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自信のつけ方



「斜めに見てるのは勝手だけど!!


滝川の気持ちまで斜めに見るな!!!!」




カラオケでブチギレた日の滝川さんを思い出す。



滝川さんの正論に何も返せなかった、でも僕も僕で怒涛のような距離感の近さ、都合が良過ぎる展開で混乱していたのは事実。


…まさかあんなに怒られるとは思わなかった。



この際自信、つけたいな。

そうなればなんの問題もない、当然の権利だもの。


自身がないからこそ出る自虐、でもそんなの周りの人、滝川さんにとっては知ったこっちゃない事だ。


さて、何か頑張ろうかな。


そうだ、バドミントンでも良い。


せっかく滝川さんから色々レクチャーを受けたんだもん、丁度今日も体育があるし、いつまでもポンコツだと呆れられちゃうね。


足を引っ張ってばかりじゃ、ダメ!


ほんのちょっとくらいはカッコ悪いところ減らしたい。


雷で泣いたし。







張り切っても何も変わらないと分かりつつも少し早足で体育館に向かう。



「え〜だから困ります〜…」


(おや…?)


「一回だけでいいって!」


「滝川さん強いじゃん!」


「ね、組もうよ!俺バド部だし」




入口付近。


数人の男子に囲まれている滝川さんが見えた。


どうやら、今日のバドミントンのペア決めらしい。


慌てて身を隠す。


「いや〜…」


滝川さんは困ったように笑っている。


でも、目が全然笑ってない。


「滝川、もう決まっていますので〜」


「三田か〜…」


「です〜」


「ていうかさ、三田じゃなくて俺らと組んだ方が絶対勝てるって!」


(うっ…!それは、そう…)


いくら僕が気合いを入れようと即、上手くなる訳じゃない。


「……」


その瞬間。


滝川さんの空気が少し変わった。


ふにゃっとした笑顔のまま。


声だけちょっと真っ直ぐになる。


「…勝ち負けじゃなくて、三田さんと組みたいから組みます」


(滝川さん…)


「今日だけだから、俺からも三田に頼むからさ、ね?」


「……」


胃がキュッとなった。


確かに、客観的に見たらそっちの方が合理的だ。


滝川さんは上手い。


僕は初心者。


どう考えてもまた足を引っ張る。


だから、もし滝川さんがそっちを選んでも何も文句は言えない。


「……」


でも。


滝川さんは即答した。


「三田さんだって滝川と組みたいって言ってました、もう予約済みです」


(言ってない言ってない、予約もしてないよ?)


空気が少し止まる。


滝川さんは、今度ははっきり相手を見る。


「滝川、これからも三田さんとやるので〜」


「……」


「だからごめんなさいです〜」


柔らかい口調なのに、


全然譲らない。


男子達も流石に諦めたのか、


「うわ〜一途〜…」


「三田羨まし…」


とか言いながら散っていった。


「……」


取り残された僕は、なんか変な汗が出ていた。


でもちょっと嬉しかった。



そして滝川さんがキョロキョロし始めた時にはもう、間に合わない、手遅れだった。


「あ〜!!」


笑顔の戦闘機(?)に見つかった。


滝川さんは両手を垂直に広げてこちらに向かってくる。


本当に戦闘機じゃん。


「三田さん発見〜♪」


「発見の距離じゃないよ…とっくに撃墜されているよ…」


「木っ端微塵です〜」


「ひどいな…」


「三田さん、さっきの見ていました〜?」


「…まあ」


「えへへ〜」


なんで嬉しそうなんだ。


「いやでもさ…」


僕は少し声を落とす。


「別に、ああまで断らなくても良かったんじゃないの」


「?」


滝川さんはきょとんとする。


「だって滝川、三田さんと組みたいです〜」


少しだけ頬を膨らませる。






そして授業開始。


「はいはい、ペア決まった人から整列〜!

試合はバンバン回していけよ〜!」


体育教師の声が体育館に響く。


一気に周囲が慌ただしくなる。


(よし、やるか…)


「行きましょ〜三田さん」


滝川さんは当然みたいに僕の隣へ走って来る。


「三田さん、今日はいっぱい打ちましょうね〜」


「…お手柔らかにお願いします」


「大丈夫です〜」


滝川さんはラケットを軽く回す。


「滝川、ちゃんとサポートしますから〜」


「…うん」


今日は、マジで、ちょっと頑張ろう。


「ミタ隊、出撃!です〜」


「おっ、エースコンタクト5みたいだね」


「ですです〜存在しないはずの部隊、カッコいいです〜」


「敵からしたら怖いよね〜真っ黒の機体が襲いかかってくるんだから…」


と、一瞬バドミントンの事を忘れ、談議に熱が入ってしまう。


「今日のバドミントンは、エースコンタクトの世界観でやってみましょ〜」


「ん?」


「対戦相手は敵のエース部隊です〜」


ほう、それはエースコンタクトごっこをバドミントン中にやれ、と。


「…それ、メチャクチャ面白そうじゃん!!」


「でしょ?でしょ〜?」


テンションが上がりお互いがお互いの周りをぐるぐると回る。


側から見たら普通にアホ。



滝川さんはケラケラ笑う。


僕も笑ってしまう。


なんだこれ、


楽しいな。


「作戦内容を伝達します〜」


「おう」


「滝川が前衛で暴れます〜」


「頼もし過ぎる」


「三田さんは後ろから援護してください〜」


「了解、誤射には気を付ける」



すると、


「おーいお前ら、小学生みたいに遊んでんじゃねえよ!空いてんだから試合しろ試合!」


先生のツッコミが飛んできた。


「「あっ」」


(小学生みたいって…確かにそうだけど…)


「ミタ隊、スクランブル発進です〜!」


滝川さんの掛け声と一緒に


「!」


慌ててコートへ走り出した。



                     つづく

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