第23話:熱暴走の強制アラートと、狂おしい嫉妬の正妻魂
触れ合っている胸元からダイレクトに伝わる、志明の男としての凶悪な熱量と抗えない体温。
小梅の胸の奥で、先ほどまでの置いてきぼりの寂しさは一瞬でお色気のパニックへと書き換えられ、彼女の心拍数は限界突破へと突入した。
二人の未知の感情パラメータの爆発を検知し、志明の左目の青いレンズが、完全な暗闇の中で妖しく発光し始める。
『チチチチチ……!』と、焦りの電子駆動音が狭い密室のなかに大音量で鳴り響いた。
ピピッ、と脳内で最悪のエラー音がけたたましくアラートを刻む。
『警告:感情パラメータの急上昇により、イーロン・リンクが熱暴走。脳の強制冷却が必要です』
灼熱のマグマが脳細胞を直接焼き切るような激痛が走り、全盛期の若くしなやかな肉体が一瞬で完全沸騰する。
凄まじい高熱の前に志明の身体からすべての力が抜け落ち、意識が急速に遠のいていった。
(熱い……っ! 脳みそが沸騰する……っ! おい小飛、お前の群体AIの忖度ロックのせいで、俺の命の灯火が本当に消えそうだぞこれ……っ!)
◆ ◆ ◆
あまりの高熱に意識を失い、前のめりにドサリと倒れ込んだ志明の身体を、小梅は驚きながらも、自身の両腕で優しく抱きとめてしまった。
その結果、完全に脱力した志明の顔面は、薄いYシャツ越しでも生々しくわかる、小梅の驚異的に柔らかく温かい胸の谷間へと、完璧に埋もれる形になった。
「ひゃうんっ!? ど、どこに顔を埋めてるのよこの変態朴念仁……っ!」
小梅は耳の先まで真っ赤に染まり、暗闇のなかで涙目を浮かべて身をよじる。
しかし、自らの柔らかな肌を通じて、彼の脳から発せられる圧倒的な熱を吸い出し、強制冷却していく。
それは、元世界最強の軍医である母親・蘭から無意識に受け継いでいた、脳神経看病技術の形だった。
(違うんだ……下心じゃない……っ! この最高にいい匂いのする柔らかいオアシスに包まれて吸熱してもらわないと、本当に死ぬんだ……。いや、口に出したら変態の言い訳だなこれ!!)
彼の命懸けの熱量を自らの肉体で受け止め、必死に看病していくうちに、小梅の胸の奥には、切なくも確固たる覚悟の炎が灯っていた。
さっきの、彼の寂しげで遠い目。
あんな、もう触れることすらできない過去の誰かじゃなくて、今、あんたの隣でこんなに心臓を鳴らしている私だけを見てほしい。
完全な暗闇の密室のなか、小梅は志明の頭を自身の豊かな胸元へさらに強く抱きしめた。
狂おしいほどの独占欲の種火を、その絶対の正妻の魂へと宿すのだった。
◆ ◆ ◆
お邪魔AIが仕掛けた暗闇の密室監禁ハプニングにより、陸志明の擦り切れた死神の魂は。
過去の亡霊から「現在の確かな体温」へと、無自覚なままその天秤を大きく傾け始めていた。
(第五章・完)
◆ ◆ ◆
**次回予告:第24話『新章突入! 大陸の包囲網と、闇夜のサイバーキャットスーツ』**
**(次号、第六章開幕! 恋心と独占欲を極限まで尖らせた小梅の護衛が、さらに過激に過保護化!? 魏の第二陣営が仕掛ける深夜の急襲を迎え撃つため、彼女が身体のラインを極限まで強調した黒の「サイバーキャットスーツ」を身にまとって夜の闇を舞う――!?)**
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