11話
「番場たちが食料調達に行ってんだけどよ。血抜きっていうのはいつすりゃいいんだ?」
「早ければ早いほど良かったと思う。死んで十五分くらい経っちゃうと、確か臭みが消えないって。早いなって思ったんだよね」
「よおっ、だったらこっちから行かねーと間に合わねーんじゃねーか?」
「いつもは狩った先でバラしてるからな」
「じゃあ、行くか。日向いいか?」
「あ、うん、大丈夫」
「えー、俺この後、野草散策だぜ、俺もそっちでいい?」
「良いわけあるか、ちゃんとルールを守れ」
「ガキじゃねーんだ、日向、柏木いなくても平気だよな」
「う、うん、大丈夫、柏木くんも頑張って」
「あいよー、ミナトン勝負だな。どっちがうまいの持ってくるか」
「何言ってやがる。毒キノコばっか持ってきやがったくせに」
「毒キノコ?どうしたの、それ」
「3人くらいぶっ倒れてたな。次の日には起きてたけどよ」
「だから、大丈夫だって言ったろ?」
「当たってねーのおめーだけだからな。食ったやつは全員ぶっ倒れてんだよ」
「根性ねーんだよ」
「根性でどうにかなるか、今日はまともなもん持ってこいよ。最悪、日向は死ぬぞ」
「だ、大丈夫だよ。僕だってそんなに弱くないし」
全員の視線が湊に向く。
「あー、気ぃつけるわ」
「柏木くん?」
「行くぞ、日向」
湊を含めて四人で番場のところへ向かうことになった。
森の道は皆が通るたびに踏みならしたのか、結構歩きやすかった。
だから、番場たちを見つけるのにそれほど時間はかからなかった。
小高い丘の上には、番場を含めて五人いた。
湊たちを見つけると、声を張り上げる。
なんて言ってるのかは聞き取れなかった。
慌ててることだけは分かって、湊の隣の不良が周囲を見回す。
不自然に大木が根元から折れている。
よく見ると、周りにはそんな破壊跡がいくつもある。
「日向、お前番場の方へ走れるか?」
「う、うん」
「こん中じゃ、あいつが一番つえー。行けっ!」
その瞬間、湊は番場に向かって走っていく。
何がなんだか分からなくて、がむしゃらに走った。
その時、茂みから何かが飛び出してきた。
怖くて下を向いていたので、湊はそれを見ていない。
ただ、おでこの少し上の所にかなりの衝撃が走った。
何かに当たったとわかった時は数メートル後方に吹っ飛び、木々をなぎ倒していた。
湊は気づいたら空を見ていた。
驚いて心臓が痛い。
汗がブワッと噴き出してくる。
息も荒い。
遠くから誰かの叫ぶ声が聞こえた。
キーンという耳鳴りがして、声は水の中にいるようにくぐもって聞こえる。
けれど、たぶん怪我はしていない。
ちょっとくらくらするけど大丈夫。
それでも、立ち上がろうとしたら足がかくかくした。
ただ、これはダメージというより怖くて足が震えてるだけで、少し恥ずかしい。
湊はまだ何があったか理解できなかった。
「おい、すぐに立ち上がったぞ」
「信じらんねーな」
「あいつ、何で恥ずかしそうなんだ?」
「固すぎねーか」
「そういう問題じゃねーだろ」
「出会い頭に当たったバケモンがまだ目ぇ回してんぞ」
不良たちの方を見ると、指を差して何かわーわー言ってる。
耳鳴りが酷くてよく聞こえなかった。
指している方を見ると、巨大な熊型の魔獣が倒れていた。
湊は不良たちに向かって大きく頷く。
とことこと近づいて、不良に渡されていたサバイバルナイフを取り出し、喉元をスパッと切り裂いた。
「「「!?」」」
湊は急いで丘の傾斜に沿って魔獣の頭を下にする。
血がだくだくと流れるのを見て、湊は満足げに頷き、不良たちに向かって手を振った。
しかし、誰も目を合わせてくれなかった。
血があらかた流れ出たのを確認して、魔獣を横倒しにする。
内臓を傷つけないように慎重に、お腹をゆっくり縦に割いた。
魔獣の背中側から体を押し当て、体重をかけると、ぼとぼとと内臓がこぼれ落ちた。
「何をしてる」
声をかけてきたのは番場だった。
「あの、お肉が臭いって聞いて、僕が血抜きをすることになって」
「そうじゃない、逃げろと言っただろう」
「えっ?」
「聞こえてなかったのか。いや、それにしても危険だろう。なんともないのか?」
「少しくらくらしたけど大丈夫」
「あれと、正面からかち合って、少しくらくら……」
「あの」
「なんだ?」
「解体していいですか?」
「お前は……もういい、解体は俺達がやる。このままだと日向だけしか働いてないことになるからな」
「そんなこと」
「あっちに小さい池がある。血を洗い流してこい」
番場に言われて、湊は不良たちの所へテテテと駆け寄っていった。




