第47話:泣きぼくろトントンと永遠の聖域、あるいは裏の支配者のウインク
夜。閉店後の静まり返った李家食堂の店舗スペース。
薄暗い間接照明だけが灯り、周囲のバイクの喧騒が遠のくなお、そこは「大人の聖域」へと変貌していた。
俺がカウンターに座っていると、薄手の寝巻き姿に着替えた蘭さんが、大人の女性の甘く狂おしいハーブの香りを漂わせて隣に滑り込んできた。
彼女は妖艶な微笑みを浮かべながら、右目の下の泣きぼくろを人差し指の先でトントンと軽く叩き、俺の頭を自身の太ももの上へと優しく引きずり込んだ。
極上の膝枕。
薄い寝巻きの布地越しに伝わってくるのは、ひたすらに柔らかく、どこまでも深く深く沈み込んでいくような、究極の肉厚の包容力だった。
蘭さんは俺の頭髪を細い指先で優しく愛撫しながら、俺の魂のすべての疲れを無限の母性で包み込み、溶かしていく。
「よく頑張ったわね、志郎おじさん。世界を救った最高の男の子への、私からの特別なご褒美よ」
「誰も見ていないから、私の防壁の中で、たっぷり骨抜きになりなさいな」
(なんだこれ……無限に沈み込んでいく……。蘭さんの大人の匂いで、脳細胞が完全に蕩けそうだ……っ)
◆ ◆ ◆
俺を極上の膝枕で完全に骨抜きにしながら、蘭さんはカウンターの上の旧式ノートPCの画面へと視線を向けた。
画面には、イーロン・孔明の最高権限アクセス権が、彼女の構築した裏コードによって完全に監視・制御されている形跡のログが表示されていた。
時間再起動の神すらもミリ秒単位でハックし、手のひらの上で躍らせていた、この作品の真の裏の支配者(超越者)としての絶対的な余裕。
蘭さんは俺の耳元へ向けて、吐息が直接かかるほどの至近距離で顔を寄せてくる。
「最初からすべて、私の手のひらの上(シナリオ通り)よ」
クスリと艶やかに囁き、妖艶で美しいウインクをパチンと投げてみせた。
(やっぱりこの人が最強のラスボスじゃないか……)
(まあ、この圧倒的な母性の防壁に守られているなら、亡霊としてはこれ以上のディールはないがな)
李家食堂が究極の安らぎに包まれる一方で、世界の裏側では、新たな世界の覇王が動き出そうとしていた。
◆ ◆ ◆
次回予告:第48話『裏返ったチェス盤と、永遠に続くお気楽な日常(最終回オチ)』
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