話題を変えよう
話題を変えよう。
共通の話題。
「滝川さんって戦闘機が好きなの?エースコンタクトが好きなの?」
滝川さんの眉間に皺が寄る。
「…なんで急に〜?」
(話逸らさないと収集つかなくなるからだよ!)
「僕は保育園の時から乗り物が大好きで、その延長線だったから、滝川さんはどうだったのかな〜って」
「…滝川は小学生の頃に航空祭に連れて行ってもらってからです〜」
「航空祭!?マジで!?どうだった?」
「人が〜…多かったです〜…でもF-2とか〜15の機動飛行がバッチリと見えました〜」
「おお!」
「でも〜…」
「でも?」
「音がバケモノ過ぎてずっと泣いていました〜…」
「戦闘機ってバカ爆音って言うもんね…」
たまに上空に飛んでいるF-15を見かけるけど、あれは本当に高い場所を飛んでいる、あの距離でさえも割と音が大きいのだから…。
「エンジンかかってからの時が一番やべ〜です、キーーン音が大きすぎて耳が壊れます〜」
やっぱそんな凄いんだ…」
「凄いです〜…割と近くを飛ぶので、その音はお腹にドンッて来ます〜…」
「へぇ〜…」
僕は航空祭に行った事がない。
戦闘機自体は好きだけど…
動画とか、本とか、ゲームとか、そういうので触れてきた側だ、だから実際見た人の話は普通に面白い。
「でも滝川、途中からちょっと慣れてきて〜…」
「うん」
「F-2飛んだ時、うわ青い〜!!ってなりました〜」
「そこなんだ」
「だって綺麗なんですもん〜」
滝川さんは手で飛行機が飛ぶみたいな動きをしながら楽しそうに続ける。
「あと、帰りの売店で戦闘機のキーホルダー買ってもらいました〜」
「小学生だなぁ…」
「小学生ですもん〜」
「そっか」
さっきまでの空気と違って、今は妙に穏やかだった。
「三田さんは〜?」
「ん?」
「直で戦闘機見た事は〜?」
「ないね」
「勿体無いです〜」
「そんな事言ったって…」
家庭環境とか色々あるやろ!
「…保育園の頃からたまーに上空を飛んでいるF-15を見るのが好きでね…」
「かわいいです〜」
「何が?」
「ちび三田さんです〜」
「想像するな」
小さな頃からクソガキでしたよ。
「ちび三田さんに会いたいです〜…」
「タイムスリップでもすれば…」
「どうやったら出来ますか〜?」
「知らない」
知ってたらとっくにやってるよ。
「あ〜!良い方法があります〜!」
「…?」
どうせくだらない事でも思いついたんだろう。
「滝川が〜…」
言い始めてまもなく、口を押さえてふふっと恥ずかしそうに笑う。
早く言えよ。
「滝川が三田さんの赤ちゃんを産めばちび三田さんに会えます〜」
「……はぁ」
思わず変な声が出た。
「……」
「……」
滝川さんは口元を押さえたまま、チラチラこっちを見ている。
「……」
「…滝川さん」
「はい〜…」
「今の、サラッと言う話じゃないからね?」
「えへへ〜…」
「照れて誤魔化すな」
「だって〜…」
滝川さんは肩をもじもじさせながら俯く。
耳まで赤い。
「なんか〜…」
「……」
「三田さんとの子供、絶対可愛いな〜って思っちゃって〜…」
「……」
「女の子でも良いですよ〜?」
「……」
滝川さんはへにゃっと笑いながら、僕の肩に頭を乗せる。
「…可愛いんだろうなぁ〜…」
なんかもう、この人の中で僕との未来が勝手に何段階か先まで進んでる気がする。
怖。
「……滝川さん」
「はい〜?」
「そういう話、普通に危ないからね?」
「?」
「仮にも命の話だよ、ものすごく無責任じゃん」
「……」
滝川さんはきょとんとしてから少しだけ首を傾げた。
「でも〜…」
「うん」
「三田さんとのなら欲しいな〜って思っただけです〜」
「……」
ダメだこの人。
ツッコミスイッチ、オン。
力は絶対入れない、埃を取るよりも少し強めに
滝川さんの頭を叩く。
ペシン
「あうっ」
「高校生の会話じゃねえなぁ!?」
「……」
滝川さんは叩かれた頭を押さえながらむぅ〜っと唇を尖らせた。
「もっと強くです〜…」
「うわキモ」
「キモくて結構です〜!」
僕が良くないんだけど…。
話題変えたのに、どうしてこうなってしまった…?
「…あと航空祭でなんか面白い事あった?」
「むぅ〜…」
不満顔、知った事か。
「航空祭に行ったのは小学生の時だけで〜…基地の近くには年に何回か行ってます〜T-4がよく飛んでます〜」
「T-4って、練習機?ブルーインパルスとかの…」
こくこくと頷く。
「T-4もそこそこ音が大きくてカッコいいです〜」
「うーん…」
「?どうしました〜?」
T-4か…。
「いや、T-4は戦闘機じゃないからなぁ…なんかなぁ…」
「実物を見たらそんな事言えなくなりますっ!」
「そうかなぁ…」
滝川さんが体重をかけてくる。
「です!!今度浜松に行きましょう!T-4が飛んでるのを見ましょう!!」
「ちょっと遠そう…」
「行きましょう!滝川と!浜松にっ!!」
圧力が…。
「滝川、今年は電車に乗って一人で行ってきました!だから三田さんも一緒に!!!!」
「何回か乗り換えなきゃでしょ…?」
「塩尻か松本で特急しなのに乗り換えて〜名古屋までいって〜それから〜新幹線で〜…」
なんか想像するだけで頭痛くなってきた。
乗り換えとかだるいし。
って、
「新幹線!?」
「はい?」
「滝川さん、新幹線乗ったの!?」
「です〜…」
この辺は田舎ゆえ走っていない、図鑑とかでよく見かけた想像上の乗り物だと思っていた。
「…新幹線って実在したんだ…」
「ええっ!?しますよ〜?」
「そっか、田舎から出ないもんで、分かんなかったよ…」
「だから一緒に行きましょって〜!旅費は滝川が出しますから!」
「滝川さん、金持ちだな…」
「え?滝川パパが不倫した慰謝料で…」
「あっーー!!!!ダメダメダメ!!!!」
そうだった、そういう家庭だったんだ…。
「?」
滝川さんは何故?みたいな顔をしている。
本人は気にしてなくても結構な案件なんだけどな…。
「それか〜…滝川ママに連れて行ってもらいましょ〜」
「えぇ〜…」
気まずいよ。
家庭環境を聞いてるから余計に…。
「でも〜ママ邪魔ですね〜二人きりがいいですね〜」
「ママに邪魔言うなよ!!」
「だってぇ〜…」
滝川さんはむぅ〜っと頬を膨らませる。
「せっかくなら恋人っぽい事したいです〜…」
「浜松まで行って恋人っぽい事って何…」
「手繋いで歩いたり〜」
「まあそれくらいなら…」
「ホテル泊まったり〜」
「うわっ!」
「きゃっ♡」
なんで嬉しそうなんだ。
きゃっ♡じゃねえよ。
「……」
滝川さんは肩を揺らして笑っている。
「三田さん、今うわっって顔しました〜」
「したし言ったよ」
「えへへ〜♪」
「というか高校生だけで遠出って結構ハードル高いからね?」
「滝川、一人で行けました〜」
「行動力バグってるな…」
「愛です〜♡」
「何に対する?」
「戦闘機です〜♡」
なるほど。
「…でも」
滝川さんは少しだけ真面目な顔になる。
「三田さんと一緒に行ったら、絶対もっと楽しいです〜」
「……」
「好きなもの一緒に見れるの、嬉しいじゃないですか〜」
「まあ…」
それはちょっと分かる。
「あと滝川、三田さんが初めて新幹線乗る瞬間見たいです〜」
「子供扱いするな」
「絶対キョロキョロします〜」
「田舎者を舐めてるな??」
「速っって言います〜」
「言わない」
「お弁当買ってテンション上がります〜」
「…それはちょっとあるかも」
「ほら〜!!」
滝川さんは嬉しそうに身を乗り出してくる。
「じゃあ行きましょうよ〜浜松〜♪」
「……」
正直ちょっと楽しそうではある。
つづく




