第46話:限界突破チョロインの特製牛肉麺と、小悪魔のパーソナルスペースゼロ夜這い
「ほ、ほら! あんたのために手打ちしたわけじゃないんだからね!」
「護衛対象が朝からエネルギー切れで倒れたら、私のキャリアに傷がつくから……ツ、ツンツンしないで、大人しく食べなさいよ!」
小梅が顔を一瞬で耳の先まで真っ赤に変形させ、高めのポニーテールをきゅっと下に引っ張りながら、一杯の牛肉麺を差し出してきた。
器から立ち上る熱い湯気が、彼女の不器用な優しさ(極大のデレ)そのものとして俺の顔を包み込む。
牛骨とスパイスの深いコクが溶け込んだ琥珀色の紅焼スープに、表面を美しく彩る手作りの辣油。
その上には、前歯が触れただけでハラリと解れるほど瑞々しくとろとろに煮込まれた、ゴツゴツとした巨大な牛すね肉の塊がゴロゴロと鎮座している。
麺を啜れば、小梅が力を込めて手打ちした極太もちもち麺の凶悪なまでの弾力が歯を押し返し、旨味を口内に撒き散らした。
「……一生、私の安全管理下に置き換えてあげるわよ。だから、もうどこにも行かないでね」
(うまい……っ! 脳の髄までスープの温もりが染み渡る……っ。堅物SPのくせに、甘すぎるだろ小梅)
◆ ◆ ◆
「お姉ちゃんばっかり新妻マウントずるい! おじさん、今夜も私の群体AI『D.O.G.E.』に部屋の電子ロックを掛けさせて、ベッド占拠しちゃうんだからね!」
小飛がだぼだぼの青いパーカーを揺らしながらカウンターから跳び、パーソナルスペースゼロの距離感で俺の背中へと無防備に抱きついてきた。
網タイツに包まれた瑞々しく滑らかな生足の太ももを、俺の腰へと絡めるようにして密着させる日常ギャグハプニング。
だぼだぼパーカーの下に秘められた、確かな女の子としての柔らかい肉圧が、容赦なく俺の背中と腕へとベッタリ押し潰される。
俺の左目の青いレンズが、若い肉体の過剰反応を検知して、お約束のように『チチチ……』『チチチチチ……』と切ない電子駆動音を刻み始めた。
「ほらほら、おじさんのバキバキのシックスパック、今日も私がタッチパネルみたいに撫で回して熱暴走させてあげる! 冷却の素肌看病(添い寝)の準備はバッチリだよ!」
(お前は朝から距離感のバグを限界突破させるんじゃねえ! 排熱エラーが起動して、本当にまた姉妹サンドイッチにされるだろ!!)
慌てる俺たちを見つめる、蘭さんのどこか妖艶な眼差し。
その夜、李家食堂は昼間の喧騒とは異なる、静謐で過激な大人の時間へと変貌を遂げようとしていた。
◆ ◆ ◆
次回予告:第47話『泣きぼくろトントンと永遠の聖域、そして裏の支配者のウインク』
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