うどんとラーメン
「でも〜三田さんのうどんにも滝川の唾液が染み込んじゃっていますね〜」
「……」
僕はうどんを啜っていた箸を置いた。
「…もういらない」
滝川さんの目がカッと見開かれる。
「なぁ〜んでですか〜!!!!滝川と三田さんがラーメン、うどんを通して混ざり合っただけです〜!!」
「滝川さんが言語化するから…気にしてなかったのに、なんか…汚く感じちゃう」
「ひどいです〜!!滝川汚くないです〜」
小鳥のように腕をパタパタさせている。
そんな嫌な表現をして、酷いのはどっちだろう。
「綺麗か汚いかは僕が決める事だからね」
僕は別に潔癖ではない、だから汚いと思うよりも気まずいと言った方が近い。
フライドポテトを一つ口へ放り込む。
(やっぱりこういうのは、良いね…)
案の定滝川さんは恨めしそうな顔をしながらラーメンを啜っている。
「ズズズ…ズズッ…」
「食べるか睨むかどっちかにしなよ…」
「#々^ヲ@*$=〜!」
「はあ?」
口元を押さえながらしばしモグモグ…。
そもそも飲み込んでから喋れよ。
しばらくして、ゴクリと飲み込む。
「…三田さんが〜いけずだって言ってるんです〜!」
(いけずって…久々に聞いた言葉だな)
無視して今度は唐揚げを一つ。
ザクリッ
お世辞にもジューシーではない、パサパサだ、だけどコレはコレで料理として完成されている。
美味い!
「ズルルル…」
やっぱりたまにこういうのを食べるのは、良い。
「ズズズ…」
カラオケ店にはカラオケ店ならではの、言い方は悪いが安っぽいメニュー、コレが良い。
「ズッ…ズズズ〜…」
爽○美茶じゃなくて炭酸が飲みたくなるね。
「ズズ〜」
「…うるさいな!さっきから!」
滝川さんのラーメンを啜る音が僕の食リポのBGMになって、やかましい。
「ベ〜!」
舌を出して威嚇された。
滝川さんもついに悪態をつくようになったか。
「滝川、もう食べ終わっちゃいました〜」
「早っ」
「お腹空いてたので〜」
「だったら昼飯に油揚げなんか食べなきゃ良いのに」
「だって〜好きなんですもん」
そう言いながらポテトをひょいとつまむ。
「〜♪」
なんでも美味しそうに食べるよな、この人。
油揚げを食べてた時はとんでもない偏食人かと思っていたけど…良かった、普通みたい。
唐揚げもひょいとつまむ。
分かんない、分かんないけど女子って揚げ物を遠慮するイメージが勝手にあったけど…そもそも滝川さんだし、考えるのは無粋か。
滝川さんはもぐもぐしながらパフェを凝視している。
「…滝川さんのでしょ?食べれば良いじゃん」
「…食べてばかりいると〜滝川が意地汚いみたいに思うじゃないですか〜」
「思わない思わない」
むしろ異性の前だからと言って変に畏まる人の方が苦手だと思う。
…滝川さんに関してはもっと遠慮とか、そういうのが必要だけど。
「じゃあ〜…先に三田さんからどうぞ〜!」
スプーンでイチゴをヒョイと掬い、こちらに差し出す。
「え、いらない」
「なぁーんでですかっ!?滝川、口つけてないですよ〜?」
「いらない」
「…ベ〜だ!」
(なんだコイツ…子供だよ
…一丁前に育つとこだけは…無駄に育ってるくせに…)
「…三田さ〜ん、今、滝川のどこ見てました〜?」
「えっ…」
なんでバレた…?
いや、一瞬だったからバレていないはず。
「どこも見てないけど!」
「エッチですね〜…」
「いや、聞けよ」
冷や汗が出るのが分かる。
爽○美茶を飲み干す。
「僕、飲み物汲んでくるっ!」
「あ!ズルいです〜滝川も行きます〜」
そう言って滝川さんは水を飲み、空のコップを持ち立ち上がった。
「…じゃあ滝川さんのも汲んでくるよ、何が良い?」
「や〜です、滝川も行きます〜!」
「え〜」
「滝川のおっぱい見てたくせに嫌がらないでください〜!」
「見てないって!!!!」
次なる飲み物は炭酸飲料。
少し揚げ物を摂取した後には炭酸に限る。
「炭酸ですね〜滝川も同じのにします〜!」
「そうですか」
「三田さん、さっきから距離取ってます〜」
「気のせいです」
「気のせいじゃないです〜」
「普通だよ」
「普通じゃないです〜」
じり、と一歩詰めてくる。
「近いって」
「さっき見たからですよね〜?」
「だから見てないって言ってるでしょ」
「じゃあ目合わせてください〜」
「何故」
「見てないなら出来ますよね〜?」
「……」
(めんどくさ…)
仕方なく視線を合わせる。
「ほら」
「……」
じーっと見てくる。
「……」
数秒の沈黙。
ダメだ、造形が綺麗すぎて、直視もままならない。
先に目を逸らしたのは僕だった。
「逸らしました〜怪しいです〜」
「怪しくない」
「でも〜勘違いして欲しくないのは、見られてたとしても滝川は嬉しいです〜」
「?」
「ただ嘘をついて欲しくないだけです〜」
「嘘って…」
「さて、三田さん、見てましたね〜?」
「……」
言葉には出さずに、ゆっくりと頷いた。
「やっぱり〜!」
「……」
(別に見たくて見たわけじゃないし…)
「エッチですね〜」
カチン
「このっ…早く汲みなさいよ!」
滝川さんの靴の踵を軽く蹴る。
「あうっ…!DV彼氏です〜」
「彼氏じゃねーし」
「今後の可能性は〜?」
「ゼロゼロ、むしろマイナス」
「……」
またわかりやすくシュンとしているが知った事か、部屋へと歩みを進める。
つづく




