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返事は




僕はまた頭を掻く。


引き伸ばされてるから僕も割と吐きそうなくらい緊張している。


逃げるな。


ここまで来たんだから。


滝川さんは座りながら目をカッと見開いて僕の方を見つめている。


でもその目つきはおおよそこの場に似つかわしくないと思う…。



「…だから、その…まあ、単刀直入に言うと…」


「……」


「…僕も、君の事、かなり好きなんだと思う」


滝川さんは




目を見開き、数秒の停止。




そして。




「し、死ぬです〜…」


そのままコテンと倒れた。


「ええっ!?!?」


大股開き、パンツ丸見え。


「ちょっ…ちょっと!!!!」


慌てて僕は視線を逸らす。


「滝川さん!?生きてる!?」


「…むりです〜…」


地面に転がったまま、か細い声。


「心臓が破裂します〜…」


しかも本人、倒れた衝撃でスカートぐちゃぐちゃである。


見ないようにしてるのに視界に入る。


困る。


めちゃくちゃ困る。


「と、とりあえずスカート直して!足閉じて!!」


「……?」


滝川さんが、


ぽけ〜っとした顔でこっちを見る。


数秒遅れて、自分の状態に気付いたらしい。


「…っっ!!」


バッ!!と膝を閉じた。


そして、顔を真っ赤にして丸まる。


「お、終わりです〜〜〜〜〜!!!」


(一応その辺の羞恥心はあるのね)


「好きな人の前でこんな姿を晒すヒロインいますか〜!?!?」


「特定のコンテンツだとよくあると思う!ある程度までイベントを進めれば!」


滝川さんは地面でじたじた暴れている。


完全に情緒が壊れてる。


とりあえず起き上がれば良いのに…と思った瞬間にムクりと起き上がった。


「…三田さん、それは…滝川を三田さんの女にするって事で相違ないですか?」


そうか、僕の導き出した答えはつまりは


「僕の女って…嫌な言い方だけど、相違ないよ」


そういう事だ。


「……」


滝川さんは、数秒固まったまま僕を見つめていた。


そして。


ゆっくりと近づいてきた。


「…滝川さん?」


無言。


止まらない。


なんか目が据わってる。


「ちょ、待っ――」


次の瞬間。


ガバッ!!


「あいたっ!?」


ゴチン!!


後頭部を壁にぶつける。


「っ〜〜〜〜!!」


普通に痛い!!


滝川さんは僕の肩口に顔を埋める。


「……」


「…滝川さん?」


「…無理です〜…」


(何が!?)


声がくぐもってる。


「…嬉し過ぎて頭おかしくなりそうです〜……」


「普段からだいぶおかしいよ」


「今までは片想いだからまだ我慢してたんです〜…」


「……」


「でももう無理です〜…」


ぎゅううう。


抱き締める力が強くなる。


苦しい。


でも、なんか振り払えない。


「ちょ、滝川さん、苦し」


「三田さん、好きです〜…」


「……」


「大好きです〜…」


耳元。


近い熱いあと良い匂いする。


心臓に悪い。


でも思い返せばこんな経験、ここ数日でほとんど毎日あったんだよな。


「……」


「三田さんも滝川の事好きなんですよね〜……?」


「…うん」


「両想いです〜…」


「…そうなるね」


「うへへ〜…」


何だその変態みたいな笑い方は。


完全に限界突破してる。


でもその声が、びっくりするくらい幸せそうで。


「……」


僕は壁に頭をぶつけたまま、なんかぼーっとしてしまった。


あ、これ。


もう、付き合ったんだ、滝川さんと。


その感覚は思っていたよりもアッサリとして、でも重く重くのしかかってくるようで。


だって普段からこんな感じだったもん、でも違うのは。


「ッ!?」


僕も確かな力で滝川さんのことを抱き返すってトコかな。


滝川さんの身体が腕の中でビクッと跳ねた。


分かりやすいくらいの反応。


「……」


「……」


そして。


滝川さんは腕の力を緩め、僕の顔を覗く。


目が合う。


滝川さんは、信じられないものを見るみたいな顔をしていた。


「…三田さんから来たぁ〜…」


「…まあ」


「……」


数秒停止。


その後。


「む、無理です〜…」


再び顔を肩に埋められた。


(さっきから無理無理言い過ぎなんだよな)


ぎゅうううう。


締め付けられる。


「ぐぇっ」


滝川さんは、完全に壊れた声で言う。


「今まで滝川ばっかり好き好きしてたのに〜…!」


「…まあ、合法的に、当然の権利だし…」


「…じゃあ〜…チューしても良いんですよね?」


「ええっ…!?」


「ダメなんですか〜??」


露骨にしょんぼりする。


「……」


ズルい。


その顔はズルい。


滝川さんは、じっと僕を見つめたまま、


少しずつ顔を近づけてくる。


逃げ場がない。


そもそも背中は壁だし。


「……」


「……」


近い。


近いよ、近過ぎる。


吐息が当たる。


滝川さんの睫毛まで見える。


「…三田さん」


「…なに」


「滝川が無理矢理チューしても、合法ですよね〜?」


「…まあ、そうなるのか…な」


笑ってるのに、声が少し震えていた。


そして。


「…逃げないでくださいね〜…?」


「……」


(そもそも逃げ場がないんだって…)


滝川さんは確認するみたいにそっと僕の頬に手を添えた。


熱い。


指先まで熱い。


「…滝川、チューするの、初めてです〜…」


「いや、僕カラオケでされたけど…」


「あれはおでこです〜…今は〜…お口です〜♡」


「えっ…お口!?」


「……」


「……」


あと数センチ。


「…三田さん」


「……」


「好きです〜…」


その声が、妙に優しくて。


滝川さんは少しだけ顔を傾ける。


距離がゼロになる。


柔らかい感触が、唇に重なった。


「……っ」


滝川さんの指先が少し震えてるのが分かった。


僕も多分震えてる。


やがてゆっくり離れる。


「……」


「……」


近いまま目が合う。


滝川さんの顔は真っ赤だった。


でも。


「…へへ〜…」


すごく、幸せそうに笑った。


「…チューしちゃいました〜…」


「うん…」


…なんだか、意外と、呆気ないものなんだな…と思った。


物足りないと言うか、実感がないと言うか…。


「……」


「…三田さん〜?」


滝川さんが少し不安そうに僕の顔を覗き込む。


「……」


「…あの〜…」


さっきまであんなに浮かれていたのに、急におずおずし始めた。


「…もしかして、嫌でした〜…?」


「えっ!?違う違う!」


慌てて否定する。


滝川さんは、ちょっとだけホッとした顔をした。


「じゃあ何ですか〜…?」


「…いや、その」


言葉に詰まる。


でも。


正直に言うしかない気がした。


「…なんか、もっと凄いものかと思ってた」


「……」


「キスって、もっとこう…世界変わる感じなのかなって」


「……」


滝川さんはぱちぱちと瞬きをしたあと。


「…ぷっ」


吹き出した。


「な、何」


「三田さん、なんか可愛い事言ってます〜…」


「何が…!?」


滝川さんは、くすくす笑いながらまた少しだけ顔を寄せてくる。


「でも〜…」


「?」


「滝川は、世界変わりましたよ〜?」


「……」


「だって今、三田さんと両想いですし〜…彼氏ですし〜…チューもしましたし〜…」


その度に自分で言って照れてる。


忙しいなこの人。


「だから〜…実感ないなら、もっとします〜?」


「っ!?」


「そしたら、分かるかもしれません〜♡」


「いや待っ――」


逃げようとした(逃げられない!)瞬間。


また顔が近づく。


「待ちません、滝川、まだ全然足りません〜…」









滝川さんは


「滝川に着いてきて下さい〜♡」


と僕の手を引いて、引かれるがままにある場所へ到着した。


「…で、なんでここなの…?」


「二人きりになれるので〜♡」


いや、カラオケじゃん。


「それにおめでとう会も出来ます〜♡」


だから、カラオケじゃん、この前来たばっかじゃん。


「交際記念会も出来ます〜♡」


どんな会じゃ、それに、カラオケ部屋でやらなくても良いじゃない。


あと偶然にも前行った部屋と同じ部屋だぞ…。


                    つづく

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