ため息混じりの選択肢
「はぁーーーー!!!!」
教室に戻り、深い、深いため息が出る。
周囲からは
「見せつけてる」
「やりすぎ」
と言われまくって現在。
隣(野村さん)からは
「そのスピード感、マジで羨ましい…」
と連呼される始末。
「…退学して通信制通おうかな」
「はあ!?何ソレバカじゃないの?」
野村さんは呆れた様子でそう言うけど、こういう状況に耐えられる人と耐えられない人がいるって事を理解して欲しい。
「三田君メンタル弱すぎでしょ…」
「弱いさ」
机に突っ伏す。
「ていうかさ〜滝川さん、三田君のこと好きすぎじゃない?」
「知らないよそんなの…」
「知らないって…自分の事じゃん」
「知らないもん」
「急に子供になった」
「……」
何も反論出来ない。
「もうさ、三田君が何思ってても良いけど、滝川さんをモノにしちゃえば良いのに」
「なんで」
「いちいち否定するのも疲れるでしょ?」
「まあ…」
顔を上げる。
ダメだダメだと否定と葛藤の連続。
「でもさ」
野村さんは少しだけ真面目な顔になる。
「滝川さん、多分三田君が思ってるよりずっと本気だよ?」
「……」
「ネックレスとかさ、おでこチューとかさ、ああいうの女子って結構勇気いるからね?」
「…そうなの?」
滝川さんだぞ?
「バカ!そうだよ!」
なんか怒られた。
「三田君さ、滝川さんがグイグイ来るから感覚麻痺してるだけ」
「……」
麻痺。
それはあるかもしれない。
最初から距離感がおかしかったせいで一体どこまで本気なのか、逆によく分からなくなっている。
「ま、滝川さん変な子だけど」
野村さんは笑う。
君が好きなまーちゃんも変な子だけどね。
「三田君のこと大好きなのは本当だと思うよ」
「……」
首元を指で触る。
制服の下。
ネックレスがそこにある。
「本当でもなんでも、ガンガン来られたら怖いよ…」
「…隙を見せた君が悪い」
隙…。
考えてみたけど別に隙という隙は思い当たらない。
むしろかなり慎重な方だと思う。
でも、引き離そうと思えば初っ端から出来た、それは可能だった。
でも
「このスピードでこうなるなんて予測できないよ!無理!!!!」
これが事実。
「嫌じゃないんでしょ?無理じゃないんでしょ?」
「嫌では、ない、断じて」
「なら一旦滝川さんにちゃんと三田君の今の気持ちを伝えなきゃ、なんか一人でモヤモヤするよりは絶対良いでしょ?」
そうだけど、そうなんだけどさぁ。
自分でも大概意思表示はしっかりしている自負はある。
だから滝川さんには今一度
「友達」としての距離感をわかってもらえないと困る。
僕も全然理解が及んでないんだけど、あくまでも異性だから、んでこの場合は滝川さんが僕に対して好意を含んでいる、なら現状考えられるルートはこうだ。
・滝川さんが好意を諦め、キッチリした友達関係に!
・全て諦めて付き合っちゃう!
・とにかく躱しまくる!
この三つ。
考えてみたけど結局どのルート選んでも僕の心臓には悪いだろう。
最後のなんてただの現状維持だし。
どうせまた会うだろうからその時にまた話し合わなきゃ…。
ちゃんと、明確に。
「…聞くけど野村さんはまーちゃんと関わっていてモヤモヤはしないの…?」
「…するよ、毎日」
だろうな。
「まーちゃんがあんな感じだからでしょ?」
コクリと頷く。
「僕にしたって滝川さんがあんな感じだからって理由で難航してるの、状況は違うけど僕らも似たようなもんじゃないかな?」
「その状況の違いが結構デカいんだけど〜」
「うるさいな、良いんだよそんな些細な事は!」
「些細じゃないっ!…まあ、でも確かに言いたい事はわかるけど…」
そう言って野村さんはチラりと、自席で歴史本を読んで難しい顔をしているまーちゃんの方に視線をやる。
「無頓着過ぎてもダメだし…うん、ガツガツ来られるのも困っちゃうね…」
悲しくも、なんか呆れた顔でまた、言う。
「でしょ、丁度良く、が良いよね」
野村さんと意見が一致した。
…まあ。
その丁度良くが一番難しいんだけど。
まーちゃんみたいに恋愛に無頓着過ぎるのも困るし、
滝川さんみたいに距離を詰め、好意を持つ速度が戦闘機なのも困る。
普通が良い。
昼休み。
滝川:三田さーーん、お昼、ご一緒しましょー!!
(つーか、一回だけって約束だったじゃん…)
その約束もかなり昔の話のように思える。
滝川:中庭で待っています!!
(こっちの返事お構いなしかよ)
返信せずにちょっと待ってみよう。
「……」
10分程放置。
そして遠巻きに中庭を覗く。
昨日と同じベンチに座り、両手にスマホを持ち、足をパタパタさせている滝川さんを視認。
顔は死んでいる。
滝川:三田さーーん
滝川:三田さーーん…
滝川:滝川、待っています…
滝川:ずっと待ってます…
滝川:もう一生ここにいます…
たかだか十分でこの有り様…。
重いと思いつつ、僕が来る「前提」で疑いもせず待ってる感じに哀れみというか、健気と言うか、忠犬な感じがする。
観念して滝川さんに近づく。
二、三歩歩いたところで滝川さんの視線が僕に向く。
ぼーーっとした顔だったのに
「三田さん…!」
一瞬で表情に花が咲く。
つづく




