第40話:死神の単独ラストハック覚悟と、陰湿なる仲達の最終暗号防壁
志明は冷徹な死神の瞳の奥に静かな意思を宿し、絶望にフリーズする大人たちの前に一歩を踏み出した。
無言のまま、中央の量子キーボードへと、その引き締まった両手を静かに構える。
これこそが、イーロン・孔明と結んだ契約――『作戦コード:クロノス・ゼロ』の最終フェーズだった。
歴史の書き換えを完了させ、世界を救う代わりに、自分という存在のすべての記録と生命を歴史の暗闇へと完全に消滅させる、単独ラストハックの覚悟。
誰にも認知されず、誰の記憶にも残らない透明な亡霊(GHOST)として、一人で全ての泥を被って消え去るための、静かな戦いだった。
志明の左目の青いレンズが、最後の命の灯火を燃やすように、かつてないほど深淵な輝きを放ち始めた。
(遥の未来は救った。そして今、李家食堂の温かい日常も完璧に買い戻す)
(……そのための代償なら、俺の戸籍も栄誉も、この命ごとゴミ箱に捨ててやるさ)
◆ ◆ ◆
志明の指先が量子キーボードに触れた、まさにその瞬間だった。
彼の網膜上に、人類の演算能力では解除不能な漆黒の『最終量子暗号防壁』が、巨大な絶望の壁となって立ちはだかった。
習孟平の裏でチェス盤を弄んでいた真の宿敵、ロシア大統領のウラジーミル・仲達が、中枢システムに仕掛けていた陰湿な最終呪術プログラムだった。
悪意に満ちたウイルスコードがミリ秒単位で志明のイーロン・リンクを逆侵食し、脳の奥底へ直接マグマを流し込まれるような激痛が襲う。
脳が直接焼き切れるような灼熱の痛みに、バキバキに引き締まった全盛期の肉体が激しく血を噴き出しそうになる。
志明の視界が、急速にモノクロの死の世界へと塗り潰されていった。
「ハハハ! 亡霊よ、私の仕掛けた暗号は数百年単位の演算を要する!」
「届かないな、君のその薄汚れた指先では、世界の破滅を止めることなど――」
仲達の冷酷な音声ログが脳内で嘲笑うように響き、志明の意識が急速に混濁していく。
(ぐっ、ああ記ああああ……っ!! 脳が、完全に溶解を始めてやがる……っ!)
(防壁の構造が、複雑すぎて先読みのコードが間に合わねえ……っ!)
◆ ◆ ◆
次回予告:第41話『共犯者の細い指先(確かな体温)と、弟子と群体AIの逆探知一撃』
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