第14話 アルトレーザ?
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■アルトレーザ?視点
「ですが、今日は本当に疲れましたね」
エルシド寮の食堂。
イザベルの作ったメインである子羊のローストに舌鼓を打ちながら、ジルが少し肩を落とした。
「む。ジル、キミ達のクラスで何か問題でもあったりしたのか?」
ジルの表情に見える疲労の色が気になり、ボクは彼に尋ねた。
「ああいえ、何かあったわけではないんですが、その……」
「何だ? 早く言いたまえよ」
気まずそうにするジル。
だが、逆にそれが気になったボクは続きを話すように強めに促した。
「……教室の、私の席の周囲に座る面々が何とも……」
「? キミの席の周りって……あ」
そういえば、ジルの周りにはエリザベッタ殿下をはじめとして、ベルナデット、ミラグロス、そしてトニアが囲んでいたな……。
「……何だ、それは可愛い女の子に囲まれて嬉しい悲鳴だ、とでも言いたいのか?」
その事実にボクはムッとなり、つい皮肉を込めてそんなことを言ってしまった。
「ち、違いますよ! いやホラ、殿下が隣にいらっしゃるだけでも私にとってはかなりプレッシャーですのに、そこにきてベル様やミラ様、さらにはトニア様までいらっしゃるから……」
ジルはボクの言葉を慌てて否定した後、少し顔を青くしながら肩を竦める。
「ああ……つまり、キミはまだ周りにいる女の子達の家格に慄いているというわけだな」
そう言うと、ジルはコクリ、と頷いた。
「全く……キミはいつまで身分を気にしているんだ。今日の国王陛下のありがたいお言葉を聞いていないのか?」
「い、いや、もちろんそれは理解しておりますが、だからってアルザ様と同じようにはいきませんよ!」
む、何だよ。僕だったら緊張もしないっていうのか? ……って、それって!?
「え、ええと……それは、ボクとだったら一緒にいても楽しい、ってことか?」
ボ、ボクは何を聞いてるんだ!?
そんなことジルは言ってないし、完全に的外れだよね!?
ボクは恥ずかしさと不安で、チラリ、と覗き込むようにジルを窺うと。
「あ、それは間違いないですね。私はアルザ様と一緒にいると楽しいです」
そう言って、ジルはボクに微笑んでくれた。
ああもう……本当にジルは……!
「そ、そうか。な、ならボクも、キキ、キミと一緒にいることはやぶさかではない、うん」
ダメだよ、嬉し過ぎてジルの顔がまともに見れない。
だって、ジルが……あのジルが、このボクにそんなこと言ってくれたんだよ?
それだけでボクは、思い残すことなんてないよ……。
◇
「「ご馳走様でした」」
食事を終え、ボクは口元をナフキンで拭う。
「さて……私は部屋に戻りますが、アルザ様はどうなさいますか?」
ジルはいつものように一緒に部屋に戻ろうと誘ってくるけど、今日は先程のことがあって、少し顔を合わせづらい。
だってボク、ジルの顔を見たら勝手ににやけちゃうんだもん。
だから。
「あ、ああ、ボクは少しイザベルと話があるから、先に戻っているといいよ」
「はあ……分かりました……」
そっぽを向いてボクはジルを袖にすると、彼は残念な表情を浮かべ、食堂を出て行った。
あうう……ジル、こんなそっけないボクのこと、嫌いになったりしないだろうか……。
「“お嬢様”」
「ふああ!?」
イザベルに突然後ろから声を掛けられ、思わず僕は驚きの声を上げた。
「イ、イザベル! 驚かさないでよ!」
「私に話があると仰ったのは“お嬢様”ですが?」
もう! 本当はジルの顔が見れないための方便だって、イザベルも分かってるくせに!
いつもこうやってボクに意地悪して楽しんでるんだから!
「ですが、良かったですね」
「っ! うん……!」
微笑むイザベルの言葉に、ボクは思いきり頷いた。
だって……だって、ジルがボクと一緒だと“楽しい”って言ってくれたんだもん!
こんな姿のボクでも。
そう思うと、ボクの胸が嬉しさで溢れて、苦しくなって、思わずボクは自分の胸襟をキュ、と握った。
「“お嬢様”……」
気づけば、イザベルがすごく悲しそうな表情でボクを見つめていた。
「ん……もちろん分かってるよ」
そう、ボクはちゃんと分かってる。
この幸せも、この胸の苦しさも、ほんのわずかな時間しか感じることができないってことを。
だけど……だけど、今だけはいいよね……?
だって……あの日、あの時から大好きなジルに、そう言ってもらえたんだから。
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次回は明日の夜投稿予定です!
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