第27話:決壊した特別警護官の堤防と、雨のホテルの胸ぐら激突
志明のどこか晴れやかで、しかし一人ですべての泥を被って歴史の闇へと消滅しようとする亡霊の横顔。
それを至近距離で察してしまった瞬間、小梅の胸の奥で、これまで必死に維持していた理性の堤防が限界を迎えて音を立てて決壊した。
安全管理の言い訳も、国家安全局特別警護官としての規律も、すべてが彼女の激しい感情の濁流の前に押し流されていく。
彼女は羞恥と激情で耳の先まで真っ赤に変形させ、大粒の涙をその神聖な瞳からボロボロと溢れさせた。
銀座の冷たい雨水と熱い涙が混ざり合い、彼女の白い頬を伝って容赦なく落ちていく。
「……なんで。なんでそんな、綺麗に笑って消えようとするのよ……っ」
かすれそうな、だが明確な怒りと悲しみを孕んだ声が、雨の交差点のノイズを切り裂いた。
(小梅……? なぜ泣く。敵の脅威は去ったはずだろ、お前がそんな涙を流す必要は――)
俺が死神の思考を巡らせる暇もなく、彼女は俺の腕を強引に引っ張り、その場から激しく駆け出した。
◆ ◆ ◆
銀座の雑踏を離れ、あらかじめ手配していた隠れ家ホテルの薄暗い一室へと逃れ込んだ、その直後だった。
小梅は室内のドアが閉まった瞬間に弾かれたように突進し、両手で俺のテックウェアの胸ぐらを強く掴んだ。
そのまま、全盛期の男の肉体すらも圧倒する凄まじい力で、俺を背後の壁へと激しく叩きつけた。
ドンッ!!
完全なる逆壁ドンの激しい衝撃が、ホテルの静まり返った室内に重く響き渡る。
冷たい雨でびしょ濡れになり、肌へ限界まで艶めかしく吸い付いた紺色タイトスーツが、彼女の驚異的な肉圧の躍動に耐えかねて悲鳴を上げた。
ギチ……ギチギチ……と生々しい軋み音が響くなか、首元まで厳重に上がっていたはずのジッパーが、肉の圧力で『ジジ……』と数センチ引きずり下ろされる。
そこから、シャワー上がりのような熱い湯気と共に、覗く鎖骨の眩い白さが、一瞬にして俺の視界を狂わせた。
完全な密着状態。目の前で重なるのは、熱く、そして激しく震える小梅の吐息。
彼女のこぼれんばかりの豊かなGカップの胸の柔らかさが、俺のバキバキに引き締まった胸板に、一切の隙間なくベッタリと形を変えて押し潰されていた。
「逃げるな朴念仁! 私の目を真っ直ぐ見なさいよ……っ!」
涙で視界を滲ませながら、小梅は壊れた人形のように俺の胸ぐらをギチギチと締め上げていく。
(お、おい待て、小梅。スーツの軋む音と、肌を通して伝わる肉圧の破壊力が近すぎるだろ……っ!)
(なんだこの、今にも張り裂けそうなほどの……狂おしいほどに熱くて強い体温は……っ!)
目の前の少女から放たれる圧倒的な感情の熱量に、俺の冷徹な理性の防壁は、今まさに根底から揺るがされようとしていた。
◆ ◆ ◆
次回予告:第28話『「私を選びなさいよバカァ!」と、真のメインヒロイン誕生』
(次号、第六章大団円! 「過去の亡霊なんかじゃなくて、今あんたのために泣いてる私を見て!」小梅の魂の叫びが志明の理性を完全爆破! 強引に抱きしめられる正妻の温もり、そしてクローゼットの陰から小飛も乱入して――!?)
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