくて、ジルが眩しくて、ジルと……離れたくなくて。
すると、ジルは僕の背中を優しくさすってくれた。
「アルザ様、俺のこの誓い、受け入れていただけますか?」
そんなの……そんなの!
「ボク、なんかでいいの……?」
「はい。俺は、アルザ様だからこそ忠誠を誓いたいのです」
「ボクは、こう見えて独占欲が強いから、キミが誰かと話したりしていたら嫉妬してしまうかもしれないよ……?」
「アルザ様に仕える者として、これ以上の栄誉はございません」
ああ……ジルは本気でこのボクに……!
「分かった……ジル、たった今からキミは、ボクの……このボクの、この世界で一番大切な人、だからね?」
「っ! は、はい! このジルベルト、永遠にアルザ様に忠誠を誓います!」
嬉しい! 嬉しい! 嬉しい!
ジルは、公爵家という身分なんか関係なく、このボクを選んでくれた!
たとえ、このボクという存在が偽りだとしても……!
気がつけば……ボクの瞳から、涙が溢れていた。
「アルザ様、失礼します」
「ジル……んっ……」
ジルはポケットからハンカチを取り出すと、ボクの頬を伝う涙を優しく拭ってくれた。
「日が暮れて寒くなってまいりましたので、身体を冷やしてはいけません。中に入りましょう」
「うん!」
ボクはジルの手を取り、寮の中へと入った。
◇
「えへへ……」
寮の食堂でボクは一人、緩む頬を必死で押さえていた。
でも、すぐに緩んじゃう。
「“お嬢様”、嬉しい気持ちは分かりますが、少々緩み過ぎです」
「も、もちろん分かってるよお……えへへ……」
イザベルが窘めるけど、でも、緩んじゃうんだからしょうがないよね。
だって、これってジルがボクの、その……ボクだけの騎士ってことだもん!
はあー……まるで、物語に出てくるお姫様みたい……。
「はあ……そんな“お嬢様”に、この私めは残酷な言葉を伝えなければなりません……」
イザベルがわざとらしく額を押さえながらかぶりを振る。
「……早く言いなよ」
「はい。“お嬢様”、よくお考えください。ジルベルト様は“お嬢様”に忠誠を誓ったんですよ?」
「そうだけど?」
ジルがボクだけに忠誠を誓ってくれたから嬉しいんじゃないか。何を言ってるんだよ。
「つまり! ジル様は決して“お嬢様”を好きと言ったわけではないんです!」
「っ!?」
イザベルの衝撃の言葉に、ボクは一瞬言葉を失う。
「だ、だけど、ジルはボクに一生忠誠を誓うって……」
「ええ、ジルベルト様は部下として、“お嬢様”に忠誠を誓われたのですよね?」
「ふ、ふあ……」
そうだけど! そうだけれども! 間違っちゃいないけれども!
「……少しくらい、幸せに浸ってもいいじゃないかあ……」
ボクだって分かってるよお……ジルが、決してボクのことを恋愛対象として言ってくれた言葉じゃないことくらい……。
「いえいえ、お分かりなら良いのです。で・す・が!」
「まだあるの!?」
もうこれ以上イジメないでよ! イザベルの意地悪!
「これはひょっとしたら、ジルベルト様は性別の垣根を越えてでも、“お嬢様”に恋愛感情を抱かれる日も近いかもしれません」
「ふあああああ!?」
え? え!?
つまりそれって……!?
「ボクがもし“男”だったとしても、構わないってこと!?」
「今回の件で、その可能性が生まれました。つまり……“お嬢様”、これはチャンスです!」
「ふああ!? チャ、チャンスって……」
ふああ……で、でも、性別さえも飛び越えて、ジルがボクのこと好きになってくれるってことで……それって……。
「よ、喜んでいいの、かなあ……」
うん……考え方によっては、何より“ボク”を好きになってくれるってことだけど、な、悩んじゃう……。
「何を言っているのですか! 喜ぶべきです! なぜなら、ジルベルト様と結ばれるための最大の障壁を、乗り越えられるのですから!」
「っ!」
イザベルは両手を握りながら、フンス、と鼻息を荒くする。
だけど。
「……最大の障壁は、それじゃないよ。それに、それは絶対にクリアできないから……」
「“お嬢様”!」
「ゴメン、疲れたから部屋に戻るね……」
何か言おうとするイザベルを無視するかのように、ボクは俯きながら食堂を出た。
「ボクは……ボクは……っ!」
ジルがボクのことを想ってくれる嬉しさと、ジルとは絶対に結ばれない悔しさで張り裂けそうになる胸を、ボクは涙を零しながら必死で押さえつけた。
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次回は明日の夜投稿予定です!
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