表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/56

飼い犬



なんだろうこの、飼い主を見つけた犬みたいな反応。


「来ないかと思いました〜…」


「十分しか待ってないでしょ」


「返信もないし〜滝川にとっては長いです〜」


「知らないよ」


そう返しながら僕は結局昨日と同じように滝川さんの隣へ座った。


すると。


当然みたいにぴったり寄ってくる。


「近い」


「三田さん補給です〜」


「人を栄養源みたいに言うな」


でも滝川さんは嬉しそうに笑うだけだった。



今日の滝川さんは


「ボリボリ…」


黒い…


これは…黒胡麻せんべいだ!


「ねえ…また変なもん食べて、また後半お腹空くよ…?」


「らいしょーふれふへほ〜」


「はあ?」


飲み込んでから喋れよ、お行儀悪い!


「…大丈夫ですけど〜」


大丈夫じゃねーだろ。


滝川さんはもぐもぐしながら僕の顔を見る。


「三田さん〜食べます〜?」


黒胡麻せんべいを差し出される。


「いらない」


「お嫌いですか〜?」


「嫌いじゃないけど、コイツはおやつだ」


「じゃあどうぞ〜」


「いらない」


「むむむ…」


滝川さんはまたボリボリ齧る。


静かな中庭に、


やけにその音が響く。


「……」


ふと見ると、滝川さんの頬に黒胡麻がついていた。


なんでそんなところにつくんだよ…。


「……」


「?」


「ほっぺにゴマついてるよ」


「!」


滝川さんは慌てて自分の頬を触る。


違う場所を。


「逆」


「こっちです〜?」


「もっと右」


「んむ〜…」


全然取れない。


「…わざとやってる??」


見てるこっちがもどかしくなる。


「どこですか〜??三田さん、取ってください〜!」


「…そのままずっとつけとけば?」


「ねぇーーー!いじわるです〜…!」


気にせずパンの袋を開ける。


チョコチップパンを一つ取り出す、別に好きでもないけど…。


腹に溜まるならなんでもよろしい。



けどなかなか食欲が湧かない。


飽きたから。



「……」


滝川さんはゴマをつけたまま、恨めしそうにこちらをじぃーーっと見ている。


「ほれ、ポチ!」


チョコチップパンを振る。


「わんっ!」


滝川さんは飛び出してチョコチップパンに食いつく。


(バカかこの人…)


僕が持ったままのパンにそのまま齧りついたせいで距離が近い&絵面がとてもアレだ。


「んむっ…♪」


滝川さんは嬉しそうにもぐもぐしている。


黒胡麻付きで。


「冗談で言ったのに…」


滝川犬たきがわけんです〜」


「否定しないんだ」


「三田さんの飼い犬なので〜」


「怖っ」


滝川さんはパンを咀嚼しながら、


ふにゃっと笑う。


(怖えよ…)


「おいしいです〜」


「そりゃ良うござんした」


「三田さ〜ん、ちなみにポチじゃないです〜」


「知ってるよ」


「ユキって呼んでください〜」


「飼ってないから」


「わんっ」


「……」


滝川さんはケラケラ笑う。


僕の反応に味を占めてる…?


メチャクチャ可愛いけど…


僕はどちらかと言うと猫派なんだよな。



滝川犬の頬の黒胡麻がまた存在感を放った。


「……」


取ればいいのに。


でも、なんかもう、そこまで含めて滝川さんって感じがしてきた。


「…じゃあユキちゃん、ゴマ取ってあげるから動かないで」


「!!」


滝川さんがぴたりと止まる。


目を閉じ、顔を突き出す。


(…この顔…)


あんまり深く考えないように、これはゴマを取ってもらう顔、コレはキス顔なんかじゃない…!!




「……」


僕は頬についた胡麻を軽く拭った。


「…取れたよ」


「ありがとうございます〜」


そんなやり取りをしている間、滝川さんはずっと嬉しそうで、なんか、本当に餌付けした犬みたいだな、


と少し思った。


そんな、人を犬扱いなんて…いや、犬猫も家族だけど…なんか、危ない気持ちになりそうになる…。


実際滝川さんは懐いてるし…。


(ダメだダメだ…!!)


唇を噛み締めて首を振る。


滝川さんは小首を傾げた。


「三田さん〜?」


「…なんでもないからね」


「嘘です〜なんか葛藤してました〜」


(ちょいと鋭いのやめて欲しい)


「あ〜わかりました〜」


「!!」


「滝川を飼いたいけど首輪がないんですね〜?」


「違うわ!」


なんちゅー危険な事を…言うんだ!!

思想が危ねえ!!


「えへへ〜」


滝川さんは楽しそうに笑う。


「でも滝川、お散歩少なくて済みますよ〜?」


「嘘つけ」


「ご飯もそんなに食べません〜」


「嘘つけ!!」


「ちゃんと懐きます〜」


「それは……い、犬設定を続けるな!!」


滝川さんは肩を揺らして笑う。


本当に楽しそうだ。


「……」


ダメだ。


この人、変な方向に話を転がす天才かもしれない。


しかも、さっき一瞬でも飼い慣らされてる感みたいなのを想像してしまったせいで、


妙に意識してしまう。



マジでなんなんだこの生き物。


しかも本人はふざけてるだけ(?)なのに妙に破壊力がある。


「三田さん〜」


「何」


「よしよししてください〜」


「徹底するな」


「ちゃんと懐いてるので〜」


「……」


ダメだ。


会話のテンポがおかしくなる。


滝川さんと話してるとツッコミが追いつかない。


でも。


そんなアホみたいなやり取りをしてると、


さっきまで考えてた面倒な事とか、


モヤモヤとか、ちょっとだけ薄れてる自分がいて…それもまたなんか悔しかった。


・滝川さんが好意を諦め、キッチリした友達関係に!

・全て諦めて付き合っちゃう!

・とにかく躱しまくる!

・滝川犬を飼う←New!



選択肢が増えた…??




                     つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ