テンション上がる
エースコンタクト、最後にやったのは何ヶ月も前だけど、実際の知り合いとやれるのは正直、熱い。
でも交換条件に応じるのは癪だ。
ましてや滝川さんをユキちゃん呼びなど。
アレはふざけて呼ぶから良いのであって、本人が期待している上で満を持して呼びたくない。
…一緒にプレイは諦めるか。
「…分かった」
「おっ?」
「一緒にやるのは諦めるよ」
「なぁーんでですか〜!!」
肩をぽかぽか叩かれる。
「でもエースコンタクトの話をするのは良いでしょ…?」
「えぇ〜…」
「良いでしょ…??」
滝川さんの顔を焼き尽くさんばかりの圧を込めた自負はある。
「うぅ〜…」
勝ち誇った顔をしていたけど急に困った顔になる滝川さん、目が泳いでいる。
「……」
「……」
数秒の沈黙。
電車の揺れる音だけが響く。
「…三田さん、ズルいです〜…」
「何が!」
「見つめられたら〜…照れちゃいます〜…ちょっとドキドキしました〜」
「るせえ!」
「えへへ〜」
結局コロっと表情が戻った。
いつもの滝川さんだ。
「とにかくさぁ…もうエースコンタクトの話だけしようよ…」
「えぇ〜…」
「ね!?エースコンタクトの話だけ、しよ??」
「三田さんにお願いされたら〜滝川が断れないの知ってて…卑怯です〜…」
「テメー、今までさんざんゴネてただろーが」
「段々と〜口調が荒くなっています〜…滝川、ドキッとしちゃいます〜…」
確かに結構乱雑な口調になっている自覚はあるけどその反応は意味が分からない。
「…だからもう普通にゲームの話をしようって言ってるの!」
「は〜い」
やっと折れた。
てこずらせやがって。
滝川さんは姿勢を戻し、
こほん、とわざとらしく咳払いする。
「では〜」
「うん」
「三田さんの好きなミッションは〜?」
「おっ!」
キタキタ、これこれ!
思わず全身が痺れるような高揚感に包まれる。
「やっぱり一番はZEROのラストミッションだね、エンディングも含めてね!ZEROも4も敵味方問わず主人公をヨイショしまくるから、どのミッションも最高だけどね」
「わかります〜ZEROのラストはミッション開始直後から痺れますよね〜」
「マッジでそれ!!」
反射的に滝川さんの肩を掴みそうになったが、アカン。
寸前で理性が勝った。
テンション上がり過ぎていた。
でも滝川さんは、そんな僕を見てニコニコしていた。
「三田さん、すごく楽しそうです〜」
「だって今までこの話できる相手いなかったんだもん!」
「滝川もです〜」
「滝川さんがよく使う機体は?」
「F-4ですね〜」
「おお!?」
ゲームだと最初の機体、現実の日本だと既に退役済みのとても古い戦闘機。
エースコンタクト内では初期から使えるお世辞にもパラメータは高くない機体だ。
これを多用するなんて…マニアックだ。
「F-4でF22とかSuシリーズを機銃でドッカンドッカン撃墜します〜」
「えっ…すごっ…!?」
玄人のやり方だ。
もはや縛りプレイ。
実はそんなに上手くはない僕、対戦するのは…やめた方が良さそう。
「いや〜こんだけ盛り上がるとさ、名残惜しいね」
「!!」
滝川さんの目が見開かれる。
「でも、もうすぐ降りなきゃ…」
「……」
駅名がアナウンスされる。
もう到着か。
滝川さんは下を向いている。
電車の速度がみるみる下がっていく。
ガタン、ゴトン…
ブレーキの感覚が身体に伝わる。
さっきまであんなに盛り上がっていた車内が、
急に静かになった気がした。
「……」
別に明日も会う。
多分また昼も一緒に食べる。
なのに、なんか変な感じだ。
「…滝川さん?」
滝川さんはゆっくり顔を上げた。
少しだけ表情が優れない。
「…楽しかったです〜」
「…うん、僕も」
即答だった。
本当に楽しかったから。
すると滝川さんは、
少しだけ目を丸くして、
それから柔らかく笑った。
「三田さん、好きです〜…」
「…また明日…!」
慌てて電車を降りた。
そして慌てて走った、別に急ぎの用事はないのに。
そうでもしないと、気を紛らわせないと!!
別に滝川さんから好きなんて言われたのはこれが初めてじゃないし、好きにはライクとラブがあるし!
駅前の風がまだ湿っている。
さっきの雷雨の名残か、空気が重い。
今日の後半、僕はずっとおかしかった。
雷の恐怖で弱ってたせいだ。
きっと。
絶対。
「……」
でも、今日の滝川さん、
やたら優しかったんだよな。
頭撫でてきたり、手握ってきたり、抱き寄せてきたり。
いつもの我欲とかじゃなくて、本当に優しさを感じた。
メチャクチャ破壊力が高い。
しかも最後にアレ。
「好きです〜…」
もう一回ダメージが来た。
(クソッ!!!エースコンタクトの話、メチャクチャ楽しかったのに、台無しだ!!!!)
F-4で機銃撃つタイプじゃないでしょ。
レーザー兵器使うタイプだよ、アレは。
つづく




