第17話:湯煙のゼロ距離吸着戦術と、命懸けの吊り橋効果
「動かないで……敵の索敵センサーが、すぐそこまで来ているわ」
小梅が微かな吐息で囁き、俺の胸板へと自身の身体を限界まで押し付けてきた。
敵の目を欺くための、不可抗力な隠密密着戦術である。
生暖かい夜風と湯気のせいで、二人の肌は汗で濡れ、バスタオルすら挟まないサイバー水着越しに、お互いの生々しい肉体の輪郭がピタリと隙間なく吸着してしまう。
小梅の驚異的に豊満なGカップの胸の柔らかさが、俺の引き締まった腹筋と胸板に、形を変えてこれでもかと平たく押し潰された。
ギチ……ギチギチ……と。
特殊繊維の水着が、二人の凄まじい肉圧の逃げ場をなくし、密かに悲鳴のような軋む音を響かせる。
(お、おい待て! 湯気と湿気のせいで、いつもより肌の温もりと柔らかさが、ダイレクトに脳に響いてきやがる……っ!)
(敵の足音より、至近距離で早鐘を打つこいつの心拍数の方がうるさいぞ……!)
湯煙のなかで交錯する熱い吐息が、俺の全盛期の若すぎる肉体の温度をさらに引き上げていく。
◆ ◆ ◆
その時、岩の隙間から工作員の一人が銃口を突き出してきた。
暗闇のなか、一閃の銃撃が放たれる。
俺は死神の直感で、小梅を庇うように自らの全盛期の若い肉体を無造作に投げ出した。
(デバイスの演算じゃない。泥水をすすり続けたゲリラ時代の、死線が生んだ野生の超感覚だ……っ!)
ドンッ、と迫る銃弾の軌道を体術だけで紙一重で躱し、そのまま小梅の身体を強く抱きとめる。
チートデバイスの演算に頼らず、身を挺して自分を死守してくれた俺の容赦のない男気に、小梅の胸は張り裂けんばかりに激しく跳ね上がった。
極限状態の恐怖と、間近で感じる男の確かな体温が融合し、強烈な吊り橋効果の暴風雨が吹き荒れる。
それが、小梅の氷の理性を内側から一瞬で粉々に融解させていく。
小梅は顔から耳の先まで真っ赤に染まり、俺のテックウェアの胸元を、細い指先でギチギチと強く掴み返すことしかできなかった。
(今までどんな訓練を受けてきたって……こんなの、私の防壁が耐えられるわけないじゃない……っ)
遠くのビーチからは、いよいよドナルドの咆哮と高市大臣の緑の一閃が炸裂したような、凄まじい地鳴りが轟き始めている。
しかし、お色気とシリアスが完全に交錯する臨界点の温泉のなかで、二人の心拍数は大人の無双を置き去りにして加速し続けていた。
◆ ◆ ◆
次回予告:第18話『着地事故の温泉パニックと、氷の美少女の恋心完全自覚』
(次号、第四章大団円! 復旧した通信回線の悪ノリで、イーロンの仕込んだ最悪の「スケベ着地バグ」が強制起動!? 湯船の中で正面衝突する二人の肉圧、および小梅の胸に灯る「本当の気持ち」とは――!?)
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