敵のエース部隊
対戦相手、いや、敵のエース部隊は既にコートにいる…って
「また君たちか!?」
まーちゃんと野村さん。
「またって言うな!たまたま空いてたんだから良いでしょ!?」
「左様、川中島の合戦に比べたら…」
「歴史バカはうっせえ」
この前は滝川さん一人で勝ったからな、今回は僕も加点に貢献しないと!!
「でも君たちってアレだね」
「「??」」
まーちゃん野村さんが同時に首を傾げる。
「便利なキャラだよね、こういう場面で出てきて、話になんの悪い影響もないし」
「キャラ?話?なんの事?」
「いや、こっちの話だよ」
「怖っ」
野村さんが半笑いになる。
すると滝川さんが、すっと前に出た。
「隊長〜」
「ん?」
「敵エース部隊です〜号令を〜」
「…ミタ1より各機、野犬狩りだ、全機落とすぞ」
「了解っ♪」
滝川さんは嬉しそうにラケットを構える。
(くぅ…ずっと言ってみたかったセリフが言えた…)
ジーンとした。
対する野村さんは、呆れた顔をした。
「…ねえ河上君、なんかこの二人だけ別の世界行ってない?」
「うむ、電子に脳が破壊されている、ゲーム脳だ…だが、」
「そんな言い方するなよ…」
そしてまーちゃんが、スッとラケットを掲げる。
「ならば我らも名乗らねばなるまい…我こそは武田軍、山県昌景!!武田の赤備えに恐怖するのだな!」
「君は河上昌景だろ、いつ山県になったんだよ、あと僕たちのジャージは青だ、赤備えの要素一個もないよ」
「うつけが!!些細な事だ!!」
まーちゃん、僕の軽口に結構ムキになってる。
些細な事でもないだろ…。
野村さんはもう笑っている。
「じゃあ私はその辺の馬で」
「…まーちゃんに乗られるの…?愛馬?」
「っ!?」
野村さんの顔がわかりやすく一気に紅潮する。
まーちゃんは無反応。
この対比が面白い。
すると、
「お前ら能書きが長えんだよ!マジでさっさと試合始めろ!!」
先生の怒号が体育館に響いた。
「「「「すみません!!」」」」
周囲の視線がちょっと痛い。
でも、なんか笑ってる人もいる。
「では〜」
滝川さんがシャトルを軽く弾く。
「ミタ2エンゲージ(交戦)〜」
「ミタ1、後方援護に回る」
「えっ、三田君また置き物なの?」
「違うよ!今回は!!」
まーちゃんはラケットを構えながらニヤリと笑った。
「良かろう…ならば武田騎馬隊、参る!!」
「バドミントンで騎馬隊って何」
「貴様らも同じようなものだ!!隊長だの、意味が分からんぞ!!」
本当に僕らはアホだ。
高校生男子女子が体育館で何をやってるんだ。
でも。
「……っ」
笑ってしまう。
楽しい。
昨日までのモヤモヤとか、
変な不安とか、
今だけはかなり薄れていた。
昨日までのモヤモヤとか、
変な不安とか、
今だけはかなり薄れていた。
「では第一ラウンド〜」
滝川さんがサーブ位置につく。
「ミタ2、発艦します〜♪」
「空母からなのね」
「なんかそれっぽいので〜」
ポン、とネットギリギリでシャトルが打ち上がる。
その瞬間。
まーちゃんが突撃してきた。
「参る!!」
「うるさっ!?」
バシィッ!!
勢いだけは全国大会レベルのスマッシュ。
なお威力は普通。
「三田さん〜!」
「おっ…!」
反射的にラケットを出す。
ポッ!
返った!
しかもちゃんと相手コートへ飛んだ!
「おお〜!!」
滝川さんが目を輝かせる。
「ナイスです〜!」
「よしっ…!」
ちょっと嬉しい。
本当にちょっとだけだけど、全然マシになってる気がする。
だが次の瞬間。
「甘いわ!!」
まーちゃんがまた叫びながら突っ込む。
「ちょっとうるさいよ!!」
「戦とは気合よ!!」
野村さんはもう笑い過ぎてラケット持ちながら震えている。
「河上君うるさ…っ、ふふっ…」
「野村ぁ!!貴様も戦え!!」
「馬にそこまで求めないで〜!」
(本当に馬でいいのね…)
カオスだ。
体育の授業とは思えない。
すると滝川さんが、前衛からひょいっとシャトルを落とした。
「あっ」
野村さんが反応出来ない。
ポトッ、と静かに床へ落ちる。
「ミタ2、一機撃墜です〜」
「くっ…やるな…!」
「流石だね滝川さん」
「えへへ〜♪」
得意げ。
そしてそのまま、僕の方へちょこんと近付いてくる。
「三田さん三田さん」
「ん?」
「ナイスプレーです〜」
「……」
「ちょっと待って」
野村さんがラケットを下ろす。
「何?」
「なんで今ので三田君が褒められてるの?」
「え?」
確かに。
今の完全に滝川さんのファインプレーだ。
「だって〜」
滝川さんは当然みたいに言う。
「三田さんが返してくれたから攻撃出来たんです〜」
「……」
「だから共同撃墜です〜♪」
共同撃墜。
その響きが妙にカッコよくて、
ちょっとニヤけそうになる。
「くっ…なんだその青春連携…!」
野村さんが悔しそうに床を叩く真似をする。
まーちゃんは腕を組み、重々しく頷いた。
「うむ…連携とは信頼…武田軍にも必要だ…」
「河上君、今バドミントンだからね?」
「黙れ雑兵馬」
「雑兵馬!?」
また笑いが起きる。
すると滝川さんが、ラケットをくるっと回しながら僕を見る。
「次も行きますよ〜隊長♪」
「う、うん」
隊長。
さっきからその呼び方だけで、変にテンションが上がる。
つづく




